久しぶりに、オーケストラの演奏を楽しむことが出来ました。会場の松本音楽文化ホールは当地から車で2時間くらい掛かるのですが、静かで環境のよい場所にあり、ホールの音場はたいへん素晴らしく、かつ前の座席の人による舞台の視界遮蔽がほとんど起きない洗練された設計がなされ、しかも観客は演奏が終了する瞬間まで、水を打ったように静かに聴くのが普通、というまさに理想の音楽ホールで、大変気に入っており、会員となって既に4年となりました。
しかし今年は、COVID-19により、前半の演奏会の殆どが中止に追い込まれ、また今回の演奏会では、指揮者として予定されていたアンドレア・バッティストーニ氏は、感染拡大防止の入国規制のため来日が叶わず、直前での指揮者変更(三ツ橋啓子氏)となりましたが、予定通り開催され、素晴らしい演奏に酔いしれました。
(上記画像は、当日配布のプログラムより引用)
4つの作品が演奏され、最初はロッシーニの歌劇「ウィリアム・テル」序曲、 目の前のオーケストラ演奏は、子供のころから何度となく耳にしていたこの曲がまるで別のもののように重厚でした。 実はこの2日後、車で出張した際に聞いていたNHK-FMラジオから偶然にもウィーンで収録されたこの曲の全編が流れて、同じ週に2度楽しむことが出来ました。
2曲目の「語りとオーケストラのための系図」 詩の語りが輪廻転生を描き、それに寄り添うアコーディオンの音色に、こちらもその輪廻の世界を歩いているかのような感覚となる不思議な曲です。
3曲目 「フルートと管弦楽のためのコンチェルティーノ」 いい音色ですね。。このフルート! 演奏者の神田さんは松本出身で東京フィルの主席フルート奏者。
最後の曲 「ベートーヴェン 交響曲5番 運命」 この演奏会のメインと言ってよいです。 今年はベートーヴェン生誕250周年。この記念すべき年にこの曲を聴けたことに感謝です。 運命も、ロッシーニのウィリアム・テルも人に勇気を与える強い力を持っています。
三ツ橋啓子さんの指揮は、とても優しくしかし、時として剣のような切れ味と急峻な大河のように押し寄せる迫力を持ち合わせており、全く飽きるということを感じません。素晴らしい!
この演奏会も、ご多分に漏れず新型コロナ感染拡大防止のために、座席は1列ごとに空席、チケットは裏面記名で終了後回収、休憩時間のトイレも密とならないようボランティアの方が通行調整をする、 パンフレット類の手渡しは一切せず、入り口ではサーモグラフによる体温チェックなど、 あらゆる策が講じられていました。 1つのことをするのに多くの手間と人手、そして費用がかかるのがウィルスと共存する今現在の有りようだと痛感します。 こういった対策をして、演奏会を開催して下さる関係者の方に、そして活動の機会が制限されている状況でも、素晴らしい演奏を披露してくれる音楽家の方たちに心から感謝いたします。