ガンジス・河の流れ

インド・ネパール。心の旅・追想

第14話   旅人とマラリア・・・1

2015-09-30 | 第14話 旅人とマラリア

 ぼくはいつもひとり旅をしていた。ビハール州で日本人のW君と1週間程旅をしたことがある。ビハール州はマラリアの危険地帯である。
仏教の聖地ブッタ・ガヤには仏教国の寺院が点在している。ぼくらはチベット寺に宿泊の許可を求めた。日本寺があるのに、と一言嫌みを言われたが泊めてくれた。
モハンの茶屋で晩飯を食べ終えたころW君がやって来た。メジテーションをしていました。窓が開いていたので蚊が入っていると思います。日本製の蚊取線香があるので使って下さい。インドのそれは効かない。煙に追われて逃げはするが物陰で耐えている。煙が消えるとまたぞろ飛び出してくる。
蚊は必要な量だけ吸えば飛んで行きます。小さい斑点が残るだけです。叩こうとすると蚊は自分を守るため痒くなる物質をだして逃げます。
「なるほど、そういう事か」
日本製の蚊取線香は凄まじい。煙を出して十分もしただろうか?広げた新聞紙の上にぽたぽたと蚊が落ちてきた。新聞紙に集めた数匹の蚊を潰すと今吸ったばかりの鮮血だった。その中のひとつの蚊がマラリアを媒介しW君に感染させていた。そのことをぼくらはまだ知らなかった。

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第11話  ヨガ・アシュラム・・・9    遊行という死への旅   

2015-09-29 | 第11話  ヨガ・アシュラム

 ヒンズー教では人生に4つの期があると考えられている。
人は生まれ成長しながら学ぶ期があり、
それがすむと一生懸命に働き妻をめとり家住期に入る。
夫婦は子供を生み育てる。その子供が成長し家住期に入る頃には
自分の両親がしたと同じように家を息子に託すと隠棲し修行を行う林棲期を迎える。
そして最後の遊行期に入るとガンガへの旅に出なければならない。
新しい生命の誕生により生命のサイクルは不可欠となり老いた親は遊行という死への旅立ちが始まる。
  インド人の輪廻
貧しい家では老いた両親を養っていく余裕はない。
そのようにして代々生きてきた、いずれ自分も遊行にでることを知っている。
聖地に無事たどり着くとダラムシャーラに入り物乞いをしながら死期を待つ。
以前ぼくは楢山節考という映画を見た。
貧しい農家は食いぶちを減らすため老いた親を背かごに乗せて険しい山へ運んだ。
その山は姥捨て山と呼ばれた。
この2つの場景は何故だか重なっているようにぼくには思える。
異なっているのは死後ガンジス河に流されると輪廻し
幸せな来世に生まれるというヒンズー教の教えによってインド人は救われる。


 Photo by M.Sakai

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第11話  ヨガ・アシュラム・・・8   ヨギとの会話 

2015-09-26 | 第11話  ヨガ・アシュラム

 少し落ち着いて周りに目を向けてみると、ここもそれほど悪くはない、
煩いインド人の話し声を聞かないで済む。外へ出るとリスが何匹も走り回っていた。
さっき文句を言ったヨギが近寄ってきて
「どうだ?」と聞く
「いや、さっきは文句を言って悪かった。良いところじゃない、ここは」
「そうだろう。あそこはアシュラムじゃない、ホテルみたいだ、そうだろう」
「うん、そうだ、そうだ、ホテルみたいだ」
「お金持ちにペコペコして、おかしいだろう」
とヨギは文句をたらたらと言う。
お堂から読経が聞えてくる。お堂の中はどうなっているのか、何があるのかぼくの興味は膨らむ。
あのお堂の中へ入って良いかとぼくは聞く、中へ入ってはいけないとヨギは拒絶した。
ヒンディー語できるか、だめかヒンディー語できないのか、とヨギは残念そうに呟いた。
 終着駅・・・
 ヨギとの話し声が聞えたのだろう隣からよぼよぼのババが出てきて
何するでもなくお堂横の長椅子に座る。
何処にいたのかインド服を着たこれも先が短いようなババが現れた。
食事の世話する人だろうか、買物に行くと言う鈍い兄ちゃんがいる。
そんな人間しかここにはいないのだろうか、
まだ他にも人が住んでいる気配を感じるが外を歩く者はいない。
何だかこのアシュラムは人生の終着駅のように思えた。

