「第2のTHAAD」になりかねないとの懸念に
尹政権「米中と交差して協議」
キム・テヒョ国家安保室第1次長が今月18日午後、ソウル龍山の大統領室庁舎のオープンラウンジで、韓米首脳会談に関するブリーフィングを行っている/聯合ニュース
韓国政府が対中国牽制の側面が強い米国主導の経済協力構想「インド太平洋経済枠組み」(IPEF)に創設国として参加することを確定した。中国側の反発が懸念される中、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が発足初期から外交的難題を抱え込むことになった。
18日、大統領室の説明を総合すれば、尹大統領は21日に龍山(ヨンサン)で開かれる初の韓米首脳会談で、米国のジョー・バイデン大統領にIPEF構想に対する支持と参加意思を明らかにする方針だ。また、23日に日本で開かれる見通しのIPEF発足宣言首脳会合にもオンラインで出席する。
これに先立ち、ジーナ・レモンド米商務長官は17日(現地時間)、オンライン記者会見で「バイデン大統領が来週、東京で開かれるクアッド(Quad)首脳会合の際、IPEFの発足を宣言する」と述べた。クアッドも米国が中国を狙って日本、インド、オーストラリアと共にする非公式戦略フォーラムだ。レモンド長官はバイデン大統領の訪韓・訪日の日程に随行する予定だ。
バイデン大統領が昨年10月、東アジア首脳会議(EAS)で初めて構想を明らかにしたIPEFは、公正で弾力性のある貿易▽サプライチェーンの弾力性▽インフラ施設・クリーンエネルギー・脱炭素▽租税・反腐敗の4分野での協力を目指す。特に米国には、半導体やバッテリー、電気自動車など高付加価値産業を米国中心に再編しようとする構想がある。
米国がIPEFを推進する背景は二つだ。まず、中国とASEAN(東南アジア諸国連合)が主導した超大型自由貿易協定(FTA)である「地域的な包括的経済連携(RCEP)協定」に対する牽制だ。次に、トランプ政権時代の2017年、「環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定」(CPTPP)の前身である「環太平洋経済パートナーシップ協定」(TPP)から脱退したことを挽回する狙いもある。
この過程で加盟国が貿易慣行と未来の主要産業の共通基準を作れば、自然に中国を排除して孤立させることができるという思惑がある。中国の浮上を防ぐための外交・安全保障分野の協議体がクアッドならば、IPEFは「通商分野のクアッド」といえる。
中国の王毅外相が16日、パク・チン外交部長官とのテレビ会談で、「域内で開放と包容を維持し、陣営間の対決に反対することが、中韓両国の根本利益に合致する。『脱サプライチェーン』や『サプライチェーンの断絶』など否定的な傾向に対抗し、グローバル産業サプライチェーンを安定的に維持しなければならない」として不快感を表わしたのも、このような脈絡からだ。IPEFへの参加を目指している台湾まで合流すれば、中国の反発がさらに激しくなるものとみられる。尹大統領は新政権発足から10日で、厳しさの増していく米中戦略競争の荒波の中に飛び込むわけだ。中国が韓国内のTHAAD(高高度ミサイル防御)配備の時以上の報復に出ることを懸念する声もあがっている。
大統領室は、IPEFが中国を排斥するものではないとし、このような見解に一線を引いた。国家安保室のキム・テヒョ第1次長は、「IPEFを単純に大国同士の敵対的デカップリング(脱同調化)とみなす必要はない」とし、「中国とは韓中FTAの後続協定について協議しているが、そこではサービス市場だけでなく、円滑な市場開放に向けて中国と共に準備している」と強調した。これと関連して大統領室関係者は本紙に「韓中FTA交渉をしている産業部通商交渉本部に、韓中サプライチェーンの安定のため協力のしくみを作る必要があると指示した」と明らかにした。中国の反発を最小限に抑えるための動きだ。
キム次長は中国が「第2のTHAAD報復」を加える恐れがあるという指摘にも「THAAD配備の措置は、8カ国以上が議論するIPEFとは本質的に環境が異なり、過去のようなことが発生しないよう、米国・中国とどんなアジェンダであれ交差して協議していく」と述べた。
国立外交院米州研究部のミン・ジョンフン教授は「私たちが主導するのではなく、国益を守るために多国間協議体に参加するという点を強調する必要がある」とし、「特定の国を排除することが目的ではないという点を明確にし、発足宣言でも用語や単語も細心の注意を払って選ぶ必要がある」と指摘した。
一方、尹大統領は就任前に、中国への「政策協議代表団(特使団)」派遣を準備したが、中国の新型コロナウイルス感染拡大のために実現しなかったことが確認された。大統領室の主要関係者は、「中国も政策協議団の派遣を積極的に検討したが、大連や青島で3週間隔離されてから北京に行ける状況だった」とし、「(特使団が行けないことについて)中国側も理解を示した」と述べた。
チョン・インファン、ソ・ヨンジ記者、ワシントン/イ・ボニョン特派員(お問い合わせ japan@hani.co.kr)