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ジョー・ライセットにおまかせ!〜消費者のための痛快コメディ "Joe Lycett's Got Your Back"

2021-06-20 | TV/その他

教育テレビで放送しているアマチュア裁縫コンテスト番組ソーイング・ビー」"The Great British Sewing Bee"
子供の頃から裁縫が苦手だった私ですが、毎週録画して欠かさず見ています。

コンテストの会場となっているイーストロンドンの風景が懐かしいことに加えて、
参加者がライバル同士であるにも関わらず、お互いを助け合い友情を育みながら、
それぞれのクリエイティヴィティを発揮し、さらに上達していく姿がとても素敵なのです。

BBCでは現在第6シリーズまで放送されていますが、
日本では1話(60分)を2回に分けて30分番組として放送していて、
NHK教育ではBBCの第1・2シリーズを「ソーイング・ビー」
第3・4シリーズを「ソーイング・ビー2」といった感じで、2シリーズを1シリーズとして放送しています。
(でもサブスク配信だとBBCと同じになっているのでちょっとややこしい。)

NHK教育で放送されている「ソーイング・ビー3」(BBCのS5)からは
クローディア・ウィンクルマンからプレゼンターが交代し、
スタンダップ・コメディアンのジョー・ライセットが司会進行を務めています。

ソーイング・ビー(字幕版)
(ジョーのシーズンは現在まだ見放題配信されてません。)

審査員とのお茶目なやりとりや参加者を手助けしたりする新司会者ジョーにとても好感が持てるのですが、
留学中は番組を見ていなかったせいか、コメディ好きのくせに彼のことはあまり知りませんでした。
見かけてはいても名前まで覚えていなかったのかも。

そして、2022年に彼が全英ツアーを開催するというニュースを見て、
(そういえばジョーって他にどんな番組をやってるんだろ?)
と興味を持ち、動画でチェックするように。

彼の動画をチェックしていくと、コメント欄に「彼ってヒューゴ・ボスだよね?」という投稿を頻繁に見かけます。
ヒューゴ・ボスというと、ドイツのファッション・ブランドのことですが、
どうもジョーは一時期この「ヒューゴ・ボス」を名乗っていたらしい。
その理由は、彼が司会を務めるチャンネル4の番組"Joe Lycett's Got Your Back"を見るとわかります。

⬇️S2の予告編⬇️
TRAILER | Joe Lycett's Got Your Back | Starts 10th April 2020

"Joe Lycett's Got Your Back"は、2019年4月から始まった、
ジョーが企業や詐欺師に騙された視聴者の権利のために体当たりで戦う番組
タイトルを日本語にすると「ジョー・ライセットに任せとけ!」って感じ?

ジョーがなぜ「ヒューゴ・ボス」を名乗っていたかというと、
前述のファッション・ブランドのヒューゴ・ボスが、
「ボス」という言葉を使った商品を扱う中小企業宛に著作権侵害として停止命令を出し、
ブランド構築に励む独立企業の努力を妨げているため。

番組ではその例として醸造所のボス・ブルーイングが
商品名の変更を余儀なくされ、協議に約£25,000掛かったという一例を紹介しています。
日本でも缶コーヒーのBOSSが消費者プレゼント用の「ボスジャン」のデザインを巡って訴えられるということがありました。
こちらは中小企業ではないけどね。

「どうやらヒューゴ・ボスは"ボス"を名乗る他人が大嫌いらしい…」
そこで、ジョーは自分の名前を「ヒューゴ・ボス」と法的に改名。
(英国では法的な証書"deed poll"で簡単に改名が出来るらしい。)

ツイッターでも「ヒューゴ・ボス」として投稿を始めました。

『ヒューゴ・ボスは歴史上ナチスの制服を製造してません。
 違った、このヒューゴ・ボスは歴史上ナチスの制服を製造してません』

※ヒューゴ・ボスは実際にナチスの制服を製造していたらしい。

この件は、日本語の記事も出ています。

OGPイメージ

英コメディアンが自分の名前を「ヒューゴ・ボス」と改名 ブランドは「歓迎する」と争わず | WWDJAPAN

イギリスのコメディアン、ジョー・ライセット(Joe Lycett)が自身の本名をヒューゴ・ボス(Hugo Boss)と改名したことについて、...

