■4月23日 続き■
実は、渡英する数ヶ月前から、旅行の前だというのに気分が落ち込む事が多く、
どうしたらいいのか分からない状態の日が何度もありました。
仕事もやりがいを感じないし、孤独感が募ってどうしようもなく、
何もしたくない時に、ふと聴きたくなったのがキャロル・キングの"You've Got a Friend"でした。
Carole King, You've got a friend
自分で自分を慰めるような気分でこの曲を聴くと、
少しだけ楽になった気がしたものです。
渡英したら、何かミュージカルを見たいと思っていましたが、
迷うことなく"Beautiful - The Carole King Musical"のチケットを予約しました。
キャロル・キングの半生を描いた、彼女の曲が満載の所謂ジュークボックス・ミュージカルです。
ちょうど直前に、オリヴィエ賞でもウエストエンド版に出演するKatie BraybenとLorna Wantが、
主演女優&助演女優賞を受賞したところでもありました。
Aldwych Theatreで上演されています。
Beautiful - Olivier Awards 2015
物語の冒頭はカーネギー・ホールで"So Far Away"を弾き語るキャロルの語りかけから始まります。
「ここにいるなんて信じられない。私は単なるブルックリンで作曲家を目指す女の子だったのに」
そこから、十代の頃の彼女の家へ時間は遡ります。
母親に反対されながらもブロードウェイの出版社へ自分の曲を売り込みに行くキャロル。
数多くの音楽関連会社が入居するブリル・ビルディングの一室で自作曲を披露すると
会社の設立者であるドン・カーシュナーに気に入られます。
同じ頃、大学でジェリー・ゴフィンと出会い、作曲家と作詞家としてコンビを組むことに。
音楽だけでなく、恋愛の対象としても強い繋がりを持っていた二人は、キャロルの妊娠を機に結婚。
2人で数々の名曲を生み出していくことになります。
恥ずかしながら、シンガーソングライターとしてのキャロル・キングは知っていましたが、
「ロコモーション」が2人の作詞作曲であることを初めて知りました。
それにジェリー・ゴフィンは昨年78歳で亡くなっていたんですね。割と最近だ…。
前半は同時代のヒット曲も登場しますが、
ニール・セダカのトゥーマッチなパフォーマンスが出てくると劇場に笑い声が起こりました。
それと、ガールズグループの振り付けがどれも綺麗でしたねー。
The Shirellesの "Will You Still Love Me Tomorrow"なんて手の振りが特に見事で見とれてしまいました。
Song Clip: Will You Love Me Tomorrow | BEAUTIFUL - THE CAROLE KING MUSICAL
これはブロードウェイ版。
キャロルたちは同じくコンビを組むシンシア・ワイルとバリー・マンと切磋琢磨しながら
それぞれドリフターズに"Up on the Roof"、"On Broadway"というヒット曲を提供。
順風満帆に見えた彼らのキャリアでしたが、
ジェリーが歌手のJanelle Woodsとつき合うために距離を置きたいと告白したことで結婚生活の方は破綻し始めます。
(このJanelleというのは架空の歌手らしいです。)
幕間にバーに行くと、ほとんど年上のおじさまおばさまばかり。
私世代の観客は少なかったです。
(Aldwych Theatreはヴィヴィアン・リーが舞台で「欲望という名の電車」を演じた劇場だったんですね。)
キャロル・キングは、この自分が主人公のミュージカルをなかなか見に行けなかったと
トニー賞で告白していましたが、ミュージカル雰囲気自体は明るいけど
決して明るい出来事ばかりではないから無理もないですね…。
単に恥ずかしかったのかもしれませんが。
演者も本人と全く同じ様に歌うことは出来ないわけですから、
モノマネではなく、芝居の中で違和感を感じさせずに歌うのは難しいでしょうね。
(映像でしか見てませんが)ブロードウェイ版のJessie Muellerは素晴らしかったですし、
ウエストエンド版のKatie Braybenも比べると少しクセはあるけど、聴き応えがあります。
Beautiful - The Carole King Musical opening night trailer
ウエストエンドの初日にもキャロル本人やシンシア&バリー本人が来てたんですね。
第2幕、
キャロルとジェリーはそれでも共作を続けていましたが、
不毛な結婚生活に耐えかねたキャロルが、ジェリーにJanelleとの関係を終わらせるよう説得を決意。
