ガンジス・河の流れ

インド・ネパール。心の旅・追想

トイレと豚・・・10

2005-05-12 | 第10話 トイレと豚
 トイレに入る度にあの黒豚に襲われたのではとても安心して用など足せるものではない。気になってトイレの裏側を見に行った。隣の塀とトイレの間にコンクリートの溝がある。通りに面して塀などはなく全く自由に出入りが出来る。豚さんどうぞ宜しくお願いしますという事か。豚がトイレの中へ入れないように何とかしろと、マネージャーに文句を言ってやろうと思ったが、インド人のことだ豚が嫌なら自分の物は自分で始末しろと言い出しかねない。裏の出入り口に豚が入られないように塀を建てたら、トイレ内には汚物が溢れることになる。ホテルだというのにトイレの処分は豚頼みか。ここは今までどおり豚に頼るしか方法はなさそうだ。ぼくは豚と再び遭遇しない為の対策を考えてみた。まずトイレに入るときドアを静かに閉めて豚に気づかれないようにする。次にホテルを替わることも考えてみたがこれは無意味だろう。町のどこでも井戸を使っている、砂漠が近いから水道はないのかもしれない。だとしたらホテルを替わってもトイレはここと同じ設備だろう。これからも度々、豚の急襲をうけるようであればこの町から逃げ出そう。折角遠くまで来たのに1週間足らずで豚に追い出される事になるのだろうか?
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トイレと豚・・・9

2005-05-10 | 第10話 トイレと豚
 何なんだこれは、どうしたというんだ。本当にここに豚がいたのか、幻覚じゃないのか?茫然と立ち尽くしていたぼくはやっと我にかえった。あの野郎我慢ならねぇ、それっとぼくは豚を追い駆けようとして躓いた。下着とズボンは足元に落ちサンダルで踏みつけられ、ぼくの下半身は無残にもむき出しになっていた。ぼくはブリーフとズボンをずり上げると玄関へ飛び出す。通りを捜すと黒豚はもうあんな遠くをのんびりと走っている。ちきしょう今度会ったらただじゃすまないぞ、と思ったが豚の顔なんか見分けがつかない。えらい目に遭ったがもう済んだことだ。まあ豚には豚の事情があるだろう、担当区域が広くて豚も忙しいのかもしれない。
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トイレと豚・・・8

2005-05-09 | 第10話 トイレと豚
 下着とズボンを下げて膝で止めのんびりと座っていた。前のドアを見るでもなくぼんやりと眺めていると、薄い影が動いたように見えた。トイレの裏に何かいるのだろうか?やはり影は動いている。何も音はしないのに影だけが少し濃くなったような気がする。気のせいかと思った瞬間、はっきりとした黒い影がドアに映った。何だろうと股ぐらから下を覗くと黒い2つの目とぼくの目が合った。尻をちょっと浮かしてもう1度下を見ると
「どひぇ~~~~~」
ぼくは飛び上がって便器の横に逃げた。顔面は黒い毛に覆われピンクの鼻をぴくぴくさせながら黒豚は便器の縁まで顔を出しぼくを見ている。
ブゥブ(まだ出ないの?)
うん、まだ出ない、とぼくは首を左右に振った。
ブゥブブ(尻は一杯見たけど痔が悪いんじゃないの)
うん、痔が悪い。
ブブゥ(気をつけな)
心配してくれてありがとう。
ブ~ブ(じゃあな)
そう言うと黒豚は後ずさりして出て行った。
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