ガンジス・河の流れ

インド・ネパール。心の旅・追想

ジャンキーの旅          No2 Ward・・・・・43

2014-02-27 | 3章 デリー中央第一刑務所No2Ward

   1月3日(火曜日)
 ビリを吸ったところで昨夜は停電になってしまった。直ぐ点くだろうと思っていたがとうとう朝まで電燈は点かなかった。朝6時の開錠人数点検もティータイムも暗かった。お陰で夜中2回目の粉を入れる事が出来ず少し身体に痛みがある。軽いシック症状だ。それでも朝のうちは我慢できたが馬鹿のショッカンが1パケ貸してくれ今日の面会の後には必ず戻すからと空手形を振りやがった。ちきしょう、とうとうぼくはシックになり昼前やっと1パケを買う事が出来てそれで何とか難を逃れた。
 アミーゴからバスタオルを借りて井戸で身体を洗った。3日振りだ、ついでに上下のトレーナーと下着を洗濯する。ぼくはトレーナー上下を2セット持っている。フィリップスから貰った物と大使館からの差し入れだ。干す場所はバラックの裏側、バラックに沿ってロープが張ってある。それとワードの塀側にある大きな木に何本かロープが張ってあった。ワードの塀より高い大きな木だ。木に登り、もしその塀と有刺鉄線を乗り越えて逃げようとしてもその先は第3収監区、懲戒監房だ。誰も好んで行きたくはないだろう。毎日ロープにはびっしり洗濯物が干されていた。乾いた物は勝手に端に寄せ自分の洗濯物を干す。アフリカンは清潔好きだが自分ではやらない、洗濯はインド人にやらせていた。インディアンとアフリカンの関係は難しいとぼくは思っている。インドには歴然とした身分制度、カースト制がある。カーストの低い者の肌は黒い。そのインド人より黒いブラックから物と金で使われる事にインディアンの心理は複雑であったに違いない。ぼくら旅行者にとって手強いインド人との交渉は時によって困難を極める。それと同じ様にインド人はアフリカ人との交渉に対してそのような感情を持ったに違いない。やりにくい海千山千の相手なのだ。


昨日から雨が降り続いていた たまらん しょうがないのでワカメのレシピと保存方法を調べた
あった 冷凍保存2~3ヶ月賞味可 茹で水を切ってビニール袋に入れ空気を抜いて冷凍庫に入れる
必要な量だけ何度も採りに行っていた それはそれで体を動かすので良いのではないだろうか
22日(土)から3日間連続で釣りに行った 全く釣れない そこでタコ名人と会った
つれんなあぁ~と ぼやくぼやく あんたねぇ去年300匹以上釣ったんやろ だからやと文句を言う
それぐらいでタコがおらんようにならん 去年の猛暑で湾の魚が死んで浮いた 高水温でタコの卵が
全滅した おやじの推論だ そうかもしれん ナマコもおらん 自然の変化に翻弄される  
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ビリと100ルピー・・・2

2014-02-25 | 第13話 回収ババ その他・2

 ビリを買って100ルピーを出したらタバコ屋の兄ちゃんはうちの店は両替屋じゃないと機嫌が悪い。もっと買えとタバコやライターそれにビスケット等15ルピーくらいの品物を目の前に並べさあどうするとぼくの顔を見ている。デリーでは宿代100ルピー、昼飯に50ルピーと使うので100ルピーは日本の千円くらいの感覚でしかない。だがこんな小さな村では100ルピーは1万円札に相当しチャイ屋やインド人の食堂では出すと嫌がられる。銀行で100ドル両替すると約3500ルピーになるのだが35枚の100ルピー札を渡される。リシケシに長期滞在している外国人はアシュラムに住んでいる。食事はアシュラムの食堂で食べるしタバコやドラッグは禁止されている。彼等に必要な物はミネラルウオーターやフルーツくらいだ。ガンガの対岸に外国人相手の食品や日用雑貨を売っているちょっと大きな店があり、ぼくも含め外国人は両替を兼ねてそこで買物をしていた。いつも小銭を用意しているのだが時には100ルピーが残ってしまうことがある。
 兄ちゃんのタバコ屋はここでは大きい方の店なのだがインド人はタバコを箱ごと買うことは少ない。タバコ屋は何処にでもあり吸いたくなれば1本50パイサくらいの小銭を出して買い、マッチの代わりに火の点いた紐が用意してあるのでそれでタバコに火をつける。大体インドの服はタバコやマッチ等の小物を入れるようには作られていないのだ。タバコを箱ごと買えるのはお金持ちのインド人と外国人くらいでコインや小額の札はあるが100ルピーなんか出されても兄ちゃんは困るだけだ。タバコやビリは幾らあっても腐ることはない、買い溜めをするつもりで20ルピーくらい買うとぼくが言うと兄ちゃんは店の横の潜り戸から出てぼくに店番を頼んで両替をしに走って行った。何処まで行ったのか暫らく待たされたが兄ちゃんは息を弾ませて戻って来た。