ところが、作詞活動に行き詰まったジェリーは精神衰弱のため倒れてしまいます。
入院したジェリーはキャロルに家へ戻ることと、彼女の希望で郊外に住むことを約束します。
ジェリーの退院後、郊外の新居にシンシアとバリーが訪問。
2人は新曲をキャロルたちに聴かせます。
しかし、彼らの曲を聞き、同じように曲を作れないことを嘆いたジェリーは家を出て、街へ向かってしまいます。
キャロルが彼の後を追い、シンシアたちから聞いた、彼と一緒にいたのを見たという女性歌手の部屋を訪れると、
そこにはシャツ一枚で寛いだ姿の元気そうなジェリーが出てくるのでした…。
ジェリーとの別れを決意したキャロルは、LAに移り住むことを決意。
ドン・カーシュナーやシンシアとバリーに、別れの挨拶として"You've Got a Friend"を歌います。
その後の彼女は私も知る通り「つづれおり」を発表し、
1971年にはカーネギー・ホールでのコンサートを成功されるわけですが、
「つづれおり」の曲が歌われ始めると、客席のおじさまたちがあちらこちらで足踏みを始めて、
女性よりも男性の方がノリノリなのが見ていて意外でした。
カーテンコールで"I Feel the Earth Move"が流れ始めると、
観客は一斉に席を立ち、手拍子を入れながら一緒に熱唱。
こういう時に音楽の力強さを感じます。
トニー賞とオリヴィエ賞以外に何も予習せずに見に行きましたが、
英語も思ったよりは聞き取り出来たし、分かりやすいストーリーだったので助かりました。
今まであまりにキャロル・キングのことを何も知らなかったことに気付きました。
才能溢れる人でも、私生活では苦しんだり、胸を痛めたりするものですよね。
元気になるために見に行ったつもりが、妙にしんみりしてしまう部分もあり、
音楽の良さにただただ喜びを感じる所もあり。
華やかなコーラス・グループへ提供した曲に比べると、シンガーとしての彼女の曲は、とても内省的です。
だからこそ、辛くなった時に寄り添うように心に響くのかもしれません。
時には静かに、時には足踏みや手拍子に合わせて。
この後、帰国の飛行機の中でも、「つづれおり」を聴きながら帰りました。
今でも悲しい時には、"You've Got a Friend"が欠かせません。たぶん、これから先も。
次回、グリニッジを歩く、の巻。
実は、渡英する数ヶ月前から、旅行の前だというのに気分が落ち込む事が多く、
どうしたらいいのか分からない状態の日が何度もありました。
仕事もやりがいを感じないし、孤独感が募ってどうしようもなく、
何もしたくない時に、ふと聴きたくなったのがキャロル・キングの"You've Got a Friend"でした。
Carole King, You've got a friend
自分で自分を慰めるような気分でこの曲を聴くと、
少しだけ楽になった気がしたものです。
渡英したら、何かミュージカルを見たいと思っていましたが、
迷うことなく"Beautiful - The Carole King Musical"のチケットを予約しました。
キャロル・キングの半生を描いた、彼女の曲が満載の所謂ジュークボックス・ミュージカルです。
ちょうど直前に、オリヴィエ賞でもウエストエンド版に出演するKatie BraybenとLorna Wantが、
主演女優&助演女優賞を受賞したところでもありました。
Aldwych Theatreで上演されています。
Beautiful - Olivier Awards 2015
物語の冒頭はカーネギー・ホールで"So Far Away"を弾き語るキャロルの語りかけから始まります。
「ここにいるなんて信じられない。私は単なるブルックリンで作曲家を目指す女の子だったのに」
そこから、十代の頃の彼女の家へ時間は遡ります。
母親に反対されながらもブロードウェイの出版社へ自分の曲を売り込みに行くキャロル。
数多くの音楽関連会社が入居するブリル・ビルディングの一室で自作曲を披露すると
会社の設立者であるドン・カーシュナーに気に入られます。
同じ頃、大学でジェリー・ゴフィンと出会い、作曲家と作詞家としてコンビを組むことに。
音楽だけでなく、恋愛の対象としても強い繋がりを持っていた二人は、キャロルの妊娠を機に結婚。
2人で数々の名曲を生み出していくことになります。
恥ずかしながら、シンガーソングライターとしてのキャロル・キングは知っていましたが、
「ロコモーション」が2人の作詞作曲であることを初めて知りました。
それにジェリー・ゴフィンは昨年78歳で亡くなっていたんですね。割と最近だ…。
前半は同時代のヒット曲も登場しますが、