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第8話       カラス・・・2

2015-09-24 | 第8話 カラス

どこから集まってきたのかカラスの大群で埋めつくされていた。この村から上はヒマラヤの山間部へ続いているのでカラスはいるだろう、がこれほどのカラスが1ヵ所に集まるだろうか。原因は電線にぶら下がった1羽のカラスのためである。群れの中から2羽のカラスが飛び立ちぶら下がったカラスの近くを旋回した。カーカーと鳴きながら旋回するカラスに励まされたのか力なく逆さまにぶら下がっているカラスは足を外そうと懸命に羽ばたいた。変圧器がバチバチと火花を散らす。本通りにもいる多くの見物人が事の成り行きを見守っている。力が尽きたのかカラスは動かない、風に吹かれ揺れるカラス。もう駄目だカラスは死んでしまったに違いないと誰もがそう思った。その時、沈黙を破るかのようにカラスは死力を振り絞り大きく羽を広げ激しく羽ばたいた。2本の電線がショートする。変圧器から青い閃光が奔るとカラスは電線から外れた。しかしカラスは空へ飛ぶこともなく草むらへばさっと落ちた。じっと見ているカラス達、死を確かめたのだろうか、大群のカラスはそれぞれの方向へ飛び山へ戻り始めた。2~3羽は死んだカラスの上空を旋回している、家族なのかもしれない。ガンガの上にも多くのカラスが飛んでいる。対岸の遠い山から1羽のカラスのためにガンガを渡ってきたのか、カラスとは不思議な鳥だ。



聖地リシケシ ガンガ河畔 野草をつむ不思議な女性
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ジャンキーの旅        遠い道・逃亡・・・・・42

2015-09-19 | 4章 遠い道・逃亡

      カトマンズへ

さようなら スノウリ ぼくはカトマンズへ行く 2度と戻っては来ない


午後3時頃には出発できるだろう、カトマンズに着くのは真夜中になるが着きさえすれば何とでもなる。
 出発の準備ができたのだろうボスが呼びに来た。助手席には40代のネパール人が乗っている、後部座席の右側にボスその隣にぼくが乗った。エンジンの音はあまり芳しくない、夜中の山道で故障しない事を願うだけだ。ぼくを乗せたボロ車はスノウリを後にしてカトマンズへ向かった。


連休の間 ブログの更新はお休みします 
「またぁ~お休みぃ~ 」 へぇ~
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第11話  ヨガ・アシュラム・・・7    スワミ(悟りを開いた人)   

2015-09-13 | 第11話  ヨガ・アシュラム

 昼、食堂へ行くと招待された多くのサドゥ達が、庭の敷き物の上で特別食を振舞われていた。
見ると集まったサドゥ一人一人に10ルピーの新札が渡されている。
まるで金持ちの宗教団体のようだ。
食堂の中はインド人で一杯になり席が空くのを待つしかない。
やっと席に着いて食事をしていると隣のインド人が話しかけてきた。
彼等はこのアシュラムの信者で先代スワミ(悟りを開いた人)の供養祭できていると言った。
先代スワミは人望が篤く現在のアシュラムを開き組織を大きくした。
このアシュラムは宗教協同組織というかトラストで各地に支部を開き多くの信者を擁しているらしい。
 長屋の各宿舎前には石板が取りつけてあり名前が刻まれている。
刻まれた名前の人のドネーションによって建てられた宿舎だと聞いた。
その人が来ればいつでも使えるし一生そこに住むことも出来る。
各地から信者が集まり宿舎の空きがない、そんな事情で旧アシュラムへ引っ越すように言われた。ちゃんとお金は払ってある、あんな汚いところは嫌だと文句を言ったが旧アシュラムへ追い出されてしまった。
荷物一式をバックパックに詰め込んで山道を歩いていると彼女達とすれ違った。
 トイレもシャワーもない、部屋の中には大きな蜘蛛が巣を張っている。サソリが現れないことを願う。何だこの部屋は、と責任者のようなヨギに文句を言ったが、よく考えてみれば彼には何の権限もない。どうせ5日間この部屋で生活をしなければならない。
必要な物を取り出しそれぞれの場所に置き生活の態勢を整えた。

