だから、ここに来た!

いらっしゃいませ! 英国旅行記の他、映画や音楽、テレビドラマ、演劇のレビューを中心にお贈りしております!

【涙の?最終回】「9から始まる奇妙な物語」最終話『Plodding On』【ネタバレ注意】

2024-06-16 | TV/9から始まる奇妙な物語

 

2024年6月12日に最終回を迎えた「9から始まる奇妙な物語」(以下IN9)
各シリーズのエピソードリストを作成中ですが、
この最終回については独立した記事を作ることにしました。
というのもこのエピソード、これまでの出演者が再登場したり、過去のエピソードの引用が満載なのです!
ストーリーの感想を交えつつ、どこからの引用なのか触れながら振り返りたいと思います。

ちなみに、タイトルの『Plodding On』は”Love's Great Adventure”(S5E3)の仮タイトル。
本編でもセリフとして登場していました。

【かくれんぼ、再び】

IN9全シリーズの打ち上げパーティで貸切中のクラブ「#9」。
男女共有トイレの個室でコカインを吸い始めた
キャサリン・パーキンソンティム・キー

キャサリン・ケリーが出演した"Ctrl Alt Esc"(S9E4)の撮影中にスティーヴ・ペンバートンが病院に運ばれたという噂や、
英国の俳優は誰もが興味津々な、Amazonが進行中のダンテの「神曲」を元にした新作ドラマについて話す。

●感想/引用元●

キャサリン・パーキンソンティム・キー、そして最後に入ってくるアン・リード"Sardines"(S1E1)の出演者。
キャサリンがトイレで鏡を見たり石鹸の匂いを気にする仕草や、
ティムと狭い個室で異様な近距離で押し込められるのは"Sardines"と全く同じ。
液体石鹸をポンプごともぎ取って持ち帰ろうとするキャサリン、大胆すぎる(笑)。

ヤクの吸引のために取り出したボディショップの割引券は"Tom & Gerri"(S1E2)にも登場。
途中で"Paraskevidekatriaphobia"(S8E3)に出演していたアマンダ・アビントンがトイレに入ってくるけれど、
ティムがアマンダのことをキャサリンだと勘違いして「私がキャサリンなんだけど…」と突っ込まれるのが気まずい(笑)。
でもこれも"Sardines"の引用。

Amazonの新作ドラマを説明するキャサリンが「ダンジョンズ&ドラゴンズみたいな」と説明するところは
"Simon Says"(S6E2)のエージェントのセリフからの引用。
トイレの個室のドアに貼られている「9」の文字も、全て過去のエピソードのオープニングで使われた「9」がそのまま使われています。

 

【幻のエピソードの復活?】

スティーヴを探しにきたリース・シェアスミスはトイレでロビン・アスクイズに遭遇。
リースはIN9が終わった後はスティーヴとBBCのクライムコメディドラマ『Plodding On』を手がけることをロビンに明かす。
一方、ロビンはリースにフェイクとして発表されていた幻のエピソード"Hold on tight"をドラマ化しようと持ちかけ、
企画メモ持参で下ネタ満載なアイディアを提案。

●感想/引用元●

"Hold on tight"は視聴者が待ち焦がれていた? バスを舞台にしたS8エピソードの一つとして
ロビン・アスクイズがゲスト出演すると発表されていましたが、
実はこれがフェイク情報で、実際に放送されたのは全く違う、クイズ番組を舞台にした"3 by 3"(S8E5)だったのです。
リースは長年「9番のバスを舞台にしてと言われるけど、そんなの作れるかよ!」と言い続けていたので、
ついにバスエピソードが!とみんなの期待が大きかったこともあり、すっかり騙されたのでした。

ロビンのアイディアはほとんど下ネタばかりで
「クレバーな部分は2人でやってくれ。死んでるとか幽霊とか…いつもやってる手だろ」と人任せ。
リースは「("実は死んでる"ネタは)3回しかやってない」と答えますが、
この3つは"Tom & Gerri"(S1E3)"The 12 Days of Christine"(S2E2)"Bernie Clifton's Dressing Room"(S4E2)でしょうか。

【スティーヴの野望】

スティーヴは電子タバコを吸いながらトイレの洗面鏡に向かって役作り。
実は"Ctrl Alt Esc"(S9E4)の撮影中に倒れたのは、ダンテの「神曲」のショーランナーと会うために使った仮病で、
役を得ただけでなく、LAとカナダで7年間にわたる撮影に参加することになったとロージー・カヴァリエロに明かす。