ニール・セダカのトゥーマッチなパフォーマンスが出てくると劇場に笑い声が起こりました。
それと、ガールズグループの振り付けがどれも綺麗でしたねー。
The Shirellesの "Will You Still Love Me Tomorrow"なんて手の振りが特に見事で見とれてしまいました。
Song Clip: Will You Love Me Tomorrow | BEAUTIFUL - THE CAROLE KING MUSICAL
これはブロードウェイ版。
キャロルたちは同じくコンビを組むシンシア・ワイルとバリー・マンと切磋琢磨しながら
それぞれドリフターズに"Up on the Roof"、"On Broadway"というヒット曲を提供。
順風満帆に見えた彼らのキャリアでしたが、
ジェリーが歌手のJanelle Woodsとつき合うために距離を置きたいと告白したことで結婚生活の方は破綻し始めます。
(このJanelleというのは架空の歌手らしいです。)
幕間にバーに行くと、ほとんど年上のおじさまおばさまばかり。
私世代の観客は少なかったです。
(Aldwych Theatreはヴィヴィアン・リーが舞台で「欲望という名の電車」を演じた劇場だったんですね。)
キャロル・キングは、この自分が主人公のミュージカルをなかなか見に行けなかったと
トニー賞で告白していましたが、ミュージカル雰囲気自体は明るいけど
決して明るい出来事ばかりではないから無理もないですね…。
単に恥ずかしかったのかもしれませんが。
演者も本人と全く同じ様に歌うことは出来ないわけですから、
モノマネではなく、芝居の中で違和感を感じさせずに歌うのは難しいでしょうね。
(映像でしか見てませんが)ブロードウェイ版のJessie Muellerは素晴らしかったですし、
ウエストエンド版のKatie Braybenも比べると少しクセはあるけど、聴き応えがあります。
Beautiful - The Carole King Musical opening night trailer
ウエストエンドの初日にもキャロル本人やシンシア&バリー本人が来てたんですね。
第2幕、
キャロルとジェリーはそれでも共作を続けていましたが、
不毛な結婚生活に耐えかねたキャロルが、ジェリーにJanelleとの関係を終わらせるよう説得を決意。
ところが、作詞活動に行き詰まったジェリーは精神衰弱のため倒れてしまいます。
入院したジェリーはキャロルに家へ戻ることと、彼女の希望で郊外に住むことを約束します。
ジェリーの退院後、郊外の新居にシンシアとバリーが訪問。
2人は新曲をキャロルたちに聴かせます。
しかし、彼らの曲を聞き、同じように曲を作れないことを嘆いたジェリーは家を出て、街へ向かってしまいます。
キャロルが彼の後を追い、シンシアたちから聞いた、彼と一緒にいたのを見たという女性歌手の部屋を訪れると、
そこにはシャツ一枚で寛いだ姿の元気そうなジェリーが出てくるのでした…。
ジェリーとの別れを決意したキャロルは、LAに移り住むことを決意。
ドン・カーシュナーやシンシアとバリーに、別れの挨拶として"You've Got a Friend"を歌います。
その後の彼女は私も知る通り「つづれおり」を発表し、
1971年にはカーネギー・ホールでのコンサートを成功されるわけですが、
「つづれおり」の曲が歌われ始めると、客席のおじさまたちがあちらこちらで足踏みを始めて、
女性よりも男性の方がノリノリなのが見ていて意外でした。
カーテンコールで"I Feel the Earth Move"が流れ始めると、
観客は一斉に席を立ち、手拍子を入れながら一緒に熱唱。
こういう時に音楽の力強さを感じます。
トニー賞とオリヴィエ賞以外に何も予習せずに見に行きましたが、
英語も思ったよりは聞き取り出来たし、分かりやすいストーリーだったので助かりました。
今まであまりにキャロル・キングのことを何も知らなかったことに気付きました。
才能溢れる人でも、私生活では苦しんだり、胸を痛めたりするものですよね。
元気になるために見に行ったつもりが、妙にしんみりしてしまう部分もあり、
音楽の良さにただただ喜びを感じる所もあり。
華やかなコーラス・グループへ提供した曲に比べると、シンガーとしての彼女の曲は、とても内省的です。
だからこそ、辛くなった時に寄り添うように心に響くのかもしれません。
時には静かに、時には足踏みや手拍子に合わせて。
この後、帰国の飛行機の中でも、「つづれおり」を聴きながら帰りました。
今でも悲しい時には、"You've Got a Friend"が欠かせません。たぶん、これから先も。
次回、グリニッジを歩く、の巻。