COP26inグラスゴー
「時間ない。今すぐ行動を」
首脳級会合始まる
【グラスゴー=桑野白馬】英グラスゴーで開かれている国連の気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で1日、首脳級会合が始まりました。開会に当たり、議長国を務める英国のジョンソン首相は、気候変動に対処するための「時間が無くなってきている。今すぐ行動しなくてはならない」と呼びかけました。
ジョンソン氏は、石炭火力発電の廃止や、途上国への支援資金提供の約束に言及。具体的な行動が伴わなければ、空の約束になるとして「世界の怒りと焦りは抑えられなくなるだろう」と強調しました。
国連のグテレス事務総長は、「わたしたちは厳しい選択を迫られている。化石燃料を止めるか、それとも化石燃料がわたしたちを止めるかだ」と強調。「自然をトイレのように扱うのはもうたくさんだ」と強調し、各国に早急な行動を要請。会議が失敗に終わった場合、現在5年ごとの各国の削減目標提出を毎年行う必要があると警告しました。
開会に次いで各国首脳が演説。米国のバイデン大統領は、「未来を守るための野心と革新を共有する10年の始まりでなければならない」と強調。スペインのサンチェス首相は、脱石炭火力発電の必要性を強調し「この4年間で90%の石炭火力発電を削減した」と発言。2025年までに、途上国を支援する「緑の気候基金」に従来の50%増の、年間13・5億ユーロ(約1兆8000億円)を拠出すると表明しました。
また同日、100人以上の各国首脳が、2030年までに森林破壊や土地の劣化を終わらせるとする宣言に合意しました。
「私たちの島は浸水している」
島しょ国から切実な訴え
【グラスゴー=桑野白馬】首脳級会合では、温暖化の悪影響をもっとも受ける島しょ国や途上国の首脳が同会議にかける切実な思いを訴えました。
アフリカ東部インド洋の島しょ国セーシェルのラムカラワン大統領は、気候変動の影響で「すでに生き残りがかかっている。海面上昇に恐怖を感じる。すべての経済活動を失ってしまう」と自国の窮状を紹介。「メッセージは単純だ、すぐに動かなければいけない。みんな同じボートに乗って、地球を守るたたかいをしているのだから」と訴えました。
南アジア・バングラデシュのハシナ首相は、自国の温室効果ガス排出量が世界の0・47%にとどまる一方で、温暖化の影響を最も受けている、ぜい弱な国だと発言。今後20年間で「太陽光発電を中心に再生可能エネルギー比率の40%達成を目指している」と目標を掲げました。ハシナ氏は、過去7年で気候変動関連の支出は倍増したとして、自国の資源だけでは気候変動の影響に対処できないと強調。先進国が約束した途上国への支援資金目標の達成や、気候変動による損失と被害に対し、世界規模での責任分担を求めました。
「私たちの島は、ゆっくりと少しずつ浸水している」と訴えたインド洋の島しょ国モルディブのソーリフ大統領は「私たちの声に耳を傾けてもらうためには、一体何が必要なのか」と発言し、先進国の姿勢を問いました。
各国首脳に「いま立ち向かえ」
ネット署名130万超
グレタさんら公開書簡に
スウェーデンのグレタ・トゥンベリさんら4人の女性環境活動家が国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)の開幕とともに呼び掛けを始めた公開書簡へのオンライン署名が2日夕(日本時間)の時点で、130万を超えました。書簡は、温室効果ガス排出を削減せずにいる首脳らを「裏切りだ」と世界中の若者が非難しているとし、五つの要求を突き付けています。
書簡に名を連ねたのはグレタさんのほか、ウガンダのバネッサ・ナカテ、ポーランドのドミニカ・ラソータ、フィリピンのミッツィ・タンの若者4人です。
気温上昇を今世紀中に1・5度以内に抑えるというパリ協定の目標から現状は「恐ろしいほどにかけ離れている」とし、「これは防災訓練ではなく、地球のレッド・コード(非常事態を伝える警報)だ。私たちは気候非常事態に立ち向かうよう、あなた方首脳に求める。来年でも、来月でもなく、いまだ」と呼び掛けています。
具体的には、(1)前例のない速度で排出量を削減し1・5度目標を守る(2)化石燃料への投資・補助金・新規計画をやめる(3)排出量を透明化し巧妙な炭素会計をやめる(4)最脆弱(ぜいじゃく)国への1000億ドル(約11・4兆円)の支援の約束を果たす(5)労働者と弱者を守る気候政策の実施―を求めています。
署名の目標数は150万。公開書簡の閲覧と署名は日本語でも可能です。
https://secure.avaaz.org/campaign/jp/climate_action_now_loc/
COP26inグラスゴー
「声聞き、行動を」各国首脳に環境活動家
「川は死に絶えつつある」
【グラスゴー=桑野白馬】国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議で首脳級会合の開会式や各国首脳の演説に先立ち、環境活動家の若者が登壇してスピーチしました。世界各国の首脳らに向かって、気候変動を命にかかわる危機として捉え、今すぐ行動をするよう促しました。主な発言を紹介します。
いま変化が必要
◆ブラジルの先住民 チャイ・スルイさん
私たちは、アマゾンに少なくとも6000年住んできました。部族長の父は、星、月、動物、木に耳を傾けよ、と言います。川は死に絶えつつあり、花は昔のように咲かない。「私たちには時間がない」そう地球が語っています。このままでは、私たちは間違った道を歩まなければなりません。
世界規模の変化が必要です。2030年でも50年でもなく、いま、変化が必要なのです。あなた方が現実に目をつぶっている間に、私の友人は、森を守っていて殺されました。先住民は、気候非常事態の最前線に立っています。
ここでの決定の中心に、私たちはいなければなりません。私たちは世界の終わりを延期するアイデアを持っています。でも、空虚なウソや偽の約束をするのはやめよう。生きていける将来と現在のためにたたかいましょう。
雨期が消滅した
◆ケニアのエリザベス・ワトゥティさん
ケニアでは、200万人が気候変動による飢餓に苦しんでいます。ここ数年は雨期が消滅し、川が干上がり、穀物が足りずに動物や人が死んでいます。3人の子どもが、干上がった川岸で泣いているのを見ました。母親と水を探しに12マイル(約19キロメートル)歩いてきたのです。
私たちの声を聞いてください。このままでは、より深刻な被害が待ち受けています。ここにいない何十億人と、物語が語られることのない人々に、思いやりのある沈黙の瞬間をささげたい。どうか、心を開いてください。私たちの心に踏み込んでみませんか。
もしあなたたちが感じることができたのなら、心の傷や不公平感は耐え難いものになるでしょう。サハラ砂漠以南の地域では、温室効果ガスの排出に0・5%程度しか貢献していません。子どもたちはそこに貢献していないにもかかわらず、飢餓に苦しんでいます。
あなたたちには、子どもたちが食べ物と水を手に入れられるよう行動する責任があります。空の約束では子どもたちは生きられない。心を開いて、行動してください。