中学校の運動会が終わった 近いというより隣だ 進行は生徒が行う  
スピーカーからの放送は今日まで キィンコォン カァンコァン 授業のチャイムは明日からだ

9月14日
失礼 今日中学校は振替休日でした チャイムは明日からです
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第11話  ヨガ・アシュラム・・・6  老ヨギ達のマントラ

2015-09-11 | 第11話  ヨガ・アシュラム

4月に入ると暑さが厳しくなった。
今までインド人の会話の中心は朝に夕にガンガだったが
次第にガラーム(暑い)という言葉が使われるようになった。
町は祭りに入っている。大勢のインド人達がこの小さな聖地にぞくぞくと集まって来る。
静かだったぼくのアシュラムもインド人達で溢れ、
ぼく達外国人は隣接する山間の古いアシュラムへ移動させられた。
今までのアシュラムとは細い山道で繋がっている。
朝夕の瞑想の行き来は暗く懐中電灯の明かりを頼っての通いとなった。
古いアシュラムの表門は高さ30段程のかなり急な階段の上にある。
それは階段というよりは山間の斜面の崩落を防ぐ為に作られたようにも見える。
人の上り下りを見たことはないし、古いアシュラムに滞在中ぼくも使ったことがない。
表の大通りを通るたび階段と門を見上げては、そこには何か建物があるのだろうと思っていた。
今回の移動で初めて古いアシュラムに入ったが何の目的で建てられたのか分からない。
ぼくが会ったのは高齢者のヨギだけである。
旧アシュラム内から地形をみると山間の浅い谷の前面にこのアシュラムは建てられている。
アシュラムの空気は静かだ。
流れるのではなく静かに止まっているように感じられる。
その空気を震わせているのはアシュラムの中心にあるお堂から聞える老ヨギ達の読経である。

日本にとってことの始まりは3・11だったのでしょうか 地球規模で巨大自然災害は多発している 人類は美しい自然を傲慢に破壊してきた 牙をむいた自然 調和は可能だ その道は残されている 
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第12話  インドと牛・・・4   バザールの牛

2015-09-09 | 第12話   インドと牛
ニューデリー・ベジタブルバザール
バザールで所在なげに反芻する牛
昼下がり 居眠りこっくり八百屋の親爺
「がぽぉ~~」
野菜をくわえた牛は頭を左上へ振り上げた
「あぁ~~こぉ~ぉ~~らぁ~」
大きなお尻を振ってとん走する牛
「あいつはなぁ~~気ぃつけとったんやがなぁ~」
「あぁ~~ぁ~バナナ バナナやぁ~」
「がぽぉ~」
「バナナやも きぃつけんと あかんでぇ~」
と呟く八百屋の親爺。

