メーコク・ビラ 2階の休息場はぼくの部屋のすぐ隣にあったが泊り客はいないのかいつも静かだった。
川沿いのすえたような悪臭がするゴミ捨て場に入ってココナツの殻を拾い持ち帰った。陽の当る窓辺にはシャワールームで水洗いをしたココナツが数個、乾かすために並べてある。
サンドペーパーで削ると表面の模様に変化が現れる、それを磨いた。磨き続けるココナツにぼくは同化していく。
「分離したリアリティー」とは何なのか、リアリティーの相互を歩く。
脳はリアリティーが支配しているというのは本当なのだろうか、そこから分岐し形成される擬似脳もリアリティーを支配しようとする。
桃源郷という言葉の内容を感じる、チェンライから雲南省のことをそう言うらしい。
その風に吹かれてぼくは生きた。出発の日が近づいてきた。
タイの旅はこれで終る。