●感想/引用元●

ロージー"The Understudy"(S1E5)でスティーヴ演じる舞台俳優トニーの着付け係に扮していたため、
ここでもスティーヴの忠実な着付け係に徹しています。
ロージーがバーから持ってくるカクテルは、"Diddle Diddle Daiquiri""Bloody Merrily Merrily"
"Riddle of the Aprerol Spritz"といった過去作をもじった名前ばかり。
こんなカクテル出すお店を作って欲しい!
ちなみにこの後に出てくるバーカウンターにあるメニューには
"Mothers Ruin Martini""Whisky Sourdekatriaphobia""Last Night of the Pimms"といったものもあったみたい

靴箱の中に💩が入っているのは”La Couchette”(S2E1)の引用で、
スティーヴは「(出演者だった)ジャック・ホワイトホールへのプレゼントだ」と説明しています。
(テーブルの下にあるスティーブの靴は"Diddle Diddle Dumpling"(S3E5)の引用だという説を見ましたが、
 そのカットが今のところ見当たらず…)

スティーヴがロージーに「電話番号知ってる?メイド役にぴったりだと思う」と聞くモニカ・ドラン"Once Removed"(S4E3)の出演者。
ロージーがメイドの役のためにビデオを送ったって言ってるのに、彼女に電話番号を聞くなんて残酷〜。
そして冒頭に出てきたアン・リードがタクシーに乗せられてるとサラッと言及されてるのが面白い。

 

【コンビ解散の危機】

ニック・モハメッドはポッドキャスト"Mountain to Mohammed"第279話をトイレで収録中。
インタビューされるスティーヴはAmazonのドラマに出演することを明かすが、偶然個室に入っていたリースに聞かれてしまい、
動脈瘤の疑いで倒れたのはオーディションのための仮病であったことがバレてしまう。

●感想/引用元●

つい最近までチャンネル4のゲーム番組"Taskmaster"でスティーヴが仲良く共演してたニックの登場!
ニックは出演したエピソード"Simon Says"(S6E2)のようにポッドキャストを録音しています。
全部自分の話にすり替えがちなニック(笑)。
合間で唐突にCMを入れるのはポッドキャストあるあるですね(笑)。タイミングが絶妙。
そのCMの中に"Wills Unlimited"と出てきますが、これは"Dead Line"(ハロウィーンSP)のラジオで流れる保険会社名と同じ。
スティーヴがパーティーについて表現した'I feel like my life is flashing before my eyes'は、
"The 12 Days of Christine"(S2E2)のクリスティーンのセリフを彷彿とさせます。

個室から出てきたリースにニックが「大きい方小さい方、どっち?」と聞く身振りは”A Quiet Night In”(S1E2)からの引用。
ニックがスティーヴのオーディションの日にちを正確に覚えているのは、
最近見たばかりのニックの「トランプの全部の絵柄を順番に記憶するテクニック」の動画を思い出しました。
そしてニックが去り際に残した「BAFTAで頭を殴らないようにね」は、やはり"Simon Says"(S6E2)で凶器に使われたNTAのトロフィーの引用。
リースがスティーヴを詰る’You lying f*cking monster!’は"The Bill"(S3E2)からの引用。

一触即発となるリースとスティーヴですが、
スティーヴへの想いを話すリースの様子はお笑いコンビの再会を描いた
"Bernie Clifton's Dressing Room"(S4E2)を思い出させます。
「ちっぽけな仕事部屋でコーヒー2つ持ってくるとお前が死んだふりをしてて一緒に笑う」というのは、
実際に2人が仕事前にやっているお約束の儀式。

仮病を使われていただけでなく、7年もの間、離れて撮影することを知らされていなかったリースは
"Bernie Clifton's..."で演じていたトーマスとはまた少し違った、
愛情と憤りと戸惑いの入り混じった感情を込めてスティーヴに訴えます。

「お前は親友なんだ」
「今度は"Merrily Merrily"の引用か?」
「違う、俺は本気だ!倒れた時は本当に怖かったよ。倒れたふり、だったか。
 お前が死ぬんだと、失ってしまうんだと思った。
 そしてまた失おうとしてる。本当の友達はほとんどいないのに!」
「リース。長いこと一緒に仕事をしてきた。もう僕らが友達なのかわからないよ」

