いつ意識を失ったのだろうか、センターゲート前でアフリカンから声をかけられた記憶はある、がその後の記憶は途切れた。気がつくと数日前に来た病院のベッドの上でぼくは横になっていた。意識が少しずつ戻ってきていたがぼくは動かなかった。うつろな意識で注射を打たれてからの場景を思い出そうとしていた。どのぐらい時間が経ったのだろうか、ベッドに起き上がろうとして上半身を動かすとドクターは止めた。瞳の動きを確かめた後、血圧や脈拍を調べていた、が正常に戻っていたのだろう
「立てますか?」
と言うので立ち上がって歩いてみた。まだ少しふらつく感じがあり眠りから覚めた時のようなぼんやりとした意識ではあったが不快感はなかった。
ぼくと刑務官は廊下を歩いていた。彼はぼくを気遣うようにゆっくりと歩き特に階段ではぼくの身体を支えるようにして注意深く下りてくれた。先日、来院して見た各階の廊下に溢れる程多かったインド人の患者達、今は疎らで静かだ。これが今回、バクシ弁護士が描いたシナリオの最後であろう。ぼくの保釈までの日数は後10日しか残っていない筈だ。
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