京都大の入試問題投稿事件に思う・・・

　京都大の入試問題投稿事件では疑問に思うことがたくさんある。予備校生は、同志社大１問、立教大２問、早稲田大１問を投稿、京大入試前に「滑り止め」の大学入試で練習したという。そして、本命の京大では数学６問、英語２問の８問を投稿したそうだが、数学では６問すべて質問サイトの回答によるカンニングだったという。が、時間内に回答が寄せられなかった場合はどうするつもりだったのか。そんな危険な賭けをするくらいならもっと勉強すればよかったのに…。
　彼は、「机の下で“股間”の携帯を左手で操作し、質問サイトに何度も投稿。さらに第三者からサイトに寄せられた回答を携帯で閲覧しつつ、利き腕の右手で答案に書き込んだ」と供述しているという。決められた時間内にこれだけの早業をやってのけるには、ブラインドタッチで早打ちができなければ難しいだろう。それに、英語はともかく、数学の特殊記号などを短時間で打ち込むには、相当な熟練が必要で、あらかじめ数式の一部などを単語登録していたのではないかといわれている。
　私も昔、印刷所の下請けで、高校の合同模擬試験全科目の版下をパソコンで作成していたことがある。化学、物理、数学など特殊記号が多く使われる問題はパソコンでもなかなか手間の掛かる作業で、特に、数式入力についてはスピード以前の問題である。それを携帯の小さな画面で、それも左手だけで手早くやってのけたということに驚くばかりである。
　あらかじめ練習するなど用意周到な準備をしているようにもみえるが、携帯電話利用については完全に無防備である。携帯購入時には本人確認が義務付けられており、それは取りも直さず発信元を隠して使用する事は不可能だということだが、携帯から身元がばれ、大事な母親に迷惑が掛かるとは考えなかったのだろうか。

　彼は金髪でピアスという外見とは裏腹に、おとなしく真面目で、いつも１人で行動していたという。母親の経済的負担を思いやってのことらしいが、これがばれたらどういう結果になるか、自分の将来や家族がどうなるか、全く考えが及ばなかったとすれば「学力重視」の頭でっかち、思考力に欠けた未熟さだけが目立つ。　
　この事件は匿名の通報者によって明るみに出たそうだが、もし通報がなければ彼は早稲田と同志社は合格、また京大でも合格したかもしれない。だとしたら、真面目に一生懸命勉強した人はバカを見ることになる。それを考えたらやはり、たかがカンニングではすまされないと思う。
　京都府警や京大には、「逮捕は行き過ぎだ」という抗議の電話やメールがたくさんあるそうだが、これはおかしい。彼は、それまでも塾の問題を投稿して練習しており、私立大学数校でも同じことをやっている、いわば常習者でもある。大学の業務に支障を与えた罪、世間を騒がせた罪は償わなければならない。が、その上で来年、正々堂々と再チャレンジしてくれることを願ってもいる。

　日曜日のお昼の番組で、携帯で２００文字をどれくらいの時間で入力できるか、彼と同年代の若者何人かに入力してもらっていた。一番早い人で３分１１秒、ほとんどの若者が４分も掛からないのである。そのスピードは目にも留まらぬ早業としか言いようがなく、私から見ると、まるで指の魔術である。

　何年か前には、インターネットの読書感想文をそっくりそのまま書き写して提出する子どもが多いと話題になったが、昨今は、大学の卒論をインターネットからコピペする学生が増えているという。そのため、インターネットのものと学生の論文を照らし合わせてコピペかどうかを見分けるソフトを導入している大学も多いという。
　インターネットは使いようではこれほど便利なことはないが、悪用されればとんでもないことになる。悪知恵を働かす奴は後を絶たないが、それだけの頭脳があればなぜ自分のために活用しないのか、それも理解に苦しむところである。