「チーフ・プロデューサー」という名称でクレジットが出ている事がしばしばある。このCP(チープ・プロデューサーではないので念の為)の仕事とは?
連続ドラマの場合について言うと、最終的に、「企画を決める人」。もちろん、その為には、社内の各セクションを「納得」「根回し」、時には「恫喝」せねばならない。僕も2回、このCPという役割をやった事があるが、正直、精神的にしんどい。
局プロデューサーのエネルギーの7割は、「社内に向けて使われている」と言っても過言では無い。現場のプロデューサーやディレクター、そして、脚本家の意向を反映して、いちばん面白いドラマを作ろうとCPは常に思っている。しかしながら、その「面白さ」は「主観的」なもので、「番組作りの経験の無い人達」、「社内の派閥」「出世競争の材料」等、いろんな思惑が飛び交う。それをくぐり抜けて、自分達の「企画」を通す。これから始まる。
後は、「顔合わせ」「衣裳合わせ」「クランク・イン」「しんどいシーン」「深夜・早朝のロケ」「脚本打ち合わせ」「編集チェック」「MA」などに顔を出す。それ以外の現場は、基本的に「プロデューサー」に任せる。それが僕の方針だった。
出演者が脚本や演出等について何かプロデューサーに言ってきた時、CPはその場にいない方が良い。何故ならば、一緒にいてしまうと、共倒れになる可能性が高いからだ。まず、出演者の意見・不満等をプロデューサーが聞く。そして、こう言うのである。
「○○さんの言う事も一理あります。ちょっとCPと相談させて下さい」と。つまり、「逃げ」をうてるのである。そうして、CPとP、それに演出家と脚本家を入れて善後策を練る時間を作る。
僕の経験で言うと、ブツブツ言う俳優に限って、「芝居はいつも一緒」なのだが。
現場に行けない。休みを取って、子供達と市民プールに行く。2時間ほど泳いで、脱衣所で最初に見るのが、携帯の着信履歴。CPのところまで電話して来るという事は「事態は深刻」という事だ。これは「精神衛生上」極めて良くない。プールで泳いでいる間も、携帯に連絡が入っているのではと・・・ドキドキしている自分がいる。幸い、2回の連続ドラマ、どちらもプロデューサーがしっかりしていて、僕の出番は無かったのだが。
そして、「視聴率」。初回の数字が出た瞬間から、「天国と地獄」が決まる。数字が良いと社内の輩も何も言ってこない。後は、数字をキープしつつ、最終回に向かって、どれだけ視聴率を上げていくかを考えるだけだ。
地獄バージョン・・・こちらは、初回で低い視聴率が出た場合。社内からの総攻撃に遭う。キャスト・スタッフの士気も落ち、現場の雰囲気も悪くなる。しかし、こんな時こそ、CPが現場に行って、キャスト・スタッフに顔を見せるべき。CPは番組の牽引車だから、そのCPが落ち込んでいてはいけない。幾ら、社内で「蜂の巣攻撃」に遭おうとも、現場では悠然としていたい。なかなか、それができなくて苦労するのだが。
そして、打ち上げ。ドラマが成功すれば、会社の偉いさんが来て、挨拶する。視聴率が悪いドラマだと、誰も来ない事も多いので、CPが挨拶する事になる。3~4ヶ月頑張ってきたキャスト・スタッフに申し訳ないと思いつつも、今夜だけは楽しんで帰って欲しい・・・そう願うばかりである。







