教育テレビで放送しているアマチュア裁縫コンテスト番組「ソーイング・ビー」"The Great British Sewing Bee"。
子供の頃から裁縫が苦手だった私ですが、毎週録画して欠かさず見ています。
コンテストの会場となっているイーストロンドンの風景が懐かしいことに加えて、
参加者がライバル同士であるにも関わらず、お互いを助け合い友情を育みながら、
それぞれのクリエイティヴィティを発揮し、さらに上達していく姿がとても素敵なのです。
BBCでは現在第6シリーズまで放送されていますが、
日本では1話(60分)を2回に分けて30分番組として放送していて、
NHK教育ではBBCの第1・2シリーズを「ソーイング・ビー」、
第3・4シリーズを「ソーイング・ビー2」といった感じで、2シリーズを1シリーズとして放送しています。
(でもサブスク配信だとBBCと同じになっているのでちょっとややこしい。)
NHK教育で放送されている「ソーイング・ビー3」(BBCのS5)からは
クローディア・ウィンクルマンからプレゼンターが交代し、
スタンダップ・コメディアンのジョー・ライセットが司会進行を務めています。
ソーイング・ビー(字幕版)
(ジョーのシーズンは現在まだ見放題配信されてません。)
審査員とのお茶目なやりとりや参加者を手助けしたりする新司会者ジョーにとても好感が持てるのですが、
留学中は番組を見ていなかったせいか、コメディ好きのくせに彼のことはあまり知りませんでした。
見かけてはいても名前まで覚えていなかったのかも。
そして、2022年に彼が全英ツアーを開催するというニュースを見て、
(そういえばジョーって他にどんな番組をやってるんだろ?)
と興味を持ち、動画でチェックするように。
#ソーイング・ビー ファンにはお馴染みのジョー・ライセットが来年全60公演の全英ツアーを開催。
— ミウモ 𝕄𝕖𝕨𝕞𝕠🌈 (@notfspurejam) June 15, 2021
記事で知ったけど、彼はC4で放送されてるリチャード・アイオアディの旅番組”Travel Man”のホストを引き継ぐ予定なんだね!! 楽しみ。 https://t.co/3ee9cBlbIr
彼の動画をチェックしていくと、コメント欄に「彼ってヒューゴ・ボスだよね?」という投稿を頻繁に見かけます。
ヒューゴ・ボスというと、ドイツのファッション・ブランドのことですが、
どうもジョーは一時期この「ヒューゴ・ボス」を名乗っていたらしい。
その理由は、彼が司会を務めるチャンネル4の番組"Joe Lycett's Got Your Back"を見るとわかります。
⬇️S2の予告編⬇️
TRAILER | Joe Lycett's Got Your Back | Starts 10th April 2020
"Joe Lycett's Got Your Back"は、2019年4月から始まった、
ジョーが企業や詐欺師に騙された視聴者の権利のために体当たりで戦う番組。
タイトルを日本語にすると「ジョー・ライセットに任せとけ!」って感じ?
ジョーがなぜ「ヒューゴ・ボス」を名乗っていたかというと、
前述のファッション・ブランドのヒューゴ・ボスが、
「ボス」という言葉を使った商品を扱う中小企業宛に著作権侵害として停止命令を出し、
ブランド構築に励む独立企業の努力を妨げているため。
番組ではその例として醸造所のボス・ブルーイングが
商品名の変更を余儀なくされ、協議に約£25,000掛かったという一例を紹介しています。
日本でも缶コーヒーのBOSSが消費者プレゼント用の「ボスジャン」のデザインを巡って訴えられるということがありました。
こちらは中小企業ではないけどね。
「どうやらヒューゴ・ボスは"ボス"を名乗る他人が大嫌いらしい…」
そこで、ジョーは自分の名前を「ヒューゴ・ボス」と法的に改名。
(英国では法的な証書"deed poll"で簡単に改名が出来るらしい。)
It's clear that @HUGOBOSS HATES people using their name. Unfortunately for them this week I legally changed my name by deed poll and I am now officially known as Hugo Boss. All future statements from me are not from Joe Lycett but from Hugo Boss. Enjoy. (2/2) pic.twitter.com/IlDoCrfmaO
— Joe Lycett (@joelycett) March 1, 2020
ツイッターでも「ヒューゴ・ボス」として投稿を始めました。
Hugo Boss did not historically manufacture uniforms for the Nazis. Sorry, THIS Hugo Boss did not historically manufacture uniforms for the Nazis.
— Joe Lycett (@joelycett) March 1, 2020
『ヒューゴ・ボスは歴史上ナチスの制服を製造してません。
違った、このヒューゴ・ボスは歴史上ナチスの制服を製造してません』
※ヒューゴ・ボスは実際にナチスの制服を製造していたらしい。
この件は、日本語の記事も出ています。
ヒューゴ・ボス側は懐の深さを見せようとしたのか、
ジョーを「喜んでヒューゴ・ボス・ファミリーに迎え入れる」と声明を出しますが、
これに対してヒューゴakaジョーは
「僕の家族は罪のないウェールズのビール会社に何万ポンドも使わせないけどね!
