受刑者にも定額給付金を支給？・・・

　ＤＶＤ被害者や派遣社員、またホームレス、ネット難民など、さまざまな事情で現住所に住民登録をしていない人たちへの定額給付金の支給方法については、まだはっきりした解決策は示されていない。そして今度は、死刑囚や無期懲役の受刑者にも定額給付金を支給するのかという議論が、国会や総務省などで続いているという。
　法務省によると、死刑囚は４日現在で９９人、無期懲役受刑者は２００７年末現在で１６７０人。刑務所など全国刑事施設への収容人数は、２００６年末の統計で８１２５５人だそうである。
　定額給付金は、住民基本台帳か外国人登録原票に記された人が支給対象とされている。総務省によると、死刑や無期懲役の場合、原則として拘置所や刑務所に住民票を置くのが基本的な考え方だというから受給資格はある。しかし、一部には「世論や国民感情を考えれば、死刑が確定した凶悪犯にも支給するというのは……」という声があるそうだが、私もそう思う。死刑囚に限らず、受刑者は公費すなわち国民の税金によって衣食住が保障されている。そういう受刑者になぜ生活支援が必要か、自由に使うこともできないのにどうして景気刺激につながるのか、まさしく「猫に小判」ではないか。
　それに、２月１日時点で刑務所などに収容されている有期刑の受刑者への支給はどうなるのだろうか。住所不定であったり、住民票が実家にあったり、第一、銀行口座を持っている受刑がどれほどいるだろうか。むろん、本人が受け取りに行くことはできないのである。
　受刑者は刑務所内で労働に従事した場合、作業内容に応じて１０段階で時給５円９０銭－４１円９０銭の作業報奨金を受け取っているそうである。これで計算すると、定額給付金は１日８時間労働として２５５－３６日分に当たるという。高利化社会の昨今、年金をもらっている高齢の受刑者がたくさんいるそうだが、それでも衣食住はタダ、生活費を負担することはないのだから安気なものである。だから昨今、刑務所に入れば衣食住に不自由しないですむからと、わざと犯罪に走る高齢者も少なくない。
　そういう人たちにまでなぜ定額給付金を支給しなければならないのか。受刑者にも人権はあるという人たちもいるだろうが、少なくとも受刑者である間は一般国民と同じような権利や義務を有するとは考えにくい。はっきり言わせてもらえば、国民の税金で生活が保障されている上にまだ定額給付金をもらおうなど、虫が良すぎる。
　この定額給付金には“埋蔵金”が使われるそうだが、“埋蔵金”ももとをただせば善良な国民が収めた税金である。その血税を受刑者にまで支給するとは納得しかねる話ではないか。ねぐらもなく、食うものにも事欠いている人たちに比べれば、衣食住が保障されているだけでも有難いと思わねば…。給付金がもらえないのは罪を犯した者の罰である。

　話は変わるが、２次補正予算には定額給付金の支給に必要な経費として８２５億円が計上されているという。これら経済対策費の２兆何千億円は、いわゆる“埋蔵金”剰余金から捻出されるそうだ。が、そのため、本来は国債償還に充てるべきお金を転用するため、国の借金返済が遅れ、その分、利払いなどの国債費が毎年度約８００億円も膨らむと試算されているという。こういう内情を知ればなおのこと、定額給付金は愚策だとしか思えない。
　大判振る舞いはいいが、こうやってあとへあとへとしわ寄せが行くのである。“埋蔵金”だとて無尽蔵ではないのだ。そのしわ寄せを解消するための対策が３年後の消費税引上げである。今まで“埋蔵金”はない、ないと言われてきたのに、麻生内閣になって急に“埋蔵金”の存在が明らかになるなんて…。どういう“鼻薬”を効かして吐き出させたのだろうネエ、麻生さん。