(スティーヴは実際2015年に倒れて病院に運ばれたことがあったので、リースが本気で心配するのも無理はないのです…)
そして気まずい雰囲気の中、"Bernie Clifton's..."と同じようにシアン・ギブソンが2人を呼びにきます。

 

【'Time To Say Goodbye'?】

フロアでは全シリーズのエピソードから編集したフィルムが上映されている中、
リースはエミリー・ハウレットと手話で会話を交わし、
スティーヴはバーでジェイソン・ワトキンスから「神曲」への出演を祝われる。
離れたところからリースの様子を気にするスティーヴだったが、
ロビン・アスクイズに引き留められ、話すタイミングを失ってしまう。

●感想/引用元●

クラブの壁には"Misdirection"(S5E4)"Mr. King"(S7E2)等の過去のポスターが飾られています。
テーブルには"Nana’s party”(S2E5)のケーキが。
前述のカクテルと同様に、フードメニューの中にもシリーズにちなんだもので、
"Zanzibar"(S4E1)で催眠術師がかける魔法の言葉「スパゲッティボロネーゼ」
"To Have and to Hold"(S4E4)に登場する「カップヌードル」
"Lip Service"(S6E3)のホテルに置いてある「ロータスビスケット」
"How Do You Plead"(S6E5)の会話の中に登場する「みかん」
"Kid/Nap"(S7E4)の合言葉の一つ「グラノラ」
"Mulberry Close"(S9E3)に出てくる犬の名前「ポップコーン」があるとか。(解読した人すごい!)
 また、バーのテーブルには"Wuthering Heist"(S6E1)のコメディア・デラルテの仮面や
"Mr King"(S7E2)のマスクも置いてあります。

ビデオに使われている曲は"The 12 Days of Christine"(S2E2)で使用された'Time To Say Goodbye'。
鑑賞しているゲストもこれまでの出演者ほとんど勢揃いで豪華! よくこれだけのメンツが一堂に会したもんだ!
そしてスクリーンには亡くなったThe Harrowing”(S1E6)ヘレン・マックロリーの姿も…(涙)

ジェイソン・ワトキンスがバーで「コーラ2本分支払った」と呟いているのは、
彼が"The Bill"(S3E2)で演じた財布の紐の堅いケビンの再現。
エミリー・ハウレットは、リースと手話で会話しながら
"Empty Orchestra”(S3E4)に登場する間違った文句と同じく’C*ntgrotalations’とお祝いの気持ちを伝えています。

そして毎エピソードに登場する野うさぎ像、最後はスクリーンの横に置いてあります。いつもより大きい!
(ちなみにパーティーゲストのクレジット中央に載っているEuropa Lepusは野うさぎ像のこと!)

 

【第三の選択】

トイレに篭るリースはテレビ電話でマーク・ゲイティスに『Plodding On』への出演を打診するが、やんわり断られてしまう。
途方に暮れているところにスティーヴが個室をノックする。
果たして2人は別れ別れになってしまうのか? それとも…

●感想/引用元●

マーク出てきたー!! しかも”The Motive and the Cue”のジョン・ギールグッドの格好で!!
それにしてもドラマの話に興味のないマークの力のない表情といったら!表面的な愛想笑いもたまらない。
そしてクライムドラマの誘いを断っておいて、現実世界では今クライムドラマ"Bookinsh"を撮影しているマーク(笑)。
通話が切れてないまま「危ないところだったわ…」と呟いているのをリースに聞かれたマークが
「マーク… 電話切れてないよ…」と言われ、画面に通話を切る指だけがオロオロと映るのが最高。
視聴者の「指だけで恥ずかしそうに見えるもんなんだ」ってツイートを見て笑ってしまった。さすがオリヴィエ賞俳優(笑)。

トイレのドアをノックするスティーヴにリースが答える'I’ve taken some tablets.'は"Cold Comfort"(S2E4)の"クロエ"のセリフで、
'My mum's ordered me biryani.'は"Once Removed”(S4E3)からの引用。
二人が'Fortunately'と'Unfortunately'を交互に使うのは“The Stakeout”(S5E6)の引用で、
スティーヴが呟く'Plodding on - Double D'は
“A Random Act of Kindness”(S7E5)に出てくる単語の中の連続した文字を見つけて言ってしまう口癖の再現。
スティーヴが歌い出す'If you're going to cry...'は(リースとスティーヴが自分の葬式にかける予定の)
"Bernie Clifton's Dressing Room"(S4E2)でチーズ&クラッカーが歌う"Tears of Laughter"。
リースが“There is a third option”と提案するセリフは、”The Trolley Problem”(S9E2)から。

