朝、いつもの時間にメインホールへ入ると明かりが消され静かに瞑想が行われていた。ぼくは音を立てないように歩き自分の場所に坐って瞑想を始めた。瞑想はホール正面の上段に坐るヨギのオームで始まりオームで終る。明かりが点き皆と一緒にホールから出ようとしたぼくは、お婆さんのマム・ヨギに呼び止められた。朝の瞑想は今日から夏時間に変更され5時~6時になっている、掲示板を読まなかったのかとマム・ヨギに怒られた。ぼくはホールに残り30分間の瞑想をした。宿舎へ戻っていると食堂の建物の奥でヨギ達が火を使って何やらやっている。小道に立って見ているとヨギが手招きをする。この暑いのに木を燃やして何をしている、そう思いながら近づいて見ると細く割った白木を6角形に組んで積み重ねていた。燃え上がる炎に一人のヨギは印を結びマントラ(真言)を唱えている。暫らく見ていたがマントラ行は終ったようだ、崩れ落ちた燃え木をヨギ達は見ている。その中の1人のヨギはぼくにお菓子をくれ、もう行きなさいと合図をした。それを食べながらぼくは部屋へ向かう。また来なさいと言われたが今ぼくは瞑想、ハタ・ヨガとブレッシング(呼吸法)をやっている。マントラ・ヨガはサンスクリットを使うのではないだろうか、とても理解できそうにない、ヨガの厚い英文テキストさえ苦労しているのに。
朝、いつもの時間にメインホールへ入ると明かりが消され静かに瞑想が行われていた。ぼくは音を立てないように歩き自分の場所に坐って瞑想を始めた。瞑想はホール正面の上段に坐るヨギのオームで始まりオームで終る。明かりが点き皆と一緒にホールから出ようとしたぼくは、お婆さんのマム・ヨギに呼び止められた。朝の瞑想は今日から夏時間に変更され5時~6時になっている、掲示板を読まなかったのかとマム・ヨギに怒られた。ぼくはホールに残り30分間の瞑想をした。宿舎へ戻っていると食堂の建物の奥でヨギ達が火を使って何やらやっている。小道に立って見ているとヨギが手招きをする。この暑いのに木を燃やして何をしている、そう思いながら近づいて見ると細く割った白木を6角形に組んで積み重ねていた。燃え上がる炎に一人のヨギは印を結びマントラ(真言)を唱えている。暫らく見ていたがマントラ行は終ったようだ、崩れ落ちた燃え木をヨギ達は見ている。その中の1人のヨギはぼくにお菓子をくれ、もう行きなさいと合図をした。それを食べながらぼくは部屋へ向かう。また来なさいと言われたが今ぼくは瞑想、ハタ・ヨガとブレッシング(呼吸法)をやっている。マントラ・ヨガはサンスクリットを使うのではないだろうか、とても理解できそうにない、ヨガの厚い英文テキストさえ苦労しているのに。
リシケシの町のガート(沐浴場)に行けばチャラスが手に入るかもしれない、と言うので午後からマントラババと2人で出かけた。ガートに坐って待っているとババは露店の親爺と話しをしている。ババは膨らんだタオルを持って戻ってくると、ぼくのずだ袋を開かせてガンジャを入れてくれた。ババは露店の親爺に5ルピーやってくれと言う。ずだ袋の中のガンジャはかなりの量がある、つい嬉しくなって10ルピーを露店の親爺に渡した。よほど嬉しかったのか、また山に行って取ってくるから欲しければいつでも来い、そう言って親爺はガンジャを一掴みくれた。草(大麻)はまだ若い、もっと成熟すると樹液を含み効きが強くなる。
カトマンズの村で自炊していた1974年頃の話だ。部屋の前は広い麦畑で刈り入れが終ると一面緑のガンジャ畑になる。何故だか麦だけ刈ってガンジャは残されていた。草が朝露を含んでいる早朝、近所の子供達は畑に入ってグラス・トップを両手のひらで揉んでいる。戻って来た子供の小さな手のひらを見ると茶褐色のチャラス(大麻樹脂)がこびりついている。それをかき集めると小指の先程のフレッシュなチャラスのできあがりだ。5ルピーで買ってくれと子供が売りにくる。お前に金を払うぐらいなら自分でつくるとぼくは畑に入った。何かこつがあるのだろうか、手のひらに色はつくが塊りにはならなかった。良く成長したガンジャのトップを摘んで部屋の紐にぶら下げていた。この草は緑のまま乾燥するが茶色に枯れることはない。ほどよく乾燥させるとコップに入れお湯を注いで飲んでいた。色はちょうど緑茶のようになる。夕方は野菜と一緒に炒めて食べたことがあるが効いたかどうかは分からない。
マントラババは南インドから来ているらしい。そういえば北インドのサドゥの着衣はサフランカラーだが、彼の着衣は小豆色で服の形も違う。英語を話すサドゥの中には碌でもない奴がいる、外国人相手にたかり方を知っている。マントラババはラムジュラ(吊り橋)を渡ったガンガの対岸にあるアシュラムに住んでいる。今日はここから2kmぐらい上流にあるリシケシで最初に開かれたという古い聖地へ彼の案内でチャラスを買いに行った。そこに着いてまず目についたのは高さ2m程もある真っ黒いリンガだ。ガンガの河岸に祭られていた。ここは小さな村で通りにある土産物屋の数も少ない。人の良さそうな親爺の店へぼく達は入っていく。ナマステバーイと挨拶をするとマントラババは店の親爺と話しをしている、がどうも上手くいっていないようだ。チャラスを売るほどの量は持っていない、吸うだけなら吸わせてやると店の親爺が言う。吸うのが好きそうな親爺だとは思ったが、商売をおっ放り出し真昼間から吸うのか。面白い、吸ってやろうじゃないかと親爺と2人で吸い始めた。2本目を吸っていると親爺の目はとろんとして何処かへ飛んでいる。シャンボー、親爺にお礼を言って店を出た。
