韓日関係の対応、河野氏はあいまいで岸田氏は不安だ
自民党、29日に総裁選
「安倍路線」継承するかが核心争点
河野氏は「断絶」、岸田氏は「維持」
最悪の韓日関係、分岐点を迎えるか
19日昼、日本の代表的な繁華街である東京渋谷駅。30代前半のムラカミユカさんは、事実上次期首相を選ぶことになる自民党総裁選について尋ねると、「次の首相は河野さん(河野太郎行政改革相)になればいいと思う」と答えた。ムラカミさんは「私が直接投票する選挙ではないので、正直公約はよく分からない」と言いつつ「ワクチン担当(長官)なのでテレビ番組でよく見かけた。自分の考えがはっきりしていて力が感じられるから、少しでも政治が変わるんじゃないかと思う」と述べた。自民党総裁選は、自民党議員と党友、そして自民党国会議員に投票権がある。
緊急事態宣言期間だったが、渋谷の街は人々で溢れていた。渋谷の名所のスクランブル交差点やファッションモールの周辺は、大規模な人出で歩くのも困難なほどだった。事実上日本の「100人目の首相」を選ぶ自民党総裁選が今月29日に予定されているが、都心のどこにも選挙の雰囲気は感じられなかった。コロナで街頭遊説が止められ、「自民党内選挙」であるためポスターも見られない。候補者らはコロナ時代に合わせてテレビ討論会、記者会見、オンラインなどの非対面方式を中心に、熾烈な選挙運動を繰り広げている。
今月17日から始まった今回の選挙には、河野太郎行政改革相(58)、岸田文雄前政調会長(64)、高市早苗前総務相(60)、野田聖子党幹事長代行(61)の4人が出馬した。河野氏と岸田氏の競り合いが予想される。誰が首相になるかは、日本人の暮らしだけでなく隣国の韓国にも少なからぬ影響を与えそうだ。
日本社会を9年間支配した「安倍路線」の運命
「安倍路線」は今回の選挙で核心の争点だ。日本憲政史上最長寿の首相となった安倍晋三前首相は、2012年末に二度目の政権に就き、昨年9月まで7年8カ月間政権を維持した。1年という短命で終わる菅義偉首相は、発足当初から「安倍路線を継承する」と明らかにした。「安倍路線」は9年間日本社会全般に大きな影響を及ぼしてきた。
河野氏は安倍路線と断絶するという姿勢を示している。河野氏は19日、NHKに出演し、安倍前首相の経済政策であるアベノミクスについて「企業の利益は非常に拡大したが、個人の所得にはつながらなかった」と真っ向から批判した。また、安倍前首相が退任直前に異例にも談話まで発表して必要性を強調した「敵基地攻撃能力保有論」についても、「過去の概念」と低く評価した。彼は「敵基地攻撃論は昭和時代の概念」とし「いま論議すべきことは、日米同盟を通じてどのように抑止力を高めていくかという問題」と述べた。
石破茂元幹事長、小泉進次郎環境相など、河野氏を支持する議員グループ「必勝を期す会」は16日に設立総会を開き、「自民党を変えよう」と改革を宣言した。自民党関係者は週刊誌「AERA」のインタビューで、「河野さんや石破さんらが言う党改革とは、総理を辞めた後も党内で強い影響力を持つ『安倍支配からの脱却』」だと述べた。世論も支えている。朝日新聞が11~12日に実施した世論調査によると、回答者の58%が次期首相は「安倍路線を継承しない方がいい」と答えた。
岸田氏は半歩ほど距離を置いている。例えばアベノミクスについて、「基調は維持しながらやや補完し、分配政策を拡大する」という立場だ。敵基地攻撃能力も「これを含め抑止力の次元で準備することは考えられる」と明らかにした。岸田氏は、安倍路線を大きな枠組みでは継承する中で、部分的な変化を追求するものとみられる。極右性向の高市氏は「安倍路線を継承する」と数回明らかにした。野田氏は安倍氏とは線引きをしている。特に森友学園、桜を見る会など、安倍前首相が直接関与した代表的な不正腐敗疑惑事件に対して再調査が必要だと明らかにするなど、最も強硬な姿勢だ。一方、残りの3人の候補は再調査には否定的だ。
河野氏、韓日関係において歴史問題と輸出規制の分離を示唆
