路地裏の薬局で注射器を2本買い1本は奴にやった。
「最近、打ってないだろう。打ってやろうか」
「大丈夫だ、何とかなる」
「やり方、知ってるな。25ml以上は入れるな危ないぞ。慣れたら少しずつ量を増やしてもいい」
何をするつもりなのか、自分でも分からない。もしランジャンの部屋に明かりが点いていなかったら、ぼくは注射器を買わなかった。人間が生きていく道には良いにしろ悪いにしろ流れがある、流れに沿って生きるしかない。
スプーンに入れたミネラルウオーターを、1度沸騰させ常温に戻す。スタッフを入れ混ぜるが、灰色の液体には不純物が混じっている。タイのホワイト・スタッフのように完全に精選する技術がないのだろう。新しい煙草のフィルターを抜き出しスプーンの端に置く。そのフィルターに針を刺しそこから液体を吸い取る。不純物はファイターに付着し残る。注射器内の液体は25mlの目盛りをかなり超えていた。針を上に向け空気を出すと準備は出来た。腕の中を一瞬すっと冷たさが走る、と同時に頭の中に白い冷たさを感じた。左腕から心臓までの距離は短い。時間をかけゆっくりとポンプを押す。注射器内の液体が体内へ流れ赤い血液と融合する。終った。注射器は2度と使えないように処分した。壁に凭れ掛かり効きを待つ。
2日の夕方、ぼくは自然に目が覚めた。不快感はない。生きている、それはそれとして良い。どうしても死のうと考え注射を打ったわけではない。もし死んでいたら、それでも良かった。水を一杯飲むと空腹感がある。美味しいスープが食べたい、メトロポリスへ行こう。帰りに文庫本を2冊だけ買った。治療で症状の回復が進めば必要になる。
12月4日の朝、アルファーが迎えに来た。彼を部屋の中に入れドアに鍵を掛けた。ぼくは最後になるであろうスタッフを吸い込んだ。パッキングした残りのスタッフとチャラスをアルファーに預けた。
「今日から入院する。1ヶ月間それを預かってくれ」
「本当なのか?」
預けるとはどういう意味なのか。退院したら又スタッフをやるのか、ぼくには分からない。ドラッグの深い闇から回帰する。綺麗な身体になり、もう1度だけ現実に戻る。それから先は、その時点で決まるだろう。裁判所への出頭が終りぼくは大使館へ向かった。
「最近、打ってないだろう。打ってやろうか」
「大丈夫だ、何とかなる」
「やり方、知ってるな。25ml以上は入れるな危ないぞ。慣れたら少しずつ量を増やしてもいい」
何をするつもりなのか、自分でも分からない。もしランジャンの部屋に明かりが点いていなかったら、ぼくは注射器を買わなかった。人間が生きていく道には良いにしろ悪いにしろ流れがある、流れに沿って生きるしかない。
スプーンに入れたミネラルウオーターを、1度沸騰させ常温に戻す。スタッフを入れ混ぜるが、灰色の液体には不純物が混じっている。タイのホワイト・スタッフのように完全に精選する技術がないのだろう。新しい煙草のフィルターを抜き出しスプーンの端に置く。そのフィルターに針を刺しそこから液体を吸い取る。不純物はファイターに付着し残る。注射器内の液体は25mlの目盛りをかなり超えていた。針を上に向け空気を出すと準備は出来た。腕の中を一瞬すっと冷たさが走る、と同時に頭の中に白い冷たさを感じた。左腕から心臓までの距離は短い。時間をかけゆっくりとポンプを押す。注射器内の液体が体内へ流れ赤い血液と融合する。終った。注射器は2度と使えないように処分した。壁に凭れ掛かり効きを待つ。
2日の夕方、ぼくは自然に目が覚めた。不快感はない。生きている、それはそれとして良い。どうしても死のうと考え注射を打ったわけではない。もし死んでいたら、それでも良かった。水を一杯飲むと空腹感がある。美味しいスープが食べたい、メトロポリスへ行こう。帰りに文庫本を2冊だけ買った。治療で症状の回復が進めば必要になる。
12月4日の朝、アルファーが迎えに来た。彼を部屋の中に入れドアに鍵を掛けた。ぼくは最後になるであろうスタッフを吸い込んだ。パッキングした残りのスタッフとチャラスをアルファーに預けた。
「今日から入院する。1ヶ月間それを預かってくれ」
「本当なのか?」
預けるとはどういう意味なのか。退院したら又スタッフをやるのか、ぼくには分からない。ドラッグの深い闇から回帰する。綺麗な身体になり、もう1度だけ現実に戻る。それから先は、その時点で決まるだろう。裁判所への出頭が終りぼくは大使館へ向かった。