結局、冒頭でキャサリンが「神曲」の話をして、ティムが興味を持ったことで
スティーヴが再オーディションする羽目になる…と言うのが、冒頭に戻っていて面白いですね。
そしてリースとスティーヴも元鞘に…

最後に出てくる「第三の選択」であるドラマのオープニングは、前述のバスエピソード"Hold on tight"そのもの!
スティーヴが玉ねぎを齧っているのはリーグ・オブ・ジェントルマンのタブスの真似で、車両番号には“3 by 3”(S8E5)の文字が!
"The Referee’s a W***er"(S5E1)のようにサッカーチームのマフラーを巻いているところにも注目!
シアンが出てくる背後には”The Trolley Problem”(S9E2)に出てくる「ソンディ・テスト」の額が。
キャサリン・パーキンソン(字幕はティムの間違えと同じ、アマンダ・アビントンになってる!)は
“Hurry Up and Wait”(S6E4)ドナ・プレストンの役と同じ牛乳でついたヒゲがあるし、
横に“Wise Owl”(S6E6)の"WASH YOUR HANDS"ポスター!
アマンダ(こっちはキャサリンの字幕になっている)がニンジンを齧っているのは、リースによると"Mr King"(S7E2)の引用。
ロビンの横のバスの広告"Visit summerland"は"Seance Time"(S2E6)のアリソンのセリフから。
ティムの持っているネズミは“The Trial of Elizabeth Gadge”(S2E3)、に出てくるネズミSnowflakeにちなんで。
ロージーの横には“Curse of the Ninth”(S9E5)エディ・マーサンが演じた作曲家の鏡像が置いてある。
ニックが持っている新聞の見出し"Lonely Hearts Killer"は“Love Is a Stranger”(S8E4)からの引用。

以下はその他のパーティー出席者(+電話出演のマーク)↓

 

…とまあ、ざーっと見かけた引用元を並べて見ましたが、
エピソード全体がまるでデジャヴのようで、懐かしいようなまさに走馬灯のような不思議な感覚でした。
苦笑しちゃう気まずさを交えながら、熱い友情でほろりとさせつつ、最後にはやっぱり笑わせてくれる。
最後の最後にこんなファンも参加した関係者も楽しめるようなエピソードを作ってしまうなんて、
やっぱりリースとスティーヴは天才!

それと同時に、今は舞台上演に向けて準備中なのはわかっているけれど、
最後まで密度の濃いエピソードが書けるのに、ここでTVシリーズが終わってしまうのが残念で仕方ない。
2人は今のテレビ界に必要な人材であることは間違いないと思うのです。

10年間、このシリーズが始まってからずーっと楽しみに見続けてきました。
私が彼らに興味を持って英国へ旅行し、英国でしか放送されていないテレビやWEの舞台を見始めた歴史と同じ時間。
その間に、2人に直接「Inside No.9の新作を楽しみにしています!」と伝えることも出来ました。
始めは誰の目にも、BAFTAの目にもとまらず、リースのようにイライラしてましたが(笑)、
だんだん英国での評価も知名度も高まり、愛されるシリーズとなって嬉しかったし、
(いまだに日本ではS2までしか配信されていませんが)
だからこそお別れを言うのが辛い。
間違いなく、これからもずっと、私の人生の中で大切なテレビシリーズの一つであり続けるでしょう。

 

 

【参考資料】

 

Every Single Inside No. 9 Episode Was an Easter Egg in the Series Finale

Here’s how all 54 previous episodes were included via a guest star, a poster, a prop, clip or a quoted line of dialogue…

Den of Geek

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【更新中】「9から始まる奇妙な物語」第9シリーズ エピソード・リスト【ネタバレ注意】

2024-06-03 | TV/9から始まる奇妙な物語
 
※この記事はシリーズ放送中のため、現在編集途中です!※
 
「9から始まる奇妙な物語」(以下IN9) から最終第9シリーズのリストです。
日本語のタイトルは私が勝手につけています。
まだ投稿していないリストがありますが、鑑賞したばかりで記憶が新しいところで先に投稿しておこうと思います。
「ポイント」はネタバレを含んでいる場合があるため、未見の方は注意してください。
 
今回もおすすめ度合いに合わせて星をつけてみましたが、
もし配信されたら実際に見て、好きな回を見つけてくださいね!
 
