「木下黄太のブログ」 ジャーナリストで著述家、木下黄太のブログ。

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映画「ラジウム・シティ」でよくわかる、アメリカにおける放射能健康被害隠蔽構造と軍事経済優先の連関。

2015-06-01 11:21:55 | 福島第一原発と放射能

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 きょうはドキュメンタリー映画評となります。昨日、京都でキャロル・ランガー 監督の映画「ラジウム・シティ」を観てきました(往復何時間か運転して)。このストーリーは、アイリーン・ウェルサムという女性ジャーナリストが書いた「プルトニウムファイル」(翔泳社)にも出ていますし、よく知られた話です。

アメリカなどで時計の文字盤を塗る夜光塗料として、放射性物質のラジウムが使用され、それを作業していた若い女性達が骨腫瘍や再生不良貧血などで次々と亡くなっていく話が、淡々と綴られています。

起きている事象の中核は、1920年代から1930年代の出来事です。イリノイ州オタワが主な舞台です。

明確に女性達が次々と倒れていくのに、その原因をラジウムと認めないようにしようとするまわりの環境。

その会社が、地域経済にもたらした利益を重く見て、口ごもる人々、取り上げないマスコミ。

訴訟しても、勝訴したころに、殆どの人々は死んでいきます。

彼女達が生んだ子供たちにも、健康障害も発生し、亡くなるケースや、重い疾病、知能障害なども起きています。

放射性物質を継続的に直接摂取することが、如何に恐ろしい結果を招くのか。

しかも、そうしたことを遂行した人物は、原子爆弾の素となる材料まで、この工場で生産していたことを、この映画は語り始めます。この話は、僕は裏づけは出来ていませんか、ありがちな話でしょうし、こうした文字盤を塗ることでラジウム被害をもたらした会社が、どうして1977年まで操業停止とならなかったのかも(社名を変えて事実上戦前から事業継続)、よく納得できます。

放射能と軍事が完全に一蓮托生であることをこの映画でも再確認できますし、原爆国家アメリカの本質が示されています。

1960年代後半になって、この被害全貌を調べるために、アルザンヌ国立研究所が調査を始めます。この調査が、本人や遺族に情報を知らせるためのものというよりは、国としてこうした被曝による健康被害がどうなるのかというテータを集めるためにおこなわれていることも、はっきりと示されます。

そして、生き残った女性が、真相を新聞社に書いた手紙を、これ以上騒がせたくないと握りつぶす記者がいることも明確に描かれています。

他にも、戦前の工場解体瓦礫が、オタワのあちこちに捨てられていて、高い放射線を出していること。

この映画は1987年の映画ですが、その当時におこなわれていた工場解体が、大変な規模の除染作業であったこと。その除染作業のいい加減な実態や、瓦礫の捨て場所に関して市当局が予算を理由に近隣埋め立てに進む様子も描かれています。

僕は、申し訳ないのですが、吹き出しながら観ていました。こういう馬鹿なことをして、次はこうなって、更にもっとまずいことに展開するだろうなと、予想するとほぼ全部そうした展開になります。

誤魔化すだろうと思ったら、そのまま誤魔化します。

事実を言わないようにするなと思ったら、事実を言わなかったと隠蔽します。

声を聞き入れない、何も伝えない、大丈夫と繰り返す、福島第一原発事故後の日本は、アメリカでのこのような先例(局地的ではありますが)に学んだのかなというようにさえ思える反応が続きます。

そして、地域経済や軍事を優先したため、健康被害や多大な除染が圧し掛かります。

それを多くの人々が無視することも全く同じ構造です。

なんというか、人間そして国やマスコミという存在は、こうした放射能被害に関して、似たような状態になるのかもしれませんが。しかし、暗澹たる日本の状況と、このオタワという街が重なるのは、僕だけの妄想でしょうか。

【追記】

この映画を、これから観られる場所は相当に限定されています。現在、京都みなみ会館で今週金曜までは上映される以外は、下記のとおり。広島・神戸・新潟で一週間程度の単館上映はなされます。他は松本・仙台・高知・富山・青森・水戸でイベント的な1日上映がおこなわれるみたいです。ネット有料配信もDVD販売も現在はありませんから、観ることそのものがなかなか出来ないドキュメンタリーですね。

 なお、映画としては淡々としたドキュメンタリーです。しかも80年代のものですから、少し長く感じると思います。スピード感もないし尺が少し長い気はします。しかし、キャロル・ランガー 監督は丁寧に話をつみあげていることが、よくわかります(なお、本日のブログ記事最後に、HPより作品関連年表を引用しました)。

