■1月29日(日)■
マーティン・マクドナー監督の映画「イニシェリン島の精霊」を見に行きました。
例によって仕事でいっぱいいっぱいで、ろくに前情報を入れずに鑑賞。
把握していたのは「弱っている時に観に行くべきではない」ってことと、
「鑑賞前にホットドックは食べないほうがいい」ってこと…
アイルランドの孤島に住むパードリック(コリン・ファレル)は、
いつものように親友コルム(ブレンダン・グリーソン)の家を訪れ、
窓の外からパブに誘うが、なぜかコルムは彼を無視する。
不思議に思ったパードリックは再度誘いに行くが、
コルムはすでにパブに向かったらしく家にはいない。
やっとパブで彼の姿を見つけるが、コルムから驚きの言葉を投げかけられる。
「今日から友達をやめる」
突然友人から別離を告げられたり距離を取られたりと言う経験は、
ある程度人生を生きて来た人なら心当たりがあるんじゃないでしょうか。
私はあります。距離を取られたことも、自分から距離を取ったことも…
そういう時は諦めるしかなかったり、なるべく自分からも距離を取るのが一番ですが、
この世間が狭いイニシェリン島では否応もなくパードリックとコルムは顔を合わせることになります。
知的な妹シボーン(ケリー・コンドン)やパードリックにちょっかいを出す青年ドミニク(バリー・コーガン)も
コルムに関わらないよう勧めますが、
パードリックは突然「退屈だから」と嫌われた理由が理解できず、
酔った勢いでコルムに当たり散らし、ついにコルムは最終手段に出ます。
その手段とは… 予告を見てくださいな↓
『イニシェリン島の精霊』予告編│2023年1月27日(金)公開!
ここからはネタバレありの感想。
この映画でまず面白かったところは、
パードリックとコルムが仲違いすることになった「その日」からを描いていて、
二人の仲が良かった時期は想像するしかないところ。
パードリックがどんなくだらない話をコルムに投げかけていたのか、
コルムはその話に耳を傾けながらも、だんだんと彼の話題に呆れてきたのか、
それとも実はちょっとした一言が彼の心境に変化をもたらしたのか…
その辺りは観客の想像で受け止められるのが面白いですね。
そしてコルムがパードリックを遠ざけるために取った行動の異常さ…
そこまでするかね?っていう驚きを超えて笑ってしまいます。
存在を拒否しながらも、パードリックが痛い目にあっている時は助けてあげたり、
意外と気持ちがブレてるコルムの都合の良さをズルく感じます。
見ている間「おお〜これは『ダンサー・イン・ザ・ダーク』以来の胸○ソ映画になるかー?」と
逆な意味でのワクワク感が発生(笑)。
そしてはじめは戸惑うしかなかったパードリックも、
この騒動の末に大事なものたちを失い、ついにコルムに対し反撃を開始…
この映画では、時折対岸の本当で起こっている(イングランドからの独立に対する)内戦の音が聞こえてきますが、
言うまでもなくこれは孤島で起こっている「内戦」と対比させているものだとわかります。
そう考えると、周りがわけのわからないままにぶち上げたコルムの対立や、
「お前のためを思って」と親切心のように理由付けする距離の取り方も、
戦いをふっかけてくる側の言い分にそっくりな気がしますね。
そして、自分の想定以上に相手(とその周辺)を傷つけた時の「そんなつもりじゃなかった」という言い分も、
まるで民間人に誤爆した側の言い分みたい。
大きな戦いを、個人レベルまで落とし込んだような作品。
でも、完全に対立するようになったパードリックとコルムは、
なんだかすっきりとしているように見えるのが不思議。
まるで、この狭い世界の中で本当に正しい関係性を見つけたような、
これでいいんだというような納得した表情が印象的でした。
結局、すごく単純な言い方をすると、
「とても人騒がせな親友同士の仲違い」だった、っていうのも呆れて笑ってしまいますね。
しかし、この映画の中でブレンダン・グリーソンがフィドルで聞かせるアイルランド音楽
(グリーソン自身が作曲し演奏している)は素晴らしいし、
とにかく荒涼としたアイルランドの風景は圧倒的な美しさです。
その美しさに引き寄せられた何も知らない観客が呆気にとられるところを想像するのも
この映画の面白さかもしれない…(苦笑)
ちなみに。
マーティン・マクドナーの作品は実は20年ほど前にパルコ劇場で
日本版「ピローマン」を見たのが初体験でした。
今感想を読み返してみると「イニシェリン島…」との共通点が多いです。
アカデミー賞にノミネートされた「スリー・ビルボード」は
もちろんお気に入りの映画の一つ。
これも途中まで胸○ソ悪いながらも、最後は意外な爽快感を残す作品でしたね。
「スリー・ビルボード」について今日のうちに思ったことを綴っておく。 https://t.co/VEicOKJBJJ
— ミウモ 𝕄𝕖𝕨𝕞𝕠 (@notfspurejam) February 5, 2018
NT Liveの映画館中継で見た「ハングメン」も暗いのに愉快という面白い作品でした。
NT Live「ハングメン」面白かった!特にニ幕が笑わずにいられなかった。もっとシリアスな舞台と思ってた。ほとんどパブのシーンで、脇役もキャラが立ってる。しばらく"Smell my hair!"で思い出し笑いしそう。
— ミウモ 𝕄𝕖𝕨𝕞𝕠 (@notfspurejam) April 15, 2017
これは我らがリース・シェアスミスも出演していたこともあって大事な芝居の一つです。
あと私が「ハングメン」を観なければならなかったのは、リースがシド役のオリジナル・キャストだったからという理由もあったのです!リースはWE公演前に"Inside No.9"の製作のため、アンディ・ナイマンと交替。NT LiveはWE公演の映像。リースだったらだいぶ違ってただろうな。 pic.twitter.com/jU6VkZ5hUK
— ミウモ 𝕄𝕖𝕨𝕞𝕠 (@notfspurejam) April 15, 2017