↓シリーズ予告編

以下、RadioTimesのインタビューより。

スティーヴ
「終えると決めたことに後悔はしていない。シリーズ数的にはInside No.9のS9っていう僕らのちょっとしたジョーク。
 S5で終えることも出来たが、僕らはその目標までは辿り着こうと決意していた」
リース
「最終回がiPlayerだけで見られるようになったら完結した気にもなるだろう。
 悲しさもあるだろうけど、自分たちで掲げた高いハードルを妥協なしに最後まで成し遂げたという大きな安堵感もある。
 今55の物語を終えて、焼き直しをせず衰えることもなかったのは偉業。僕たちは誇りに思っている」

 

第1話
"Boo to a Goose"「臆病者」(30 April 2024) 

あらすじ:
深夜の地下鉄が故障し、乗り合わせた客は車両の中で閉じ込められることを余儀なくされる。
そんな中、電灯が消えたタイミングで看護師の財布が盗まれてしまう。
ある男はホームレスを犯人と決めつけ身体調査を求めるが、他の乗客はそれに反対し…
 
オススメ度:
 
ポイント:
シリーズの最初のコンセプトだった「閉鎖空間に閉じ込められた人たち」という設定に原点回帰したエピソード。
地下鉄という英国らしい場所を舞台に、これまたお馴染みの「急な運行休止」に巻き込まれる乗客を描いている。
日本では考えられないけれど、ホームレスが紙コップを手に歩いて回るのもよく見る光景。
ドラァグクイーンに扮しているスティーヴのメイクがものすごい!一瞬誰かわからないけれど似合ってる!
最後に出てくる"See it. Say it. Sorted."(見て、言って、解決する)は、ロンドンに生活した者が1日に何回も地下鉄で耳にするフレーズ。
あまりに何度も聞くので、意味も考えなくなってしまっているけれど、
このエピソードを見た後だと、とても重い意味に思えてきてしまう。
ちなみに、スティーヴ演じるウィルマが出演している"The Purple Socks"は
前シリーズの”The Last Weekend”で言及があったゲイバーの名前。
 
 
 
 
第2話
"The Trolley Problem"「トロッコ問題」(7 May 2024) 

あらすじ:
セラピストのブレイク(スティーヴ)は雨の中、橋の上で憂鬱に佇んでいたドリュー(リース)という男を家に連れ帰る。
友好的に接しようとするブレイクだったが、ドリューの腰に拳銃が挟まれているのを見て、
手渡したマグカップで鎮静剤を飲ませようと試みる。
しかしドリューもブレイクが目を離した隙にさらに強力な鎮静剤を仕込んで…
 
オススメ度:
 
ポイント:
スティーヴ&リース、ふたりだけの芝居のぶつかり合い。
S3E3 ”The Riddle of the Sphinx”のような後味。
最後のブレイクの眼鏡に映るドリューの姿が残酷ながらも目に焼きついてしまう。
 
 
第3
"Mulberry Close"「マルベリー・クローズ」(14 May 2024) 

あらすじ:
新婚のデイモン(リース)とヴァル(ヴィネット・ロビンソン)がマルベリー・クローズに引っ越してくる。
デイモンたちの新居からの不審な音を聞いたラリー(エイドリアン・スカボロー)は
詮索好きな斜向かいに住むシーラ(ドロシー・アトキンソン)とケン(スティーヴ)を巻き込み、
ヴァルがデイモンに殺されたのではないかと彼らの新居に乗り込もうとするが…
 
オススメ度:
 
ポイント:
防犯カメラからの映像を利用したS2E4 "Cold Comfort"のように、玄関の防犯カメラから見える風景で語られるエピソード。
隠蔽された恐ろしい殺人事件なのかと思いきや、お節介なご近所さんたちによる滑稽な勘違い。
しかし、そこで単にコメディで終わらないのがこのシリーズ。
それぞれの思い込みや秘密が重なり合って、悲劇が起こる。
笑えて且つ日常的な恐ろしさも孕んでいるブラック・コメディの名作。
何テイクも撮影
「SHERLOCK」のドノヴァンことヴィネッテ・ロビンソンや
"Syphoville"のエイドリアン・スカボローがゲスト出演なのも嬉しい。
 
第4話
"Ctrl Alt Esc"「コントロール/オルト/エスケープ」(21 May 2024) 