いきなり体調が良くなった 金曜日は呑んべぇTさんと道具を作りワカメ採りだ 
5mの竹竿の先端に4本の鉄バンドを針金で締め上げその道具で海中のワカメを巻きつけ採る 
かなりの重労働だ 汗が出る 当然ビールとなるがそこはぬかりなくTさんが用意していた
この時期だったらどこでもワカメが採れたが去年頃からワカメの生育が良くない
この日はまあまあの収穫だった 帰ってワカメを茹でお世話になっている知人宅へ届けた
若いワカメはやわらかく磯の薫りがする
 
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第6話  タバコ屋の兄ちゃん・・・1

2014-02-20 | 第13話 回収ババ その他・2

 リシケシのインド人は皆チラムを吸うのが好きだ。参道の入口にちょっと店構えの良いタバコ屋がある。店番をしているのは20代の若者だ。いつ見ても仕立ての良いインド服を着ているのでカーストも高いのだろう、リシケシの町から毎朝ガンガ沿いの小道を歩いて店へ通っている。ぼくは朝の瞑想が終り朝食がすんで別館下へ行くのが毎朝8時頃だ。ババ達は朝起きるとすぐチラムを吸っているようだが、ぼくにとっては今日初めてのチラムとなる。チラムの用意ができ、さあスタートだという時に頃合いを見計らったようにタバコ屋の兄ちゃんが別館下に来るようになった。ぼくは兄ちゃんの店で時々タバコを買っていたので顔は知っていた。彼は悪い人間ではないのだがタバコの値段を誤魔化したり、端が破れ使うことができない紙幣をお釣りの間に挟んだりと悪賢いところがある。まあこの程度のことはどのインド人でもやることなので彼が特別ずるい人間だというわけではない。店を持ちある程度の財産があるとそうなるのだろうか、その点、別館下のババ達のようにぎりぎりまで貧しいと人間は素直になれるのかもしれない。仏陀はものを所有することから人間の苦悩が始まると言ったらしが、サドウのように何も物を持たず修行三昧に生きるのが良いのか、出店のババや両替ババのように悲しい程にみみっちい商売に愚痴をこぼしながらも逞しく生きたら良いのかぼくには分からない。だがそこにサドウとババには紙一重の生き方の違いがある。
 別館下にはサドウが生活をする広い場所と下流側に4本の柱で囲まれた6畳くらいの狭い小屋のようになった部分がある。出入り自由の広い場所でサドウは寝起きをしているがサドウのものを盗む者など誰もいないし又そのような金目のものを彼らは持っていない。しかし出店のババの荷物は合計すると500ルピーくらいの価値がある。これがババの全財産でそれをババは盗難から守らなければならない。その為にババは小屋で寝起きしている。 


昨夜 寝酒として焼酎コップ半分を5分の水割りにして飲んだ 
釣り場の呑み助から焼酎は体を冷やすと聞かされていたのだがそれを忘れていた
夜中3度もトイレへ行き眠剤も寝酒も効かず朝を迎えた 体がだるく頭がぼっとしている
Nさんが心配して電話をくれた ホルモンを買ってあるから来い
元気が出そうだ 夕方ホルモンを食べて呑む それしかない
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ジャンキーの旅        遠い道・・・・・18

2014-02-18 | 4章 遠い道・逃亡

 1日また1日とぼくは何もしないで吸っている。このまま吸い続けることはできない、それは分かっている。お金はドルに換算すると2000㌦くらいしか残っていない、送金は不可能だ。このお金でネパールへ逃亡し日本まで帰らなければならない。
スタッフをやっていると最近、身の回りで起こった出来事が見えてくる。ぼくは入院する前、アルファーにスタッフ100gを預けた。彼がそのスタッフをアフリカンへ売り捌いている、とマリーが知らせてくれたのは、ぼくが退院する数日前だった。その頃からアフリカン・ドラッグ組織は行き詰まっていたのではないだろうか。
スタッフが不足していたマーケットにアルファーはぼくのスタッフ100gを流した。ぼくにとって不要であり危険でもあった薬物、だから売り捌いた奴を責めはしない。ぼくが退院した年末、ジュース屋に座っていたぼくは通りを埋めたインド人達の流れの中で一瞬だけ奴を見た。次に見たとき奴の姿はなかった。一度、ぼくが目線を切ったのは奴の出方が知りたかっただけだ。取り戻す考えはない、信用したぼくが悪い。
 二ナもフレッドもジャンキーだ。翌日のスタッフを手当てしないとは考えられない、彼らは手当てが出来なかった。ぼくが会ったフレッドの様子は、その日の朝からシックになったという症状ではない、数日前からシックは続いていた。二ナの助けを求める「フレッドからスタッフを貰って」という声を彼は聞いていた、だから奴は「シックなんだ俺も」と言った。



