以前に録画して忘れていた『アンナと王様』を観た。この映画は1956年にアカデミー賞を受賞した『王様と私』のリメイクだが、ミュージカル映画ではなく、実在の人物アンナ・レオノーウェンズ婦人をモデルに、小説にかなり忠実に描かれているという。シャムの王様を演じるのは香港映画界のスターであったチョウ・ユンファで、家庭教師のアンナを演じるのはジョディ・フォスター、日本での公開は2000年2月である。
シャム国とは現代のタイ国である。ちなみに、シャム猫はこの国の王室や寺院の門外不出の生き物として保護されていたそうで、ヨーロッパのアジア進出に伴って、シャムの王家を通して特別な贈り物、生きている宝物として賓客に進呈され、世界に広まっていったという。
この映画はラブ・ストーリーだが、抱き合うシーンはもちろん、キスシーンもない。外国映画では珍しく純なプラトニック・ラブ・ストーリーである。また、アラク将軍のクーデターと国王によるその討伐というアクションシーンもあり、ストーリーは似ていても真面目な恋愛小説といった感じで、ミュージカル映画『王様と私』のように娯楽性があり気楽に楽しめるという映画ではない。
この映画では、荘厳な寺院や煌びやかな宮殿など、アジア独特の美しい景観も楽しみの一つであるが、実は、モデルとされる王ラマ4世の恋物語がでてくるのは王室への不敬である…とのことで、タイでは撮影許可がおりず、マレーシアに建設された巨大セットでの撮影だったという。もちろん、タイではどちらの映画も上映禁止だったそうである。
私はどちらかと言えば、ユル・ブリンナーとデボラ・カーの『王様と私』の方が好きである。ユル・ブリンナー演じる王は頑固で野蛮な男性、チョウ・ユンファ演じる王は気品あふれる知的な男性と、まったくタイプは違うが、それぞれの映画の特色に合った王の魅力があふれていると思う。
『王様と私』の「Shall we Dance」の曲に乗って踊る2人のダンス・シーン(http://youtu.be/5qy5z_n-SOM?hd=1)はコミカルで笑いを誘うシーンもあるが、『アンナと王様』のダンスシーンは、心のうちを胸に秘めた哀しい別れのダンスシーンである。
どちらもすてきな映画で、何よりも色彩が美しい。セット撮影とはいえ、さすがハリウッド映画だけのことはある。
久しぶりに似顔絵を描いたが、ユル・ブリンナーの野性味が出ているかしら?
デボラ・カーの絵は、似顔絵を描き始めた初期の頃のもので出来はよくない。
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