米などを運搬する茶色い大きなずだ袋と長さ50㎝くらいの物挟みを持ってガンガ河岸を何か探すように歩いている男をよく見かけた。何をやっているのか分からないが自分の足元や目先ばかりをキョロキョロと見回している。痩せてひょろっと背の高い男だ。人相は遠目に見ても悪そうだ。だいたいがインド人の男で可愛らしいとか優しい顔というのと出会った記憶はない。男は長挟みで物を挟んでちらっと見やるとずだ袋の中へ入れた。ずだ袋の下の方が少し膨らんでいる。ガンガ河畔のゴミを回収している作業員だろうか、しかしインドにそんな職業があるとは思えないが。ラムジュラ辺りからずっと下流の方でもこの男を見たことがある、がいつ見ても男は自分が立って見渡せる範囲内をキョロキョロと何かを探している。奴を度々見かける場所はラムジュラへ向かう参道のジュース屋の辺りだ。男はどこに住んでいるかぼくは知らない、がそこは奴の作業道路になっているのかもしれない。
出店のババとチラムを吸っているとこの男が下流からやってきた。今日の仕事は終ったのだろう、ずだ袋を肩にかけ真直ぐ歩いてくる。男は出店の前にくると袋を置きガンガで手を洗い戻ってきた。
「商売、ならんな~、一服するか」そう愚痴を言うと出店のババからチラムを受け取った。チラムを吸う合い間に男は出店のババと商売の話でもしているのか時々大きな口を開けて笑っている。人相は悪いが人はそれほど悪くはなさそうだ。
この男が回収ババだ。何をやっているのかちょっと興味をもっていたぼくは
「河岸でうろうろしているけど、何をやっているんだ?」
と聞くとババはずだ袋の方を見て顎をしゃくった。
「ババ、中を見ていいか?」「おぅ」
袋を開いて中に目をやると紙くずや枯枝などが入っている、やっぱりゴミの回収屋だ。