病院で働いているインド人の運転手と掃除人それにコックのラウラシカが勝手にぼくの病室に入って来る。ぼくが眠っていようがお構いなしだ。奴ら3人でテレビの人気番組を見ては騒いでいる、奴らに暇な時間が多過ぎるからだ。インドにはカースト制度がある、それが彼らの仕事を限定する。トイレや病室の汚物等を掃除するのは、そのカーストの者で他の仕事をしてはならない。食事を担当するラウラシカは食事以外の仕事をしてはいけないのだ。インド人の入院患者の食事は家族が毎日、持って来る。ティーは朝と午後の2回、全員に届けられる、が病院食を食べているのはアユミが退院した今ぼく1人だ。今日も奴らがぼくの病室に入ってくると直ぐテレビのスイッチを入れた。ラウラシカはコックで食事の匙加減を握っている。ぼくは奴に少し借金があるし必要なタバコやビリ等の買い物を奴に頼むしか方法がない。出来れば奴との摩擦は避けたいと我慢してきたが、今日は頭に来た。テレビの電源コードを引き抜き
「チョロ、チョロ、チョローイ」
と3人とも追い出してやった。後はどうとでもなれ、とぼくの鼻息は荒かった。
12~3才ぐらいの女の子が母に連れられて入院してきた。夕方まで子供に付き添っていた母親は家庭の用事もあるだろう、子供に良く言い聞かせて帰ろうとする。廊下を駆けて母を追う少女はナースに引き戻された。泣いて泣いて、何度も何度も母を追った。引き裂かれた少女の心。ぼくは悲しかった。曇り空、ちょっと肌寒い1日だった。
夜8時を過ぎた。アユミは今頃ニューデリー国際空港で搭乗手続をしているのかもしれない。明日の朝は日本か、若いという事は良いことだ、まだ何でも出来る。それに比べこのおっさんは後、何年生きていられるのだろうか、何が出来るというのか。良い事は自分で引っ張り込む、そう思って生きていれば好転するかもしれない。もう1度、退院の件ドクターに頼んでみよう。あぁ、それにしても歯が痛い。スタッフをまたやるだろうな、やりたいな、素面でいると辛すぎる。ネパールへ逃げてパスポートを作る、ビザが取れたら心が落着くだろうな。そしたら粉がなくてもやっていけるかもしれない、早くそうなりたいな。
「チョロ、チョロ、チョローイ」
と3人とも追い出してやった。後はどうとでもなれ、とぼくの鼻息は荒かった。
12~3才ぐらいの女の子が母に連れられて入院してきた。夕方まで子供に付き添っていた母親は家庭の用事もあるだろう、子供に良く言い聞かせて帰ろうとする。廊下を駆けて母を追う少女はナースに引き戻された。泣いて泣いて、何度も何度も母を追った。引き裂かれた少女の心。ぼくは悲しかった。曇り空、ちょっと肌寒い1日だった。
夜8時を過ぎた。アユミは今頃ニューデリー国際空港で搭乗手続をしているのかもしれない。明日の朝は日本か、若いという事は良いことだ、まだ何でも出来る。それに比べこのおっさんは後、何年生きていられるのだろうか、何が出来るというのか。良い事は自分で引っ張り込む、そう思って生きていれば好転するかもしれない。もう1度、退院の件ドクターに頼んでみよう。あぁ、それにしても歯が痛い。スタッフをまたやるだろうな、やりたいな、素面でいると辛すぎる。ネパールへ逃げてパスポートを作る、ビザが取れたら心が落着くだろうな。そしたら粉がなくてもやっていけるかもしれない、早くそうなりたいな。