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俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

脳の進化

2015-04-26 09:45:51 | Weblog
 人類の脳の容量は100万年で3倍に増えたらしい。これはかなり不自然な進化だ。中立的な突然変異と自然淘汰によってであればこんな偏った進化はあり得ない。ラマルクの用不用説を使って説明したくなるような異常な進化だ。
 人為が働けばこんなことが起こり得るということだろう。我々が身近に見ることができるのは家畜の品種改良だ。特殊な個体を選んで掛け合わせ続ければ意外なほど急激に変異する。ダーウィンは鳩の品種改良から進化論のヒントを得たらしいが、我々にとっては犬の多様性が最も分かり易い。大きさも形態も全然異なるがどれも人為的に作られた犬だ。人間が操作すればこれほど特殊な生物を作り得るということだ。
 人類においては知恵が生存競争の武器になったと思われるがただの競争であればこんなに急激に進化しない。スパイラル構造が生じたと思われる。つまり知恵が文化を生み、文化が知恵を求めるという形で、相乗効果が働いたのではないだろうか。
 しかしこんな直線的な進化は危険だ。脳以外は充分に進化していないからだ。多くの人が腰痛に悩まされているのは背骨が2足歩行に充分に適応できていないからであり、難産になったのは産道が曲がっていることと新生児の頭が大きくなり過ぎたことが原因だ。安産で知られる犬でさえ、スコッチテリアのように人為的改造のせいで頭が大きくなり過ぎたために難産になってしまった種がいる。バランスを欠いた進化は不適応を招く。
 コンラント・ローレンツは恩師の言葉を借りて次のように語る。「クジャクの尾羽と西洋人の仕事のテンポは種族内淘汰の最も愚劣な産物だ。」(「攻撃」より)
 クジャクのメスはオスの尾羽の立派さを基準にして交尾する相手を選別する。しかし立派過ぎる尾羽は飛翔のためには障害物になる。性淘汰においける適者が生存競争における不適者になってしまった。これでは進化の袋小路に迷い込んでしまったようなものだ。
 人類の脳も種族内淘汰の愚劣な産物になる恐れがある。環境への適応を促す種族外淘汰とは違って種族内淘汰では妙な形での進化のスパイラルが起こり得る。これが実は種の存続を脅かす誤った進化となっているのかも知れない。
 かつて地球の支配者であった恐竜は当時の環境に過度に適応してしまったために多様でありながら絶滅した。人類は多様性さえ失いつつある。少なくとも武器の進歩は人類の知恵の進歩を上回る速度であり、これが人類を死滅させる可能性はかなり高い。

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