早朝、ぼくがチャイ屋へ向かってバザールを歩いていた時、牛の尻を細い棒でペタン、ペタンと叩く兄ちゃんを見た。何をしているのか?牛をある方向へ追っているように思える、興味を持って後ろからついて行くことにした。広いベジタブル・バザールやメイン・バザールには沢山の牛がたむろしている、それらの牛はすべて野良牛だとぼくは思っていた。暫らくついて行くとバザールの外れの一角に出た、そこには子牛たちが囲まれている、そういう場所があったのか。母牛は子牛を見て張った乳房からミルクを出してくれる、そのあとは兄ちゃんの仕事だ。バケツを持ってきて牛乳を搾りだす、それが終ると身体が軽くなった母牛のお尻を兄ちゃんはポーンと叩いた。母牛はトットットッとバザールへ向かって戻って行く、また乳房をたっぷりと膨らませてここへ戻って来るのだろう、子牛の所へ。
毎日飲むチャイやヨーグルトはこのようにして供給されていたのか・・・
餌を与えていないから飼い主とは言えないだろう、しかし持ち主はいたのだ。


 
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第12話  インドと牛・・・3    睨み合う2頭の牛

2015-09-07 | 第12話   インドと牛

2頭の牛の間合いが3mぐらいまで縮まりお互いに睨み合った。
前から来たのが小娘の牛だったら押し出してしまうだろうが、
2頭とも世慣れした頑丈な熟女牛だ。どちらも後ろへ引く気配はない。
もしかしたら牛は後ろ歩きができいのかもしれない、まだ睨み合いは続いている。
路地の両側には商店が軒を並べている。
もしここで400㎏はあろうかという2頭の熟女牛が大暴れでもしたら大変なことになる。
が店のおやじは動じるふうでもなくしらっとした顔をしている。
さあどうする、とぼくは半分逃げ腰で成り行きを見守った。
緊迫した空気を破るように1頭の牛が動いた。
さあやるのか?と思っていると2頭ともその場にへたり込んでしまいやがった。
馬鹿野郎てめぇらぁ~どうしてくれるんだ。
兄ちゃんは慌てて自転車を持ち上げ向きを変えると来た道を戻っていった。
顚末を確かめる余裕はない、それ~とぼくも急ぎ足で遠回りをして郵便局へ向かった。
やっと郵便局へ着くとじゃばらのシャッターは閉められていた。
あの牛の奴めと頭にきたが相手が牛では文句も言えない。


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第12話  インドと牛・・・2  路地 2頭の牛

2015-09-04 | 第12話   インドと牛

 ニューデリー
メインバザールの表通りからベジタブル・バザールへ通り抜ける路地がある。
この路地はぼくにとって生活の場であり良く使う抜け道である。
毎朝、朝食をするチャイ屋や床屋等があり郵便局やバザールへ買物に行くにしても近いし便利な路地だ。
ぼくは午前中の郵便受付に間に合うように路地を急いでいた。
路地の中程を過ぎた辺りだろう前をぽっこりぽっこりと牛の奴が歩いていやがる。
あまり近づくといつ爆弾を落とされるか分からない、少し間合いを取って牛の後ろについていく。
下は石畳だ、牛の下痢状のうんこが落下したら1m四方に飛び散る。
牛は歩きながらでもうんこを落とすし、その後、長い尻尾をぶんぶん振り回しうんこが飛んでくる。
油断はできない。
そこへ自転車に乗った兄ちゃんがやってきた。
彼も急ぎのようだが牛を見て急停止した。牛の横を通り抜ける道幅はない。
このまま牛について出口まで行くか引返し急いで郵便局へ行った方が良いのかちょっと迷った。
が後15mくらい先に出口のバザールが見えている。
黙って牛の後ろからついて行こうと思ったその時、
何という事か前方の出口から1頭の牛がのそりのそりと路地に入って来るではないか。
前を見れば分かるだろうドジな牛め、すれ違いはできないんだよここは路地なんだから。
2頭の牛はそれぞれ前へ進んでいく。 
どうなるんだこれは、おいらは知らねぇ~ぞぅ~

久し振りの晴れ 兄とキス釣りに行った 小ぶりだが25匹の釣果



帰宅し駐車するとワンワンとお迎えするカイ君 カメラを見ると慣れていない彼は警戒しているようだ
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