ガンジス・河の流れ

インド・ネパール。心の旅・追想

オーム・ナム・シバ・・・4

2005-02-24 | 第3話 出店のババ
 ジャパニーババ・スターティング?(最初に吸うか?)と聞いてババはぼくにチラムを渡そうとするが、ノー・ノー、ババ・スターティングとぼくは遠慮する。
「オーム・ナム・シバ」
ババはシバ神を讃え祈る。ぼくはマッチの火が消えないように両手で囲みチラムのヘッドに火を近づける。チラムは右手のひらに添えその上から左手を重ね、左手の親指と人差し指の間につくった吸い口に唇を押し当てる。火が近づくとババはチラムを吸い始める。ババが吸うとマッチの火がチラムのヘッドの中へ吸い込まれる。チラムのヘッド上面に火が広がるようにマッチの火を回す。ババの力強い吸い込み終わるとチラムの上に炎があがる。ババはチラムをぼくに渡す。ヒンズー教徒ではないがチラムを吸うときは一応
「オーム・サンカール」
とぼくもシバを讃える。ぼくが吸っていると出店のババの知り合いだろう1人のババが加わり3人で吸った。前を通るインド人達の批判的な目を感じる。
 効いた。ぼくは後ろに立てた両腕に上半身をあずけぼうっとババの動きを見ていた。ババはケースの中の品物を出したり入れ替えたり法螺貝を拭いたりしている。何か意味がありそうな動きなのだが何も変っていない。つい笑い出したぼくを見てババも笑っている。チラムを吸うと財布の紐が弛むぼくは、これは幾らだ、それは何だと聞いている内に水晶、赤珊瑚と菩提樹の実を買ってしまった。
チャラス50ルピー、その他50ルピーがぼくの支払い、ババは良い商売をした。ぼくはこれから第2瞑想があるアシュラムへ戻らなければならない。
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チラムを作る・・・3

2005-02-23 | 第3話 出店のババ
(煙管の横にあるのがチラム。チラムの上にある緑色の布がソフィーで黒い玉がストッパー。その右の黒い塊りがチャラス(大麻樹脂)で次がガンジャ(乾燥大麻)。サドウが使うチラム一式である)

 受け取った煙草を半分に千切る。チラム1回で使う煙草の量は半分でちょうど良いようだ。煙草の巻紙を破って煙草の葉を左手のひらに置く。チャラスはマッチの火で焙り軟らかくして右手で揉み取り、煙草と揉み合わせる。それで吸う準備はできた。チラムは素焼きのパイプで中指ぐらいの太さがありトップから2㎝程がずん胴に広がっている。パイプの真中の穴は丸い箸が通るぐらい大きい。穴が大きいのでガンジャを入れるとボロボロと落ちてくる。それを防ぐ為にヘッドから胴へ細くなるところにストッパーという当てものを入れる。ストッパーには空気が抜けるように切り込みがしてある。最後にパイプの吸い口にソフィーという布で包む。パイプの穴が大きいのでチラムを吸ったとき、ストッパーの隙間から火のついた滓を吸い込む。それを防ぐ為に吸い口をソフィーで包む、ちょうどフィルターの役目をしてくれる。
 ババがチラムを取り出し逆さまにしてトントンと軽く膝に当て中のストッパーを1度抜き出す。チラムの穴に息を吹きかけ残っている滓を除きストッパーを入れる。左手に作っていたチャラスをチラムのヘッドに入れ吸い口をソフィーで包む。出来上がったチラムを大地に立てババは短いマントラを唱え儀式が始まる。
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出店のババ・・・2

2005-02-22 | 第3話 出店のババ
 いつからだろうアシュラムの別館下に露店が出始めたのは。ガンガを背にして巾30㎝長さ50㎝ぐらいの商品ケースを置いてババが坐っている。何やら怪しげな品物を売っているのが出店のババだ。10時からの第2瞑想までまだ時間がある、ひやかしで遊んでいた。商売気のないババだ、客が立ち止まってケースを覗いているのに相手もせずにぼっと坐っている。何か面白い物を持っているのではないか、ぼくはケースの横に坐り込んで中を覗いている。外国人が覗きにきた事などなかったのだろうか、出店のババは落ち着きがない。銅の台に安物の石をつけたリングや菩提樹の実、それに法螺貝などガラクタも多いが中には興味を引く品物もある。一見、哲学者の風貌で顔面は髭におおわれ眼光は鋭い。しかしどうもおっちょこちょいの親爺という感じがしないでもない。ぼくは冗談半分で「チャラス・欲しい・買う」とヒンディー語で聞いてみると、ババはキョトンとしていたがギョロと目をむいてぼくを見る。だが初めて会ったジャパニーにどう返事をすれば良いのか迷っているようだ。前の露店の親爺を見たり周りを気のするようにキョロキョロしている。だが気持ちの整理がついたのかババは横に置いてあるずだ袋に手を入れた。ごそごそと手を動かしながらもギョロ目はぼくを見ている。ババはやっと何かを掴んだようで、ずだ袋から手を出した。手にはチャラスの塊りを持っている。ババはどうだという顔をしてぼくの目の前に手を突き出した。
「おぅ、チャラス。ケトナ・パイサ?」(幾らだ?)「エックトラ・ソールピア」(1トラで100ルピーだ)どうだ買うかジャパニーという顔をしているババ。「チョータ・エックトラ・ナイナイ」(小さい、1トラはない)とぼくは反論する。結局ぼくはチャラス半トラを50ルピーで買った。チャラスがぼくの物になると
「ジャパニーババ、スモーク?」
と出店のババが誘いをかけてくる。
「おースモーク、スモーク」
とぼくが言うと、今のチャラスを出せとババは手を出しやがった。チャラスを渡すとまた手を出し今度は煙草を呉れという。ふざけた野郎だと思いながら渋々1本渡すぼくに、まぁまぁとなだめるような手の仕草をした。ババはチラムを吸う準備を始める。手馴れたものだ、手のひらの上だけで素早くチラムを作っていく。
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第3話 出店のババ  片目のババについて・・・1

2005-02-22 | 第3話 出店のババ
 出店のババと流れのババは仲が良い。流れのババと片目のババも仲が良い。流れのババは40歳ぐらいの元気盛りでちょくちょく何処へ行くのか姿を消す。それでも最後に移動するときは片目のババを連れて行く。片目のババは片目が見えないのではない。掛けている眼鏡の左側のレンズだけがどうしたのか付いていない。その眼鏡をいつも掛けているのだがババにはどのように見えているのだろうか。まあ毎日、仕事をしているわけではない、1日中別館下でゴロゴロしているだけだから不自由はないのかもしれない。リシケシの町への行き帰りは本通りがあるのだがバスやオート力車が走って危ないし埃が立つ。乾季にはガンガの水位が下がり河畔に1本の小道ができる。リシケシの町を出て途中からガンガ河畔に出るとその小道と出合いアシュラムの別館の下まで続いている。別館を過ぎるとすぐ本通りへ出る階段がある、それを上り右へ行くと広場があるが、それはオート力車の発着所だ。真直ぐ延びている通りはラムジュラにつながっている。途中には左の山肌に土産物屋の小さな建物が並び右側はガートになっている。
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