やれ やれぇ
久し振りに抜けを感じさせるような朝だった 鼻の奥がつんつんする自覚症状があってから約2週間
5日前からアルコールを断ちベジタリアンの食生活とヨガを中心にしたエクササイズを行う
鼻孔の洗浄はヨガでも行う スニッフは鼻の粘膜から有効成分を吸収するがその後の滓を洗浄する 同じだ
エクサの後アサナのポーズでミニメジを行っていたがそれをブレッシングに変えた
効果が表れたのだろう呼吸器系統が良くなった
数日間 新聞もPCも手が出せなかった 今日はちょっと良いかな・・・
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ジャンキーの旅        遠い道・・・・・17

2014-02-10 | 4章 遠い道・逃亡

 ドアを強く叩く音。
「トミー、トミー」
マリーの怒った声だ、声の調子でぼくには分かる。ドアを開けると部屋へ入りながら、いきなり彼女はまくし立てた。
「Why,Why,Why,Why, Why you did start again the staff」
彼女が来るのは分かっていた。怒るのも分かっていた。ぼくは立ったまま窓ガラス越しに外を見た。そうするしかマリーの視線からは逃れられない。
「何故なの、トミー。何故スタート・アゲインしたの」
あの1ヶ月間の辛く苦しかった入院生活は何だったの。耐え切ったトミーは何処へいったの。何の意味もなかったの。やっとスタッフを断つ事ができたのに。どうして、何故スタート・アゲインしてしまったの。マリーの怒りが悲しみに変っていく。怒ってくれ、怒り続けてぼくの部屋から出て行ってくれ、そうしたらぼくは少しだけでも救われる。彼女はぼくの言葉を待っている、ぼくは言い訳をする言葉を持たない。惨めな言い訳もしたくない。
「ごめんょ、マリー」
デリー最後の一週間だ、その間ぼくは吸う。デリーにいたらぼくはスタッフを止めることが出来ない。最後の10gだ、これが本当の最後だ。一週間後、ぼくはデリーを出て行く。
「トミー・・・」
マリーは何か言いかけたが部屋を出て行った。


1月末福岡地方の気温が19度まで上がった 3月下旬~4月上旬だという 布団や毛布それに枕も干した 2日後からだろう鼻の奥がつんつんする 夜中トイレで起きると鼻が詰まって眠れない 2月4日の天気予報で初めて花粉情報をだした 気温が上がった頃から花粉が飛散したと思われると気象予報士 もっと早く出せよ 目が痒い 花粉症だろう 干した寝具すべてに掃除機をかけた 最後にシーツやら枕カバーを取り替えた 昨夜は鼻の詰まりもちょっと軽くなり少し眠れた 昨日マスクを買いに行った 頭がぼっとしていて適当に買って帰った 使うと具合が良くない 眼鏡をかけて箱を見るとキッズサイズとある アホかぁ 封を開けたので返品はできない 午後自転車で買いに行った 花粉症か風邪なのか分からない クリニックの入り口に風邪の方はマスクをしてお入り下さいと張り紙がある 今日クリニックに行くつもりだったが朝から小雨だ 自転車では行けない 2月に入って毎日冬型が続いている 今週もそうらしい 体調は良くない精神的に苛立つ
  