あらすじ:
娘のミリーとエイミーを連れて脱出ゲームにやってきたジェイソン(スティーヴ)とリン(キャサリン・ケリー)の夫婦。
スタッフのダグ(リース)の説明を受け、ジェイソンは足首を鎖でベッドに繋がれたまま、
家族は陰鬱で不気味な部屋から脱出するためのヒントを探そうとする。
 
オススメ度:
 
ポイント:
リーグオブジェントルマンのメンバー、ジェレミー・ダイソンが手がけた映画「ゴースト・ストーリーズ 英国幽霊奇談」や、
マーク・ゲイティスが出演した映画「ファーザー」を思い出させるような、
実はジェイソンの意識の中の、逃げ場のない悪夢の物語であると分かります。
S2E2の"The 12 Days of Christine"的でもありますね。
最後のオチがこのドラマを総括するようでしんみりしちゃう。
放送後、ジェイソンのように悪夢の中もがいて覚醒する事例の投稿を見かけて興味深かったです。
 

Reddit - Dive into anything

Reddit - Dive into anything

Tumblr

 

 

 
第5話
"The Curse of the Ninth"「第九の呪い」(5 June 2024) 

あらすじ:
舞台はエドワード朝時代。
作曲家ナサニエル・バーナム(エディ・マーサン)は作曲中の交響曲第九番が未完のまま、呪いに取り憑かれて自ら命を絶ってしまう。
数年後、資金繰りに窮した未亡人リリアン(ナタリー・ドマー)はピアノ調律師のジョナ(リース)に墓荒らしをし、作品を完成させるよう仕向ける。
 
オススメ度:
 
ポイント:
「第九の呪い」はベートーベンやドボルザークなど、交響曲第九番を完成させると死んでしまうという実際にあるジンクス。
グスタフ・マーラーが有名にしたジンクスだそうです。
リースは「カントリーハウスで普段とは違う衣装で撮影するのは格調が高くなる」と撮影を楽しんだそうです
 
 

クラシック音楽、作曲家を死に導く「第9の呪い」…命と引き換えに人生最高傑作を生む?

「交響曲第9番を作曲すると、僕は、もう死んでしまうかもしれない」そんなことを考えながら、本当に交響曲第9番を完成したのちに死んでしまったのは、1911年に生涯を...

ビジネスジャーナル/Business Journal | ビジネスの本音に迫る

 

 

第6話
"Plodding On"「足取りあわせて」(12 June 2024) 
 
あらすじ:
IN9全シリーズの打ち上げパーティで貸切中のクラブ「#9」。
スティーヴはIN9の撮影中に仮病を使ってAmazonの大作ドラマの役を獲得していた。
トイレでポッドキャスト録音中のニック・モハメッドに今後の予定を明かすと、
事情を知らないリースが個室から出てきて…
 
オススメ度:
 
詳しい内容は以下のページにまとめました!↓
 

【涙の最終回】「9から始まる奇妙な物語」最終話『Plodding On』【ネタバレ注意】 - だから、ここに来た!

2024年6月12日に最終回を迎えた「9から始まる奇妙な物語」(以下IN9)。各シリーズのエピソードリストを作成中ですが、この最終回については独立した記事を作ることにしまし...

goo blog

 

 

 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【アンドリュー・スコット特集】「ワーニャ」と「リプリー」と「異人たち」と…

2024-06-02 | movie/劇場公開作品

ここ最近、「SHERLOCK」モリアーティこと、「フリーバッグ」ホット・プリーストこと
アンドリュー・スコットの作品が立て続けにリリースされていましたが、(それも名作ばかり!
ちゃんとチェックしていたにも関わらず、あまり言及出来ていなかったのでまとめておこうと思います。
ほとんど取り急ぎのメモ。ツイッターまとめみたいな感じ。

【映画「異人たち」】

まず映画「異人たち」。これは山田太一の小説「異人たちとの夏」を英国に置き換え、
主人公もゲイの脚本家に設定変更している映画。
山田太一の小説は10代の頃に読んでいて、「異人たちとの夏」は大好きな作品でした。
その主人公をアンスコが演じるなんて!願ったり叶ったり!