国交正常化以来最悪の状況が続いているという評価のある韓日関係は、河野氏が当選した場合、変化が予想される。今月18日、日本記者クラブ主催の討論会で、韓日関係に関する質問は外相、防衛相などを務めた河野氏と岸田氏に集中した。河野氏はこの席で、韓日関係の2つの中心懸案である歴史問題と対韓国輸出規制を分離する意思をほのめかした。河野氏は「貿易については、日韓両国の確実な議論を通じて必要なことはするが不必要なことはしないのが原則」とし「(韓国側の)状況が解消されれば規制対策も必要なくなるだろう」と述べた。さらに「日本から、韓国からなどというようなことは言わず、貿易問題は互いに近づいてきちんと話し合うことが重要だ」と付け加えた。
これまで日本政府は、日本軍「慰安婦」問題と強制動員被害者問題については、韓国が解決策を先に持ち寄ることを要求し、輸出規制と連動させてきた。今年7月、文在寅大統領が東京五輪開会式の出席を推進した際、争点のうちの一つが輸出規制だった。韓国政府はこの問題を解決し、行き詰まっている韓日関係改善のターニングポイントにしたかったが、日本側の反応は冷ややかだった。結局、韓日首脳会談は実現しなかった。
これに先立ち、2019年7~8月、日本政府は半導体・ディスプレイの重要素材である3大品目の規制、さらに輸出審査優遇からの排除という「韓国輸出規制」に踏み切った。公式には歴史問題のためではなく、輸出品が北朝鮮に流出する恐れなど安保上の問題だと日本政府は主張してきた。韓国政府は日本の要求を受け入れ、輸入品管理などに対する改善策を設けたが、日本は輸出規制を緩和しなかった。外交関係者の間では、日本の首相の決断だけが残っているという話も出ている。ただ、文大統領の任期があまり残っておらず、日本も今年11月に衆議院選挙が予定されているなど大きな政治日程のため、直ちに輸出規制問題が解決できるかは不透明だ。
もちろん河野氏も歴史問題では強硬だ。18日の討論会で河野氏は歴史問題について、「韓国側は司法判断だと言うかもしれないが、やはり(1965年の日韓)基本条約に反するものであり、韓国内で解決しなければならない」とし「韓国政府がきちんと対応できるようにするのが大原則」と強調した。河野氏は、外相を務めた2019年、強制動員賠償判決の問題でナム・グァンピョ駐日韓国大使(当時)を外務省に招き、ナム大使の発言を途中で遮って「無礼だ」と発言した人物でもある。
2015年12月28日の韓日「慰安婦」合意時に外相を務め、日本側の当事者だった岸田氏は「(日本軍「慰安婦」など)国際的合意、条約、ひいては国際法など、韓国がこうしたことを守るのか疑問視されている」とし「これさえも守らないならば何を約束しても未来は開かれない」と述べた。そして「対話は必要だがボールは韓国にあると思う」と付け加えた。輸出規制については特別な言及はなかった。
1回目の投票で過半数得票は難しく、決選の可能性
世論だけを見ると河野氏の人気が目立つが、結果は簡単には予測できない。自民党総裁選は所属国会議員(382人)と同数の党員・党友の票を合算し、計764票のうち過半数(383票以上)を獲得した候補が当選する。1回目の投票で過半数を得られなかった場合、上位1・2位が国会議員(382人)と全国47都道府県連がそれぞれ1票ずつ行使する決選投票(計429票)で勝負が決まる。1回目では世論が、決選投票では国会議員票が重要となる。
全国110万4336人の意見が反映される党員・党友投票では河野氏がかなり有利だ。共同通信が17~18日、自民党党員・党友を対象に実施した世論調査(回答者1028人)によると、次期総裁に河野氏を選んだ人が48.6%に達した。2位の岸田(18.5%)より2倍以上高かった。高市候補は15.7%、野田候補は3.3%にとどまった。
国会議員の票の行方は混戦が予想される。読売新聞が最近、自民党議員379人を対象に支持動向を把握したところ、岸田氏が25%(97人)で最も高く、河野氏が22%(83人)だった。高市氏が19%(71人)と続き、野田氏は4%(16人)だった。同紙は、1回目で誰も過半数を得られず決選投票に進む可能性が高いと報じた。決選まで持ち込まれれば党員票が一気に減るうえに、安倍前首相を中心に高市氏を支持していた票が岸田氏の方へ流れる可能性が高く、河野氏が敗北するだろうとの見方も出ている。