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ジャンキーの旅        遠い道・・・・・16

2014-02-07 | 4章 遠い道・逃亡

ホテルへの帰り道、ばったりピーターとパラに会った。ピーターは11ラーク・ルピーを裁判所に払って保釈され直ぐネパールへ逃げたと病院へ面会に来たマリーからぼくは知らされていた。彼女の言葉には時々、嘘がある。ぼくにネパール行きを決心させようとしてそんな作り話をしたのかもしれない。
120gのスメック所持で逮捕されたぼくはインドの判例に照し合わせれば、ミニマムで10年の刑に相当すると大使館員から知らされた。デリー国際空港で20㎏の薬物所持で逮捕されたピーターの刑は終身刑を超える刑期年数になるのではないだろうか。インドの裁判の仕組みは、ぼく達には全く理解が出来ない。何が起こるか分からないインド、ぼくとピーターはその不可解なインドに逮捕され保釈された。
「ハーィ、ピーター、リリースおめでとう」
「有り難う、やっと出られたよ」
嬉しそうなピーターだが11ラークもの大金をどうやって作ったのか。ぼくも吸っているが彼も吸っている、早くスイス人の彼女を釈放するという大きな仕事はまだ終っていない。スタッフに酔った彼から彼女を助け出すという強い気持ちがぼくに伝わってこない。何故だろうか、スタッフが牙をむいたら何もかも狂ってしまう。ドイツに帰ってお金を作っても彼はインドには入られない。ネパールかパキスタンの国境の町で逃亡してくる彼女を待つのだろうか。後、刑務所に残っているのはアフリカンを別にするとアミーゴ、オマールとカヘルだ。生き続けることを祈る。ぼくは自分のことで精一杯だ。
 
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ジャンキーの旅        遠い道・・・・・15

2014-02-05 | 4章 遠い道・逃亡

 夜、フレッドからスタッフ5gを受取るとぼくは二ナとランジャンの部屋に寄った。ぼくが二ナと会ったのは2年以上前だ。その時にはランジャンはすでに逮捕され女1人、二ナは誰かと組まなければ生きていけなかったのだろう。ランジャンが釈放され彼女は元に戻った。フレッドは淋しそうだがしょうがない、隣同士というのはちょっとまずい気もするが。第4刑務所に面会に来た二ナはアフリカンを信用しないで、スリランカ人グループに入れとぼくにアドバイスをした。それはランジャンがいたからだろう。だが彼はグループを離れて単独行動をしていた。時には彼からスタッフを買う事もあったがそれ以上の繋がりはなかった。
彼は背が高い、ベッドの上に立って手を伸ばし扇風機の羽根から小さな紙包みを取る、開くと注射器だった。
「打つか」
「あぁそうだなぁ ちよっとアメリカンにしてくれ」
打ち過ぎるなと言っただろう、だから入院することになったのだ、と奴は笑っている。
「ゾンビ・ムスタファンは元気か?」
「おぅ、お前に会いたいと言ってたぞ」
「ムスタファンはゾンビなの?」
「気をつけろ二ナ、奴は恐いゾンビなんだぞ」
3人で腹を抱えて笑った。ぼくはいつ笑ったのだろうか?随分と長い間、笑ったことがないような気がした。
 昨日、部屋に閉じ込められ禁断に苦しんだ二ナはその反動からか、オーバードースでべろべろになって自分の意識の中に入ろうとしていた。深い闇は胎内だ、胎児のように身を丸め羊水に揺れる。ぼくは彼女を病院に入院させ治療を受けさせようと真剣に考えたことがある。しかし彼女が一時的に回復することができたとしてもスタッフを断ち依存症の苦しみに耐え続けることはここデリーでは不可能だ。二ナからスタッフを取り上げたら彼女は狂い苦しみ死んでいく。だったら今の生活を続けて苦しまずに死んだ方が彼女にとって幸せだ。二ナの命はもうそんなに長くはない。
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マントラババとの別れ

2014-02-03 | 第2話 マントラババ


ぼくがお世話になったアシュラムから見たガンガと対岸の風景

 ババとリシケシの町へガンジャを買いに行ってから暫らく会っていない。チャラスもガンジャも底をついて2日程前からババのアシュラムに顔を出しているのだが会うことが出来ない。まだ荷物は残っている。同室のババとチラムを吸って彼が戻って来るのを待っていたが無駄だった。マントラババはヒンズー教以外の神も信じ占いや手相もやると言っていた。だがヒンズー教以外の神とは何を指しているのか?インドで信仰が篤いとされているシバ神と並ぶビシュヌ神は10の神に化身すると言われている。その中には仏陀も含まれている。マントラ・ヨガはぼくが学んでいるアシュラムでもやっている。ババが特別に変っているということはない。
 今日またアシュラムへ行ってみた。窓から覗くとマットは敷いてあるがその他の荷物はなくなっている。ババと声を掛けてドアを押すと開いた。物音を聞いたのだろう隣のババが出てきた。彼の説明ではどうもマントラババはリシケシを去ったようだ。山師のようなババだった。時々旅行者と連れ立って歩いているババを見た。旅行者を相手に小銭を稼いでいたのだろうか、でもぼくにたかる事はなかった。
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