「集団感染」クルーズ船、乗客下船…
「悲惨な状況、日本政府の対応ずさん」
危険‐安全区域の区別なくぐちゃぐちゃ
エボラ、SARSの現場でも怖くはなかったが
あそこは心の底から恐怖感じた」
乗客500人が初の下船、21日までに順次

19日午前11時ごろ、横浜港の大黒埠頭。大きなスーツケースを引きながら、人が一人二人歩き出した。少なくとも542人の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)集団感染が起きたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客である。5日に強制船上隔離が始まってから14日が経っていた。
しかし、この日上陸できた乗客は陰性判定を受けた人たちだけだ。また、陰性判定を受けた場合でも、確定感染者と同じ部屋を使っていた乗客は、感染者が部屋を出た日からさらに14日間、船で隔離される。予め指定された道を歩いていた乗客らは、クルーズ船に残った乗客に手を振ったりしている。埠頭の駐車場には日本政府が用意した10台あまりのバスが止まっていた。船から降りた人たちはバスに分乗して横浜市内の主要駅で降り、それぞれ公共交通機関で家路についた。
千葉県に住むという62歳の男性はNHKに対し「検査を受けた後、もし陽性反応が出たらどうしようと、不安の日々を過ごしていた」、「窓がなく太陽の光が入らない部屋だったので、精神的に苦労しました」と語った。19日には約500人あまりが下船し、陰性判定を受けた乗客は21日までに順次下船する。
日本政府は下船した乗客をさらに陸地で隔離する措置は不要だと見ている。しかし、自国民をチャーター機で帰国させた米政府は、カリフォルニア空軍基地などでの14日間の追加隔離を選んだ。日本とは状況を違う風にとらえているということだ。これまでにクルーズ船だけで542人のCOVID-19感染者が出ており、日本の専門家も政府のずさんな対応を批判している。感染症専門家である神戸大学の岩田健太郎教授は18日、クルーズ船に入ったものの1日で追い出されたとして、日本政府の対応を批判する動画をYouTubeにアップした。この映像は英語版も合わせて50万回以上のアクセス数を記録した。
岩田教授は「エボラとSARSが広がった時、アフリカと中国の現場にいた」とし「アフリカでも中国でも怖くはなかったが、ダイヤモンド・プリンセスの中はものすごい悲惨な状態で、心の奥底から恐いと思った」と語った。また、感染症が拡散する現場は通常、ウイルスのいる「レッドゾーン」と安全な「グリーンゾーン」が区別されており、専門家は身体を保護できるが、ダイヤモンド・プリンセス内は区別されておらず、「ぐちゃぐちゃの状態だった」と指摘した。岩田氏は「どこにウイルスがいるのか分からない状態だった」とし、マスクをつけていない乗務員、熱があって客室から出て医務室に行く人もいたという。船内に常駐する感染症の専門家もいなかったと指摘した。岩田氏は18日に厚生労働省の許可を得て同船に乗り込んだが、同じ日の夕方5時に突然下船命令を受けたと主張した。
クルーズ船を除いて74人の感染者が出たCOVID-19事態全般に対する日本政府の対応も右往左往しているという指摘が絶えない。初期には中国湖北省からのチャーター機での帰国者に帰宅を許可したものの、批判が出ると、ホテルと施設での隔離に方針を変えた。最初のチャーター機の帰国者は千葉県のホテルに隔離したものの客室が足りず、一部は相部屋を使わせた。実際に相部屋を使った2人の感染が確認されている。