台風17号が荒れ狂う最中に出勤するといった女性から、翌朝、今帰ったと電話があった。
「あぶないよ。よく車を走らせたね」というと、
「今朝、出勤してきた娘は歩いて来たらしいよ。風が強くて壁を伝って這うにしてきた、と笑っていた」と快活に云う。当たり前のように。
20数年前、沖縄に赴任して来た直後のこと。
目覚めると台風が直撃している。窓の外は嵐。
「社員に今日は休みにすると連絡しなくちゃ」
と支度もそこそこに暴風雨の中を車を走らせた。
木々の葉や枝が路上に舞う。ハンドルはとられる。
怖い思いをして、漸く事務所に着くと8時前なのに灯りが点いている。
悪い予感がした。
ドアを開ける。
入社2年目の若い女子社員が制服に着替えて背中を向けて机に座っている。
「どうしたの?バスは通ってないでしょう!」
「お姉ちゃんに送ってもらいました」
「えっ?この暴風雨の中を!?」
「お姉ちゃんもわたしを送って会社に行きました」
と当然のように云う。
バス通勤では乗り換えで1時間半はかかると聞いていた。
車だって40分はかかるだろう。
「ずいぶん時間がかかったでしょう」
「6時半に出ましたから」
7時過ぎに着いたと言う。この暴風雨の中をいつもより早く出て来たのだ。
20歳を過ぎたばかりの若い女子社員がと後の言葉が出なかった。
大和なでしことの最初の出会いだった。
沖縄の社会では男が女より一段上にいるようだ。
沖縄の女性は実に男に尽くす。
だが、
尽くすだけ尽くすと見限るのも早い。
子供の出生率も全国一なら、離婚率も全国一。
離婚も男から言い出すのでなく、女から三下り半を下すらしい。
とにかくよく働く。
朝早くから米軍基地内でレストランで働き、午後はスーパーでレジをやる。
夕方からは介護、そして夜遅く帰宅する。こんなすごい女性もいる。
沖縄の賃金は安い。パートは尚更だ。
ある日、プリンターの調子が悪く修理を頼んだ。
修理に来たのは20代半ばの男だった。好男子だ。
珍しく一心不乱にやるので、修理が終って辞退するのを強引に昼食に誘った。
あかるく、実直ではきはきした態度に好感がもてた。
余程、親の躾がいいのだろうと興味を持って、なにかと話題をその方向に向ける。
男だけの5人兄弟の末っ子と言う。
しかも、両親は彼が幼少の頃別れて、母親の手ひとつで育てられたというのだ。
今は、ふたりの兄はが東京と大阪で、直ぐ上の兄ふたりは那覇で会社勤めをしているという。
「正月にはみんなで母を囲んでお祝いします」と爽やかだ。
「おかあさん、苦労したろうね」
「ええ、でも苦労なんてことをいう母じゃありません」
数え上げたらきりがない。
着任2度目の年賀状で
「沖縄には最後の大和なでしこがいる」
と書いたら、どう誤解されたのかずいぶん冷やかされた。
給料日の翌日は半分くらいが休んでいる、と聞いた頃である。
金が入って、男どもは二日酔いで休むらしい。
なんとも平和な沖縄だろうと羨ましく思った。
だから、わたしの頭の中では沖縄の男と女の印象に格段の差が出来たのかもしれない。
他人ごとではない。
「ひとの振り見てわが振り直せ」
またおふくろから云われそうだ。
台風一過3日後の夕陽
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「あぶないよ。よく車を走らせたね」というと、
「今朝、出勤してきた娘は歩いて来たらしいよ。風が強くて壁を伝って這うにしてきた、と笑っていた」と快活に云う。当たり前のように。
20数年前、沖縄に赴任して来た直後のこと。
目覚めると台風が直撃している。窓の外は嵐。
「社員に今日は休みにすると連絡しなくちゃ」
と支度もそこそこに暴風雨の中を車を走らせた。
木々の葉や枝が路上に舞う。ハンドルはとられる。
怖い思いをして、漸く事務所に着くと8時前なのに灯りが点いている。
悪い予感がした。
ドアを開ける。
入社2年目の若い女子社員が制服に着替えて背中を向けて机に座っている。
「どうしたの?バスは通ってないでしょう!」
「お姉ちゃんに送ってもらいました」
「えっ?この暴風雨の中を!?」
「お姉ちゃんもわたしを送って会社に行きました」
と当然のように云う。
バス通勤では乗り換えで1時間半はかかると聞いていた。
車だって40分はかかるだろう。
「ずいぶん時間がかかったでしょう」
「6時半に出ましたから」
7時過ぎに着いたと言う。この暴風雨の中をいつもより早く出て来たのだ。
20歳を過ぎたばかりの若い女子社員がと後の言葉が出なかった。
大和なでしことの最初の出会いだった。
沖縄の社会では男が女より一段上にいるようだ。
沖縄の女性は実に男に尽くす。
だが、
尽くすだけ尽くすと見限るのも早い。
子供の出生率も全国一なら、離婚率も全国一。
離婚も男から言い出すのでなく、女から三下り半を下すらしい。
とにかくよく働く。
朝早くから米軍基地内でレストランで働き、午後はスーパーでレジをやる。
夕方からは介護、そして夜遅く帰宅する。こんなすごい女性もいる。
沖縄の賃金は安い。パートは尚更だ。
ある日、プリンターの調子が悪く修理を頼んだ。
修理に来たのは20代半ばの男だった。好男子だ。
珍しく一心不乱にやるので、修理が終って辞退するのを強引に昼食に誘った。
あかるく、実直ではきはきした態度に好感がもてた。
余程、親の躾がいいのだろうと興味を持って、なにかと話題をその方向に向ける。
男だけの5人兄弟の末っ子と言う。
しかも、両親は彼が幼少の頃別れて、母親の手ひとつで育てられたというのだ。
今は、ふたりの兄はが東京と大阪で、直ぐ上の兄ふたりは那覇で会社勤めをしているという。
「正月にはみんなで母を囲んでお祝いします」と爽やかだ。
「おかあさん、苦労したろうね」
「ええ、でも苦労なんてことをいう母じゃありません」
数え上げたらきりがない。
着任2度目の年賀状で
「沖縄には最後の大和なでしこがいる」
と書いたら、どう誤解されたのかずいぶん冷やかされた。
給料日の翌日は半分くらいが休んでいる、と聞いた頃である。
金が入って、男どもは二日酔いで休むらしい。
なんとも平和な沖縄だろうと羨ましく思った。
だから、わたしの頭の中では沖縄の男と女の印象に格段の差が出来たのかもしれない。
他人ごとではない。
「ひとの振り見てわが振り直せ」
またおふくろから云われそうだ。
台風一過3日後の夕陽
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