…トムおじさんは昔やったけど」
さらにヒューゴakaジョーは、ヒューゴ・ボスが中小企業に送りつけたような
停止通告書の文言を貼り付けたサポートバンデージ(手のサポーター)"La Cease En Desiste"を制作。
(「停止通告書」をフランス語?っぽくアレンジした商品名。
商品化としてサポーターを選んだのはヒューゴ・ボスが商標権を持っていないため。)
その発売を記念したパーティーを、
「ヒューゴ・ボスが僕の名前を使っているので停止通告書"cease and desist"を発表するために来た」
とリージェント・ストリートにあるヒューゴ・ボスの旗艦店前で行っています。
Joe Lycett Changes NAME to Hugo Boss?? | Joe Lycett's Got Your Back
ジョーがヒューゴを名乗っていたのは実質2ヶ月程度ですが、
動画で紹介されているように、世界中のニュースに取り上げられたことで、
ヒューゴ・ボスがどんな会社なのが広く伝わったのは大きな成果ではないでしょうか。
ジョーの奮闘は、他にもこんなものがあります。
#ソーイング・ビー 司会のジョーの番組“…Got Your Back”をちまちま見てる。
— ミウモ 𝕄𝕖𝕨𝕞𝕠🌈 (@notfspurejam) June 16, 2021
運送会社が発送先が明確な商品を紛失扱いでオークションに回してるって酷い話。
それを番組で購入しジョーが注文した人に届け、運送会社に乗り込む。
コメント欄がまた酷い体験談ばかり😅https://t.co/vbJuXbukcE
また、詐欺で£8,000を失ったのに、銀行が負担してくれないと悲しむ女の子のために
NatWest(ナショナルウエストミンスター銀行)本社へ乗り込み、
リアーナの“Bitch Better Have My Money”の替え歌で対抗。返金対応を勝ち取ります。
Joe Lycett Impersonates RBS Boss to Get £8,000 Back to Scammed Customer | Joe Lycett's Got Your Back
スタンステッド空港のスタバの駐車場に車を停め☕️を買った後、すぐ隣り合っているマックに入ると、(実は同じ管理会社なのに2つの駐車場に分かれていて)駐車場外の施設を利用した罰金で£100の罰金が課せられる問題。
— ミウモ 𝕄𝕖𝕨𝕞𝕠🌈 (@notfspurejam) June 18, 2021
ジョーは監視カメラを欺き罰金を逃れる方法を紹介。https://t.co/SiOohOpTvj
またある時は、返信する必要のない詐欺メールにあえて面白メールを送り返す。
口座番号を訊かれたらエリック・クラプトンの歌詞をバイナリコードにして送り返したり、
病人を装った相手が添付してきた画像に自分の顔を合成して自分も病気だから助けてと送り返したり。
こういう、詐欺メールに返信するネタ、TEDトークにもあったなー。
Joe Lycett Deals with $3,700,000 SCAM Email | Joe Lycett's Got Your Back | Tonight 8.30pm
番組のクリップを見ていくと、いかに金儲けだけが目当てで消費者をぞんざいに扱う
いい加減な商売をしている会社や詐欺師が多いことかよくわかります。
テレビ番組だからこそ、企業も渋々動き出すのかもしれませんが、
取り上げられているような問題が自分にも起こりうるかもしれないという、注意喚起にもなる番組ですね。
とにかく、視聴者の代わりにジョーが物怖じせず、大胆に、
かつユーモアを忘れずに企業に立ち向かってくれるのがとても頼もしく、
庶民が我慢を強いられる昨今では味わえない爽快感があって、見始めると止まらないのです。
コメント欄で見かけた、
「邪悪なパワーを善良なことに使っている」って一言に納得。
この力を単なるいたずらとして使われたら大変だ(笑)。
ちなみに、ジョーはバイセクシャル(もしくはパンセクシャル)で、
ゲイカルチャー雑誌のAttitude Magazineで2015年のセクシーな男性トップ10に選ばれています。
ダニエル・クレイグよりも上位だったとか!
Proof I am world's 10th hottest man & big interview in this month's @AttitudeMag. In all good non-homophobic shops. pic.twitter.com/xK0mMGZVtn
— Joe Lycett (@joelycett) July 24, 2015
今後も消費者のセクシーな味方であるジョーを "...Got Your Back"だけでなく、
スタンダップのネタやクイズ番組のパネラーとして出演したエピソードも遡っていくつもりです。
もちろんこれからの活躍っぷりも楽しみ!
⬇️⬇️⬇️あわせてこちらもどうぞ⬇️⬇️⬇️(2020.07.03)