「n番部屋はまさにあなたの話…
犯人は警察や記者だけが捕まえたのではない」2
(1の続き)
彼らは劇映画の撮影現場でしか見られないような巨大なセットに案内された。チェ監督はそれぞれのキャラクターに合わせて個々にセットを組んだ。キム・ワン、オ・ヨンソ両記者はたくさんの紙が貼ってあるボード板と本棚を背景にして、書類が山のように積まれた机に座った。明暗の対比がはっきりしている照明はノワール映画を彷彿とさせる。チェ監督は「観客に犯罪追跡劇として見せるためにはイメージが重要だと思った。各人物に合ったセットや照明などによって追跡者キャラクターを構築しようとした」と説明した。
両記者は取材の経験談を落ち着いて語る。特異なのは、普通のインタビューシーンとは異なり、人物がまるで観客の目を見ながら語っているような構図を取っているということ。その空間で、記者は徹底して1人。カメラもスタッフも見えない。目の前にあるのはプロンプターのみ。そこにチェ監督の顔が映し出される。プロンプターの中のチェ監督が質問すれば、彼を見ながら答える。「人もおらず騒音もない真空状態のような空間で、私1人でしゃべっていました。ある瞬間、何かに魅入られたようにすらすらとしゃべれるようになるんです。自分でも意識していなかった感情を吐き出していて泣きそうになったこともありました」。オ記者はその瞬間を思い起こした。チェ監督は「インテロトロンという装置を使って、人物が観客の目を見ながら話しているような効果を出した。見ている人たちに『あなたは見物人ではない。女であれ男であれ、まさにあなたの話だ』というメッセージを伝えたかった」と演出の意図を明かした。
両記者は、映画を撮影している時に、自分でも意識していなかった傷に向き合い、癒やす効果を得たと語る。「完成した映画を見たら、取材に臨む自分の態度の変化が生々しく描き出されていました。最初は記者1年生だから先輩に言われてやっていたんですけど、次第に被害者に感情移入するようになりました。その一方で記者だから冷徹さを保たなければならないという強迫観念で苦しんでいたことが分かったんです。その過程を見たら、なぜだか癒されました」(オ記者)。「私は取材している時はきついのが分からなかったんですが、被疑者の『博士』が捕まってからがむしろ大変でした。あまりにも若いから、何年か獄中で過ごして出てきて私の家族に害を及ぼすのではないか、道で20代さえ見れば博士部屋の一味ではないかと不安で耐えられませんでした。病院のカウンセリング治療も受けました。今回、自分の話を吐き出し、胸がいっぱいになるのを感じてとても楽になりました」(キム記者)
映画は「博士」ことチョ・ジュビンとn番部屋を開設した「カッカッ」ことムン・ヒョンウクが検挙され、それぞれに懲役42年と34年が言い渡されるまでを扱った。追跡団炎と本紙の報道、時事番組「スポットライト」(JTBC)と「気になる話Y」(SBS)の後続報道、警察の捜査過程などが次々につながっていく。「メディアや警察だけでなく女性団体、果ては被疑者の弁護人まで、みな協力してくれました。偶然にも地獄道に出会って渦に巻き込まれた人たちの孤軍奮闘をつなげてみると、結局は見えない連帯を通じて犯人を捕まえたということだったのです。映画に出てきた24人だけでなく、その後に続く数多くの方々が事件を解決したわけです。それ自体が『ドラマ』であり、映画の最も重要なメッセージだと思います」(チェ監督)
主な被疑者は捕まったものの、事件は依然として現在進行形だ。最近の本紙の報道によれば、「一般加担者」378人の一審判決は平均すると罰金653万ウォン(約65万4000円)、懲役13.2カ月。懲役刑の執行猶予を言い渡されたのが261人(69.1%)で最も多かった。600本あまりの児童・青少年性搾取物をダウンロードし所持していた20代が無罪を宣告されてもいる。キム記者は「デジタル性犯罪は(製作・流布した人を)厳しく処罰することと(ダウンロードして視聴した人も含めて)全てを処罰することが必要だが、後者はまだ不足しているのが実情」と歯がゆい胸の内を打ち明けた。オ記者も「需要や関心があるため、このような犯罪がなくならない。所持するだけでも製作した人と同様に処罰すべきなのに、まだ法が追いついていないのが残念」と語った。
オンライン動画サービス(OTT)順位集計サイト「フリックスパトロール」によると、『サイバー地獄』は25日時点でネットフリックス映画で世界17位。韓国、香港、ベトナム、台湾、日本などアジア9カ国でベスト10以内に入っている。劇映画ではないドキュメンタリーとしては異例の成果だ。「演出者として映画的成就も重要ですし、面白さと意味を評価してくれるのもうれしいですが、デジタル性犯罪の危険性を全世界に認識してもらえればやりがいを感じると思います。究極的には教育資料として使われたらいいなと思っています。等級のせいで青少年に見せられないのが残念ですが、成人になったばかりの時に、男性であっても女性であっても必ず見てほしいです」(チェ監督)