中国に見せつけるかのように…
韓米「経済安全保障」を中心に超密着
「グローバルで包括的な戦略同盟」への発展に合意
IPEFへの参加など中国牽制を具体化
北朝鮮政策も抑止力の強化に焦点
対中関係・北朝鮮の核問題解決の道、さらに狭まる
韓国と米国は21日、首脳会談を通じて両国の同盟関係を朝鮮半島を越えた「グローバルで包括的な戦略同盟」に発展させていくことで合意した。米中戦略競争の中で、それなりにバランスを取ろうと努力した昨年5月の両国首脳会談とは異なり、今回の首脳会談は「経済安全保障」を掲げて米国寄りの姿勢を示し、明らかに中国を牽制する態度を取った。北朝鮮政策では、韓米合同軍事演習の拡大など、対北朝鮮抑止力の強化に焦点を合わせた。韓米同盟の領域は広がったが、難しくなった中国との関係設定、さらに狭くなった「北朝鮮核問題の解決策」の道をどのように切り抜けるかが韓国外交の課題として浮上した。
今回の首脳会談では、中国牽制のための米国の経済構想であるインド太平洋経済枠組み(IPEF)が核心議題として取り上げられた。開放的なインターネットや自由で開かれたインド太平洋、クアッド(Quad、米日豪印による安全保障協議体)との協力、南シナ海における航行の自由など、事実上中国牽制を念頭に置いた内容が共同声明に盛り込まれた。「すべての議題が中国に関連したもの」(ウッドロウ・ウィルソンセンターのスミ・テリー・アジアプログラム局長)とも評された。
1年前の韓米首脳共同声明は、「インド太平洋地域に対する『それぞれの』アプローチ」を確認する形で、韓国側が米中の摩擦に巻き込まれないための安全装置を設けたが、今回の声明で、「尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領はまた、米国のインド太平洋戦略を歓迎する」と明らかにした。またバイデン大統領は「韓国のインド太平洋戦略枠組みを樹立する」という尹大統領構想に支持を表明した。大統領室は「韓国のインド太平洋戦略を具体化するための作業を本格的に進める」と発表した。文在寅(ムン・ジェイン)政権はインド太平洋戦略を立てる代わりに、インドやASEANと協力する新南方政策を推進した。韓国が独自のインド太平洋戦略を持つことは、中国を牽制する米国のインド太平洋戦略への同調とみられる可能性があったためだ。
共同声明は台湾海峡と南シナ海に言及しながらも、「中国」は明示しなかった。キム・ソンハン国家安保室長は「台湾関連の表現は昨年5月の首脳会談でも盛り込まれた。『台湾海峡の平和と安定を追求する』という文言の延長線上で理解してほしい。台湾海峡の安定問題は韓国の国益とも直結する事案と言える。同問題と関連し、中国側の報復など誤解する余地はほとんどない」と説明した。
しかし、今回の共同声明で中国に向けられた表現はさらに強化された。台湾海峡を「インド太平洋地域の安全保障と繁栄の核心要素」とし、新たに意味を付与した。「インド太平洋地域の人権状況に関する相互の懸念を共有」は香港と新疆ウイグル問題を念頭に置いた表現とみられる。このような言及を内政干渉だとして反発してきた中国の対応がさらに激しくなると予想される。このような懸念に対し、大統領室はIPEFへの参加が中国を排斥するのではなく、韓中関係も管理していけると説明しているが、中国との関係設定が韓国外交の課題となった。
南北の「板門店宣言(2018年4月27日)」と朝米の「シンガポール共同声明」に対する言及も消えた。北朝鮮核問題の外交的解決策の扉はさらに狭くなった。昨年の共同声明には「2018年の板門店宣言とシンガポール共同声明など既存の南北間、朝米間の約束に基づいた外交と対話が、朝鮮半島の完全な非核化と恒久的平和定着を成し遂げるのに欠かせないという共同の信念を再確認した」という文言が盛り込まれた。これについて、文在寅政権はバイデン政権が板門店宣言とシンガポール共同声明を朝米関係の出発点にしたと説明した。
北朝鮮の核とミサイルへの対応は具体化された。尹大統領とバイデン大統領はハイレベルの拡張抑止戦略協議体(EDSCG)を早期に再稼動することで合意し、韓米合同軍事演習および訓練の範囲と規模を拡大するための協議を開始することにした。北朝鮮の人権関連の表現も直接的なものに変わった。昨年の「北朝鮮の人権状況を改善するために協力することに同意する」が、「北朝鮮の人権状況に対する深刻な懸念を表明した」に変わった。
共同声明で「ウクライナ事態」のような中立的な表現の代わりに「ウクライナに対するロシアの一方的な攻撃」だと明示した。これは韓国が欧州でも米国やその同盟国と関与する扉を開いたものとみられる。これと関連し、尹大統領は21日の記者会見で、新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大や気候変動、民主主義の危機などを言及したうえで、「このような課題は自由民主主義と人権という普遍的価値を共有する国家の連帯を通じてのみ乗り越えられる」とし、「両国はグローバル包括的戦略同盟としてこのような課題に共に対応していき、ルールに基づいた秩序を共に作っていくことを目指す」と述べた。
技術分野の安全保障を強調した韓米は、サイバーセキュリティをさらに多様で具体的に言及した。共同声明は、サイバー敵対勢力の抑止▽重要な基盤施設のサイバーセキュリティ保安▽サイバー犯罪およびこれと関連したマネーロンダリングへの対応▽仮想通貨およびブロックチェーン・アプリケーションの保護など挙げ、「韓米間協力を持続的に深化させていくことにした」と明らかにした。最近、米財務省は仮想通貨の奪取やマネーロンダリングなど、北朝鮮のハッキング活動を阻止するために努力し続けていると発表した。