東京国際映画祭で上映されると知って、
いまだに悪名高いチケット購入システムで何度もエラーを喰らいながらなんとかゲット。
(ほんとどうにかならんのか…)

ロンドンの人気のないフラットに暮らす脚本家のアダムは同じ建物に住むハリーと知り合う。
その一方で、かつて住んでいた実家だった一軒家を訪れる。
そこにはもういないはずの若い両親がアダムを待っていて…

大好きだったとは言っても、最近は読み返していなかったので、
すっかり話の内容を忘れかけておりましたが、
本編を見てだんだん思い出してきた… ああ、なんて切ない…

Frankie Goes To Hollywood "The Power Of Love"を聴くたびにこの映画のことを思い出しそう。

 

山田太一 なぜファンタジー? 小説がイギリスで映画化 | NHK | WEB特集

【NHK】イギリス映画『異人たち』。原作は日本の名脚本家、山田太一さんが37年前に書いた小説。なぜ、いま映画化なのか。魅力に迫る。

NHKニュース

 
 

私たちは、互いにとって「異人たち」なのか? アンドリュー・ヘイ監督が語る、孤独と痛み、クィアな愛 | CINRA

山田太一の小説を映画化。同性愛嫌悪の激しい80年代英国に育った自身の痛みや孤独、そして愛への希望を込めた

 

↓「異人たち」の脚本

https://deadline.com/wp-content/uploads/2023/12/All-Of-Us-Strangers-Read-The-Screenplay_Redacted.pdf

 

【Netflixドラマシリーズ「リプリー」】

「見知らぬ乗客」や「キャロル」の作者パトリシア・ハイスミス「リプリー」
アラン・ドロンの「太陽がいっぱい」(1960)やマット・デイモン主演の映画(1999)で知られていますが、
この度、全8話ドラマシリーズとしてアンドリュー主演でドラマ化されました。
アンドリュー主演のドラマって初じゃない??
(1999年の映画は当時劇場で見たことがあります。一番原作に忠実みたい。)

詐欺で生計を立てているトム・リプリーは、造船業を営む富豪グリーンリーフの息子の友人と間違われ?
イタリアで放蕩するその息子ディッキーに戻ってくるよう説得を依頼する。
金のためにグリーンリーフの依頼を承諾し、イタリアに渡ったリプリーは、
ディッキーと恋人マージと接触し、友好的な態度を見せながら、ディッキーの暮らす豪邸に居座ってしまう。
しかしマージは彼の本性を疑っていて…

モリアーティで世界一のコンサルタント犯罪者を演じていたアンドリューですが、
このドラマの中では行き当たりばったりの爪の甘い詐欺や犯罪を積み重ねていて、毎回ハラハラさせられます!

しかし映像はモノクロームでリプリーが巡るベネツィアやローマなどイタリア各地の風景が息を呑むほど美しい!!

アンドリュー演じるトム・リプリーがなりすます富豪の息子ディッキーは
舞台"The Motive and the Cue"でリチャード・バートンに扮していたジョニー・フリン
リプリーを訝しみながらも疑いきれない気の毒な富豪の息子を演じてます。

以下、当時の自分の感想。

「リプリー」第一話見たよ!モノクロームのどこを切り取っても美しいNYやイタリアの風景。
そして不穏な雰囲気を漂わせつつもどこか人間臭いアンスコのトム・リプリー。
はぁはぁ言いながら階段登ったり、言葉が通じない中ピチピチ水着試着して苦笑したり、
やっぱり闇があるのに憎めないキャラが似合う。

第二話。詐欺の手口に目敏く気づいて友人に指摘するのに、一方で誰が見ても明らかに犯罪絡みの旅行を持ちかけるリプリー。
より重い詐欺の方に全く悪気を感じてないのが面白い。
ジョニー・フリンとダコタ・ファニングの世間知らずでありつつもリプリーに対し警戒し距離を取る演技が上手い。

第三話。とうとうやっちゃったな。堂々とはしているけど、手口が全然鮮やかじゃないのが本当にハラハラする。

第四〜六話。! あまりに詰めの甘い犯行ですんごいヤキモキさせられるけど、警察出てくると俄然燃えてくるラビーニ警部、渋かっこいい。
警部!凶器はその灰皿ですよ!!