 副題は「文字盤と放射線」になっていますが、若い女工たちがラジウムを舐めて被曝したことから考えると、「文字盤と放射能」とすべきと思います。放射性物質の話ですから。


長野 松本CINEMAセレクト 松本市中央公民館Mウイング 0263-98-4928 6月3日(1日のみの上映) 1日3回上映

高知 自由民権記念館 民権ホール 088-831-3336  6月6日(1日のみの上映) 1日2回上映

神戸 神戸アートビレッジセンター 078-512-5500 6月6日〜6月12日 ※6/9(火)休映

富山 フォルツァ総曲輪ライブホール 076-493-8815 6月7日(1日のみの上映) 10:00/12:00

仙台 SENDAI KOFFEE CO. 090-2992-1596 6月5日(1日のみの上映)

広島 横川シネマ 082-231-1001 6月5日〜6月14日  6/7(土)、9(火)休映

青森 十和田市民文化センター 082-231-1001 6月20日(1日のみの上映) 15:00/18:00

水戸 cafe+zakka+gallery Minerva 025-243-5530 6月21日(1日のみの上映) 14:00/17:00

新潟 シネ・ウインド 025-243-5530 6月21日〜6月25日 6/21(日)、23(火)、25(木)各1回上映

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今週末【6/6(土)  木下黄太 世田谷ミーティング】   

申込み&詳細⇒http://kokucheese.com/event/index/294692/ 

 13:30開場、14時~16時すぎ 

 開催場所 九品仏地区会館(東京都世田谷区奥沢7丁目34番3号、東急大井町線九品仏駅徒歩1分)

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いよいよ新潟でも開催します! 

【6/28(日)三田茂医師&木下黄太講演会in新潟】

13時開場  13:30開演

場所:クロスパルにいがた映像ホール(150名収容)

    新潟市中央区礎町通3ノ町2086

webサイトの申し込みフォームからお申込みください。
申込み&詳細⇒https://yobukainiigata.wordpress.com/ 

お問い合わせ先
yobukainiigata0628@gmail.com
08066076940(岸) お電話は午後以降夜までにお願いします。  

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【7/19(日)三田医師&木下黄太講演会IN広島】 

7月19日(日) 12:30開場  13:00開演

広島市まちづくり市民交流プラザ北棟5F 研修室ABC (広島市中区袋町6-36)

申込み&詳細⇒http://kokucheese.com/event/index/295718/

 

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http://www.radiumcity2015.com/punf.pdf  より引用。

 『ラジウム・シティ ~文字盤と放射線・知らされなかった少女たち~』関連年表

1898 年 マリ、ピエール・キュリー夫妻ラジウム発見

1914 年 ラジウム・ルミナス・マテリアル社、ニューヨーク市で創業

1914-1918 年 第一次世界大戦

1917 年 ラジウム・ダイヤル社、イリノイ州シカゴ市で創業

1921 年 ラジウム・ルミナス・マテリアル社、ニュージャージー州エセックス郡オレンジ市に工場設立、US ラジウム社に社名変更。 ⇒約 70 名の女性がラジウムなどの放射性物質を含む夜光塗料(※1)による文字盤の塗装工として雇 われた。1923 年までに 5 人の若い女性がラジウム起因と見られる骨腫瘍などの疾患(※2)で死亡して いる。

1922 年 ラジウム・ダイヤル社、イリノイ州オタワ市に移転 ⇒最盛期の 1925 年頃には 1,000 人近くの若い女性が文字盤の塗装工として雇われた。

1925 年 ニュージャージー州エセックス郡の検視局長が、US ラジウム社の塗装工たちを死に至らしめ た骨腫瘍や再生不良性貧血の原因を放射性物質とする報告書を公表

1928 年 US ラジウム社で働いていた 5 人の女性たちが同社を提訴、「ラジウム・ガールズ」と呼ばれ新 聞を賑わし内部被曝の存在が広く知らさせる知らせるきっかけとなった ⇒1 万ドル(現在の通貨で 1313 万 7 千 7,000 ドル相当)の賠償金と年 600 ドル(8,200 ドル相当)の年金 を要求し勝訴するが、補償金を手にした頃には、全員既に身動きが取れるような状態ではなかった。

