トルコのクーデターは、多数の市民も犠牲になる中で、反乱側が鎮圧される方向です。
しかし、現大統領に関しての不信感は、どうやら国内に根強く残っていて、彼の対応を信じない声も多く聞かれる状態です。中には、ヒトラーの国会議事堂放火事件に、今回のクーデターを擬える人までもいる状態です。(ちなみに、国会放火事件は、ナチスが共産主義者を弾圧させるために組織的に仕掛けた話なのか、一人の単独犯によるものなのかは、現在も分っていません。しかし、こうした出来事を、ヒトラーが利用し、より強権的なファシズム体制を築くきっかけとしたことは間違いありません。)
こうしたクーデターの背景には、最近トルコ国内の治安情勢が急速に悪化していて、イスラム国によるとみられるテロが相次いでいることは、大きな影響を与えていると思います。
2015年10月
アンカラ。左派団体の主催集会、イスラム国によるとみられる自爆テロで、103人が死亡。
2016年1月
イスタンブール。観光地スルタンアフメット広場、イスラム国によるとみられる自爆テロで、ドイツ人10人が死亡。
2016年2月
アンカラ。トルコ軍職員が乗っているバス、イスラム国によるとみられる爆弾テロで、28人が死亡。
2016年6月
イスタンブール。アタチュルク国際空港、イスラム国によるとみられる自爆テロ、銃も乱射し、40人以上が死亡。
いろんな意味で、西側とシリアを巡る状況の最前線に、トルコは立たされています。
こうした状況下で、エルドアン大統領が、新憲法制定と自らの権力強化を追及して、国際的に協調派であったダウトオール首相が更迭される状況が5月にはおきていました。
イスラム国との対立ということから、国際社会で影響力がつよくなっているトルコ。
その状況を使い、実は国内で自分に反対する政治勢力を抹殺しようとエルドアン大統領が、ファシズム的なやり方を行っているのも知られた話です。
2016年3月には、批判的な大手新聞社ザマンを接収するなど、複数のメディアを強権的に支配に置き、まともなジャーナリストを排除するなど、異常なことをおこなっているのが、この大統領です。
どこからどうみても、ファシストに近いタイプの政治家です。
安倍総理をヒトラーに喩える日本の市民活動家は多いですが、そんな抽象的なレベルでなく、具体的な抑圧をおこなっているのが、エルドアン氏です。レベルが違います。
彼がここまで、強権的な振る舞いが許されているのは、イスラム国によるシリア難民問題で、EUがトルコを難民の歯止めとしたいため、際限なく彼に妥協している構図が背景にあります。
西側は自国マイナスを減らすため、彼の国内政治に口を極力挟まないようにしています。
今回のクーデターは市民の犠牲も多くあり、肯定できるものではありません。
しかし、鎮圧に成功した現行政権が今後どうなるのかは、国内のうずまく不信をみていても予断を許さないと思います。
まだ、トルコ情報も錯綜しているため、南仏ニースのテロと併せて、メールマガジンの増刊を出す予定です。
重要情報や根幹的なテクストはメールマガジンでのみ毎週金曜夜配信しています。
木下黄太メルマガ購読申込先⇒http://www.hoshanobogyo.com/