サフラン・ババ 最上段 彼の寝床
スリランカ1ヶ月、南インド1ヶ月の旅をして雨季のリシケシへ戻ってきた。朝の瞑想が終わってチャイ屋で朝食を済ませ別館下のババ達の寝床へ行く。何をしているのか、みんな集まって何やら相談している。そこへぼくが突然に現れたという風であった。
「ババお前は日本人だろう、だったらカメラを持っているな」
といきなりわけの分からないことをサフランババが言いだした。どうしたんだ、このババは何が言いたいのか
「俺は日本人だ、それがどうした。俺に何の用があるんだ?」
ぼくはズーム付きのバカチョン・カメラと数本のカラー・フィルムを日本から持ってきていた。が寺院や風景を撮る趣味は持っていない、カメラはバックパックの中に放り込んだままだ。
「カメラがどうした」
「写真を撮ってくれ、頼む」
ぼくに皆の写真を撮らせようと相談をしていたのか、やっとこの雰囲気の意味がつかめた。
「だめだ、カラー写真1枚で2ルピーもするんだぞ、だめだ」
「そう言うな、皆が写真を欲しがっている。撮ってくれ」
「ババ~お前2ルピーが払えるのか?」
「金はない、そこのところを何とかしてくれ、頼む」
こんな問答をいつまでやっても埒があかない、と周りを見るとババ達の視線がぼくに向けられていた。ババ達は真剣な顔をしてジャパニーババ、ジャパニーババと情けなくも追いすがるような声をだしやがる。何なんだ、たかが写真1枚じゃないか、いくらぼくでもここまで言われたら断わる事は出来ない。
「分かった、撮ってやる」
と約束してしまった。だが相手はババといえども海千山千のインド人だ、ぼくがちよっとでも甘い顔をすると痛い目に会う。
「いいか、1人2枚だ。顔のアップと全身の2枚だけだ、分かったか」
「アッチャー」(分かった)だがこのアッチャーをどのように理解して言っているのだろうか、ぼくに不安が残った。