1929 年 ラジウム・ダイヤル社に 7 年勤めていたマーガレット・ルーニーが 24 歳で死亡。

1929 年 ニューヨーク証券取引所での株価大暴落をきっかけに世界大恐慌に突入

1934 年 マリ・キュリー死去 ⇒死因は再生不良性貧血と言われる

1938 年 ラジウム・ダイヤル社の元塗装工キャサリン・ドナヒューが同社を提訴、勝訴するが同年 7 月 27 日に死亡。

1938 年 敗訴を受け、ラジウム・ダイヤル社は閉鎖されたが、6 週間後、ルミナス・プロセス社と名を変 え、工場を 開設。再び文字盤を塗る作業員が募集された。

1939-1945 年 第二次世界大戦 ⇒大戦中、ルミナス・プロセス社の経営者であるJ・ケリーは、工場を隠れ蓑に原子爆弾の原料となる ポロニウムを生産していたと言われている。

1945 年 8 月 6 日広島、8 月 9 日長崎に原子爆弾投下

1948 年 アルゴンヌ国立研究所がオタワから約 120km の場所に建設

1954 年 第五福竜丸がマーシャル諸島近海にて米軍の水爆実験により被曝

1968 年 アルゴンヌ国立研究所内に人間放射性生物学センター設立、塗装工たちの被曝線量につい ての調査を開始 ⇒被曝登録者は 3,800 人、このうち 2,800 人が夜光塗料産業関係者である。被曝基準制定の為に多く の被害者が協力、骨髄検査 などの生検に応じたが、被験者には報酬や補償が支払われることがなか った

1968 年 US ラジウム社、放射性物質を含む夜光塗料の使用を中止

1977 年 ルミナス・プロセス社、安全規則違反を繰り返し操業停止処分

1979 年 アメリカ、スリーマイル島原子力発電所事故

1979 年 マーガレット・ルーニーの遺族がアルゴンヌ研究所による遺体の調査に同意

1980 年 米国、スーパーファンド法(※3)設立

1984 年 イリノイ州、ルミナス・プロセス社の工場解体予算を承認 ⇒1986 年 9 月までにイリノイ州は 650 万ドルを社屋の除染に投入、同社の罰金は 3 万ドルだった。

1986 年 ソビエト連邦、チェルノブイリ原子力発電所事故

1986 年 米国環境保護庁がオタワ市の除染作業に着手

1987 年 ドキュメンタリー映画『ラジウム・シティ』公開

1993 年 人間放射性生物学センターによる被曝調査終了

2006 年 米国保健福祉省、オタワ市の一部の地域が未だ通常よりも高い放射線量にあることを発表

2009 年 米国環境保護庁、ニュージャージー州エセックス郡の US ラジウム社による汚染エリアの除 染作業終了を発表 ⇒除染作業は 1991 年~2004 年までの 13 年間で、21,800 万ドルの費用がかかった。

2009 年 米国環境保護庁、4 月下旬から 7 月にかけて 160 万ドルのスーパーファンドによってオタワ市 の汚染エリアの追加除去作業をすることを発表

2011 年 福島原子力発電所事故

2013 年 米国環境保護庁、オタワ市の汚染 16 エリアのうちの 2 エリアの除染作業の変更を計画 ⇒汚染土の入替作業は高額費用がかかるため、今後 30 年間は定期検査をしながらエリアの管理封 鎖を提案。

※1 US ラジウム社の「UNDARK」、ラジウム・ダイヤル社「Luna」など、ラジウムの暗闇で光る性質を利用し た夜光塗料。 ラジウム・ガールズの事件がきっかけでその危険性が周知されるようになったが、第二次世界大戦中 は軍用の腕時計や計器の文字盤に多く使用され、生産された数は数百万個に上る。 塗料は 1960 年代まで用いられており、塗装に従事した工員は米国とカナダで延べ 4000 人に至ると言 われている。

※2 ラジウムはカルシウムと化学的性質が似ているため骨に沈着しやすく放射線障害を生じさせる。 抜歯をした後に顔が腫れるなどの症状から始まり、貧血、白血球の減少、感染症、骨腫瘍などで亡くな る塗装工が続出した。

※3 1978 年のラブキャナル事件(ナイアガラ滝近くのラブキャナル運河で起きた有害化学物質による汚染 事件)をきっかけに設立された米国の環境法規。 過去の土壌汚染に関わる広範囲の関係者に、対策修復コストの負担を求める法律。汚染責任者が特 定されるまで環境保護庁が、「スーパーファンド」から調査・浄化費用を負担し、将来それらの費用を有害物質の排出に責任を持つ事業者に負担させる。