済州4・3行方不明者家族
「70年以上続いたレッテル、一日も早く剥がしてほしい」
登録:2020-08-08 01:13 修正:2020-08-08 14:04
「70年以上続いたレッテル、一日も早く剥がしてほしい」
登録:2020-08-08 01:13 修正:2020-08-08 14:04
受刑中行方不明になった349人、再審を請求
済州地裁、6月8日に初審理開く
軍事裁判後、済州以外の刑務所で服役
朝鮮戦争の際、行方不明になったまま
数十年の間消息途絶えたうえ、祭祀行い
死亡が立証されれば、再審手続きが開始される見込み
生存者同様「公訴棄却」になる可能性も
「軍事裁判無効化」特別法の改正に注目集まる
済州4・3平和公園内の行方不明者の墓碑。計3953基の墓碑がある=ホ・ホジュン記者//ハンギョレ新聞社
済州(チェジュ)4・3事件当時、島を離れた人たちは戻ってこなかった。済州に残る家族には緋文字のように“アカのレッテル”が貼られた。当時乳児で現在70代半になった息子・娘たち、夫を探す100歳の老女が立ち上がった。自分の夫、父親、兄弟はどこにいるのかと、国に向かって問いかけている。
済州地裁第2刑事部(チャン・チャンス裁判長)は今年6月8日、内乱罪や国防警備法第32・33条違反(敵に対する救援通信連絡およびスパイ罪)で収監され、行方不明になった14人に対する初審理を行った。4・3行方不明者に対する再審請求人は計349人にのぼる。国内の再審請求訴訟で類例を見ない規模だ。裁判所は再審請求人数が多いため、比較的明確に証言できる請求人を選別して審理を進めることにしたが、まだ具体的な日程が決まっていない。
■4・3行方不明者とは
4・3事件当時、済州島の住民は中山間の野原に隠れたり、避難生活を送った後、当局の勧告に従い帰順した。畑仕事の途中で軍警に連行された人もいた。彼らは集団収容所に収容されてから、1948年12月(第1次)と1949年6~7月(第2次)に開かれた軍事裁判(軍法会議)を受け、内陸の刑務所に移送された。しかし、彼らは自分たちの罪名や量刑を知らなかった。裁判の存在すら知らなかった人もいる。
国家記録院が発掘した「受刑者名簿」には、第1次871人と第2次1659人の計2530人の身元情報と収監場所などが記されている。軍事裁判で死刑を言い渡され刑が執行された384人を除き、彼らは全国の刑務所に散らばって収監され、朝鮮戦争の勃発とともに不純分子とされて多くが虐殺された。また開放された刑務所から抜け出し、行方不明になった人もいた。父親が行方不明になったキム・ピルムンさん(75)は「自分が3歳だった1948年12月、父は軍事裁判で懲役15年の刑を言い渡され、大邱刑務所に入った後、消息が途絶えたと母親から聞いたことがある」と話した。
6月8日に済州地裁で開かれた再審請求訴訟(4月3日付)に、行方不明の遺族が集まった=ホ・ホジュン記者//ハンギョレ新聞社
■再審請求訴訟の争点
今回の再審請求訴訟では、行方不明になった当事者が死亡したことを前提にしている。このため、請求人と弁護人側は約70年前に行方不明になった人が死亡したか否かを立証しなければならない。氏名や住所が異なる行方不明者の場合は同一人物であることも立証する必要がある。再審請求訴訟を担当するムン・ソンユン弁護士は「刑務所によっては収監者を銃殺したという記録が明確に残っている所もあるが、そうでない所もある。再審に先立ち、行方不明者が死亡したかどうかを証明するのがカギ」だと述べた。弁護側は、韓国政府が2003年に発表した「済州4・3事件真相調査報告書」などにより、大田(テジョン)や大邱(テグ)刑務所の受刑者の死亡を立証することは困難ではないとみている。
ムン弁護士は「具体的な資料のない刑務所に対しては、4・3平和公園に行方不明者の墓碑があり、遺族が数十年間にわたり祭祀を行っているほか、これまで消息を伝えてきたことがないという点などを挙げて立証に力を注ぐ。また、行方不明者たちが当時、家族が被害を受けることを恐れて名前や住所を故意に変えた場合もあり、同一人物であることを立証するのは問題ないだろう」と述べた。建国大学法科大学院のイ・ジェスン教授は「4月3日当時、不法に済州島民を連れて行き、国家施設に収監した。彼らが行方不明になったとすれば、これを立証する責任も国にあるのではないか」と指摘した。
■再審手続きはどのように進められるか
昨年1月、いわゆる「受刑生存者」たちが起こした再審請求訴訟で無罪判決に等しい「公訴棄却」の判決を受けたのとは異なり、今回の再審請求には、当事者たちの不在によって配偶者や直系遺族たちが裁判に参加している。行方不明者の死亡が立証された後にようやく再審開始を決定する手続きに入る。問題は当事者がいないため、行方不明者の状況に関する証言には限界があることにある。死亡が裁判所で認められれば、その後は「受刑生存者」に対する再審と同じ手続きを踏むものとみられる。昨年1月、裁判所は4・3受刑者18人が起こした再審請求訴訟で、無罪趣旨の公訴棄却判決を下した。彼らの犯罪事実を具体的に明らかにせず裁判にかけたため、公訴提起そのものが無効だという趣旨だった。
■解決策は
今回の再審請求訴訟で勝訴すれば、別の行方不明者遺族による再審請求訴訟につながる可能性がある。今年6月に開かれた初審理で、裁判所は弁護人に対し、「4・3特別法の国会処理はどうなっているのか」と尋ねるほどだった。国会立法の必要性を意味するものと解釈される。
共に民主党所属で済州に選挙区を持つオ・ヨンフン議員やウィ・ソンゴン議員、ソン・ジェホ議員は先月27日、犠牲者への補償と軍事裁判の無効化などを盛り込んだ済州4・3特別法改正案を共同発議した。第20代国会で自動的に廃棄された改正案が、今国会で可決されるかどうかに注目が集まっている。済州4・3行方不明者遺族協議会のキム・グァンウ会長は「今回の再審請求訴訟が円滑に行われ、遺族たちの無念を晴らしてほしい」と述べた。
ホ・ホジュン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)