もったいぶってとっておいた「リプリー」の第7, 8話見終わった!はー面白かったー。
警部意外と仕事出来なくて助かったね。それにしてもやっぱりどこを切り取っても美しいドラマシリーズだった。
リプリーと逃避行してるような気分になったし、最終話のカラヴァッジョとの対比も刺激的だったわ。

ちなみに、リプリーを疑い続けるマージを演じたダコタ・ファニングとアンドリューのインタビュー動画は、
本編とは違ってどれも和気藹々としてて微笑ましいです。
ダコタの11歳の誕生日に初めての携帯電話を買ってあげたのは「宇宙戦争」で共演したトム・クルーズだとか。
彼は最近の30歳の誕生日まで毎年ダコタに誕生日プレゼントを送っているらしく、
アンドリューの「僕はもらったことない。トムー??(僕にもちょうだい顔)」が笑えます。

Dakota Fanning & Andrew Scott Quiz Each Other on Their Careers | All About Me | Harper's BAZAAR

 

【NT Live「ワーニャ」】

そして舞台「ワーニャ」

2023年8月28日〜9月2日にリッジモンドシアター、9月15日〜10月21日にデュークオブヨーク劇場で上演された、
言わずもがなアントン・チェーホフの代表作の一つですが、
全ての登場人物をアンドリュー一人で演じるという、挑戦的なプロダクション。

↓リハーサルの様子。

映画館上映作品としてNT Liveの一つとして組み込まれ、
日本でも2024年5月24日から全国の映画館で上映が始まりました。
私はその前の5月18日の先行上映で一足早く鑑賞。
上演後の評判として「今世紀最高の演技のひとつとして記憶に残るであろう」とまで言われていて、とても楽しみにしていました。

タイトルになっているワーニャおじさんアイヴァンといった風に、
この舞台では登場人物の名前を英語名に書き換えられています。
アイヴァンと姪のソニアは亡くなったソニアの母アナの土地で農業に勤しみ、
ソニアの父である映画監督のアレクサンダーを支えています。
アレクサンダーはアナの死後に若いヘレナと結婚。
アイヴァンや医者のマイケルはヘレナに惹かれていますが、
まだウブなソニアはそのマイケルに惹かれています。

Three Days in the Countryといい、
ロシア演劇ってこういう家族&出入りする地元民の報われない一方通行の恋(そして立ち去っていく)が多いよなー。
そして土地や相続問題…
あらすじの内容だけを考えると気が滅入りそうな物語ですが、
アンドリューの演技の巧みさで、とても楽しめる舞台になっています。

一人芝居で衣装も変えずに何人も演じるというと、
次々に役が切り替わって、瞬間的に誰が誰なのか把握するのが難しいそうですが、「動き回る落語」だと思うとわかりやすい!
ヘレナが座るブランコ家政婦の吸うタバコなど、小道具の使い方で誰を演じているのかがわかる。
それに、先に見ていた方から「ラブシーンも一人で演じてた」と聞いて
どゆこと??と思いましたが、本当に一人でやってました。
扉に背中を押しつけ、荒い息遣いの中、片方の手で争うもう片方の腕を掴む…
一人で演じてるのになんだか余計にドキドキしてしまいます。

アンドリューはこの「ワーニャ」でLondon theatre Critics Circle Awardsの最優秀男優賞を受賞。
実は同年に前述の「異人たち」の演技でLondon Film Critics Circle Awardsでも主演男優賞を受賞しており、
同年に映画・演劇の両方を受賞するのは史上初の快挙なんだそうです。すごい!!

そしてオリヴィエ賞でも演劇主演男優賞にノミネートされていて最有力かと思われていましたが、
結果的にはこれも前述の"The Motive and the Cue"のマーク・ゲイティスが受賞し、
「ワーニャ」はリバイバル演劇賞の方を受賞しました。
"The Motive and the Cue"もNT Liveで今夏上映予定です

先行上映前のトークイベントで、シェイクスピアを専門とされている英文学者の河合祥一郎先生が
「アンドリュー凄い!ってなりますけど、オリヴィエ賞を取ったマーク・ゲイティスの演技がどれだけ凄いか、今後の上映で見比べられるわけですね」
と仰ってて、ゲイティスオタクとして緊張しちゃう…
実際どちらのファンの私も、色々劇評や賞レースをチェックしてて、
アンドリューが有力なんだろうな…と思ってました。
でも二人の演技は遠泳と潜水の凄さを比べるようなものでどっちも素晴らしいのです。

 

 

Vanya review – Andrew Scott’s solo tour-de-force in the West End

Simon Stephens adapts Chekhov for the West End – with Andrew Scott taking on every role

WhatsOnStage.com –

 

 

 

Vanya at the Duke of York’s: an acting masterclass from Andrew Scott

This one-man take on Chekhov is no vanity project or gimmick: it’s a distillation of his compassion and humanity that creates something new.

Evening Standard

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする