「殺す」
入口のドアからある一定の間隔でそれはいた。屈み込んで見ると紛れもなくサソリだ。乳白色をした子供だろう、うずくまって動かない。びびっているわりには一瞬、ぼくは写真に撮ろうかと考えた。しかしフラッシュで親サソリが目を覚まし子供サソリのところへ走ってきたらやばい状況になる、やめた。殺すしかない、まず親からだ。腕の長さと手に持ったサンダルで叩き潰せる距離までぼくは忍び寄った。親サソリは疲れているのか尾っぽを跳ね上げる攻撃的な姿勢をとらない。力一杯サンダルを打ち下ろすと、そのサンダルを履いてぼくは子供サソリを次々と踏み潰した。潰れたそれらは箒で外に掃きだした。
生あるものを慈しむインド人はぼくに言うだろう
「何も殺すことはない」
1回目サソリとの出会い ハタヨガ・インストラクターに助けを求めた
彼はサソリに刺され3日間寝込んだ 朽ちかけた木の間にいるサソリに
藁ほうきで向かう 2軒先が彼の部屋だ 逃げ出したサソリはどこへいくのか
初めから彼は殺す気持ちなどなかったのだ
生あるもの サソリも蛇もカラスも木々、花々、そして人間も
聖なるガンジス河と山々によって生かされている
第1話 クマルとサソリ 終わり