4月はちょうどチャラスの年度替わりの時期になっているのかもしれない。去年作ったチャラスは底をついたが、今年のガンジャ(大麻草)はまだ十分に成熟していない。親爺のチラムを2本も吸ってしまいぼくはふらふらになってラムジュラへ戻ってきた。帰りの道端にはぽちぽちと露店や蛇使いが並びぼくに声を掛ける。木に囲まれたヨギの小屋では瞑想に耽るヨギの姿があった。
午後になるとおばちゃんの息子らしいガキが店番の交代にやってくる。多分、小学校の授業が終ってから来ているのだろうが何とも小賢しいガキだ。チャイの作り方はちゃんと知っているし味はおばちゃんが作ったチャイと変わらない。頭の回転が速そうな子供だ。ぼくがチャイを飲みながらそれとなく子供を見ていると店番をしているときの目は商売人になっている。客を品定めしてどじなおっさんぐらいだったら値段を誤魔化して小遣いを稼いでいた。おばちゃんが昼の食事と休憩が終って戻ってくるまでの間に何杯のチャイが売れたのか知っているのは子供だけだ。毎日ではないがチャイの売り上げが多い日がある。そんな日にはチャイの代金2杯分4ルピーくらいを半ズボンのポケットに隠しこんでいた。子供の小遣いとしては多過ぎるように思えるがおばちゃんに内緒でお金を貯めているのかもしれない。おばちゃんが店へ戻ってくると子供はすっと参道の方へ逃げていった。
日曜日はアシュラムのスケジュールは休みだ。ぼくはバザールの食堂で夕食を終え別館下へ向かって歩いているとチャイ屋を片づけているおばちゃんに会った。見るとおばちゃんは大きな風呂敷を広げて鍋からタバコ等一切を包んでいた。本通りの端に取り付けてある露店だから金目の物を置いていく訳にはいかない。毎日おばちゃんは商売道具一式を担いで行き来していたのだ。薄暗くなった通りを大きな風呂敷包みを肩に担いでおばちゃんはリシケシの町へ歩いて行った。
チャイの美味しい店は混んでいる。ちょっと恐い顔をしたおばちゃんがやっているチャイ屋は別館に近い本通りにある。ババ達が良く行くチャイ屋で味は最高だ。いつも混んでいるのでおばちゃんの愛想は良くない。概ねインド人にはサービスをするという概念はないから気にはならない。ぼくがチャイを頼んでもいつ出てくるやら、ただ待っているしかない。時間は幾らでもある、ぼくは平気で何度も通っていた。毎日チャイを飲みにいっていると知り合いになった客が席を詰めてジャパニーババここに座れと席を空けてくれるようになった。チャイをつくる水は聖なる河ガンジスから汲んで来る、だから美味しいのかも知れない。
馴染みになったおばちゃんを良く見ていると、どうもおばちゃんは計算ができないのではないかとぼくには思えてきた。チャイを飲んでタバコを買う分には何とか計算ができるようだ。これが3種類になるとどうもやばそうだ。チャイ、タバコとビリを買うとおばちゃんの頭の中はてんやわんやになっている。うぅんと唸ったりお金を並べたりしているが、そこへインド人が来て50パイサを置いてタバコを1本買っていく。計算はまた最初からやり直しになり、いつまでもお釣りをくれない。早くお釣りをくれと催促して手を出すとおばちゃんは計算を諦めたのか気合を入れてお釣りをぼくに渡してくれる。ぼくが計算をした金額よりいつも多い。ぼくもせこい人間だ、そのお釣りを黙って貰っていた。
(カテゴリーが足りなくなって第1話~第10話の一部を削除した 再度の掲示です)
久し振りに裁判所へ出頭した。次回の出頭は1月8日と決まった。出発日は遅れるが計画自体の変更はない、スライドするだけだ。
汽車の切符は入手できる、問題は同行するネパール人だけだ。例のカトマンズの売人を引き止めておけば何とかなるだろう。
裁判所から戻ってぼくはメインバザールを歩いている。キーランGHの入口階段を通り過ぎた。(どこへ行く積もりなんだ、どこへ行くんだ、何を考えている、止めろよ、ホテルへ戻れ)ぼくは通りを真直ぐ歩いた。(馬鹿なことをするな、悪い考えだ、ホテルへ戻れ)ジュース屋と映画館を通り過ぎた。(それだけは止めろ)とぼくの心が叫んだ。ぼくの足は別人になったように前へ歩き続ける。メトロポリスを右折する。ピクニックGHはもう目の前だ。階段を上がる前に一度、ぼくは止った。
もう引き返せない。階段を上りフレッドの部屋のドアをノックした。フレッドにスタッフが手に入ったのは直ぐに分かった。奴の顔は昨日と違う。
「フレッド、スタッフを回してくれ」
「どうするつもりだ、トミー」
「あるか、と聞いているんだ」
「1gならある」
「それをくれ。夕方までに5g用意してくれ」
「マリーは知っているのか?」
「お前、出来ないのか?代わりの売人は幾らでもいる」
「分かった。夕方、来い」
今日の夜行列車での出発だったら、こんなふうにはならなかった。もう良い。デリーにいたらスタッフは切れない。