WWDJAPAN

 

ヒューゴ・ボス側は懐の深さを見せようとしたのか、
ジョーを「喜んでヒューゴ・ボス・ファミリーに迎え入れる」と声明を出しますが、
これに対してヒューゴakaジョーは
「僕の家族は罪のないウェールズのビール会社に何万ポンドも使わせないけどね!
 …トムおじさんは昔やったけど」

さらにヒューゴakaジョーは、ヒューゴ・ボスが中小企業に送りつけたような
停止通告書の文言を貼り付けたサポートバンデージ(手のサポーター)"La Cease En Desiste"を制作。
(「停止通告書」をフランス語?っぽくアレンジした商品名。
 商品化としてサポーターを選んだのはヒューゴ・ボスが商標権を持っていないため。)
その発売を記念したパーティーを、
「ヒューゴ・ボスが僕の名前を使っているので停止通告書"cease and desist"を発表するために来た」
とリージェント・ストリートにあるヒューゴ・ボスの旗艦店前で行っています。

Joe Lycett Changes NAME to Hugo Boss?? | Joe Lycett's Got Your Back

ジョーがヒューゴを名乗っていたのは実質2ヶ月程度ですが、
動画で紹介されているように、世界中のニュースに取り上げられたことで、
ヒューゴ・ボスがどんな会社なのが広く伝わったのは大きな成果ではないでしょうか。

ジョーの奮闘は、他にもこんなものがあります。

 

また、詐欺で£8,000を失ったのに、銀行が負担してくれないと悲しむ女の子のために
NatWest(ナショナルウエストミンスター銀行)本社へ乗り込み、
リアーナの“Bitch Better Have My Money”の替え歌で対抗。返金対応を勝ち取ります。

Joe Lycett Impersonates RBS Boss to Get £8,000 Back to Scammed Customer | Joe Lycett's Got Your Back

またある時は、返信する必要のない詐欺メールにあえて面白メールを送り返す
口座番号を訊かれたらエリック・クラプトンの歌詞をバイナリコードにして送り返したり、
病人を装った相手が添付してきた画像に自分の顔を合成して自分も病気だから助けてと送り返したり。
こういう、詐欺メールに返信するネタ、TEDトークにもあったなー。

Joe Lycett Deals with $3,700,000 SCAM Email | Joe Lycett's Got Your Back | Tonight 8.30pm

番組のクリップを見ていくと、いかに金儲けだけが目当てで消費者をぞんざいに扱う
いい加減な商売をしている会社や詐欺師が多いことかよくわかります。
テレビ番組だからこそ、企業も渋々動き出すのかもしれませんが、
取り上げられているような問題が自分にも起こりうるかもしれないという、注意喚起にもなる番組ですね。

とにかく、視聴者の代わりにジョーが物怖じせず、大胆に、
かつユーモアを忘れずに企業に立ち向かってくれるのがとても頼もしく、
庶民が我慢を強いられる昨今では味わえない爽快感があって、見始めると止まらないのです。

コメント欄で見かけた、
「邪悪なパワーを善良なことに使っている」って一言に納得。
この力を単なるいたずらとして使われたら大変だ(笑)。

ちなみに、ジョーはバイセクシャル(もしくはパンセクシャル)で、
ゲイカルチャー雑誌のAttitude Magazineで2015年のセクシーな男性トップ10に選ばれています。
ダニエル・クレイグよりも上位だったとか!

今後も消費者のセクシーな味方であるジョーを "...Got Your Back"だけでなく、
スタンダップのネタやクイズ番組のパネラーとして出演したエピソードも遡っていくつもりです。
もちろんこれからの活躍っぷりも楽しみ!

 

⬇️⬇️⬇️あわせてこちらもどうぞ⬇️⬇️⬇️(2020.07.03)

OGPイメージ

ジョー・ライセット、生放送のトーク番組を突然ボイコット! - だから、ここに来た!

先日、「ソーイング・ビー」の新司会者ジョー・ライセットについて記事を書きました。OGPイメージジョー・ライセットにおまかせ!〜消費者のための...

ジョー・ライセット、生放送のトーク番組を突然ボイコット! - だから、ここに来た!

 

 

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「9から始まる奇妙な物語」第6シリーズ エピソード・リスト【ネタバレ注意】

2021-06-19 | TV/9から始まる奇妙な物語
 
「9から始まる奇妙な物語」(以下IN9) から放送されたばかりの第6シリーズのリストを作りました。
日本語のタイトルは私が勝手につけています。
第4〜5シリーズのリストはまた作っていませんが、
鑑賞したばかりで記憶が新しいところで先に投稿しておこうと思います。

結末に触れる場合はその前にネタバレ注意!と記載しています。
第6シリーズ放送前の関連インタビューやイベントについてはこちらへ。
今回Q&Aは実施されなかったので、ポッドキャストからの小ネタに触れています。
 
今回もおすすめ度合いに合わせて星をつけてみましたが、
もし配信されたら実際に見て、好きな回を見つけてくださいね!
 
↓シリーズ予告編

 

第1話
"Wuthering Heist"「アラシが丘」(10 May 2021) 

あらすじ:
パンタロン(パターソン・ジョセフ)は1200万ポンドのダイヤモンド原石の盗難を計画。
一方で、アジトの倉庫に集まった子分たちはそれぞれの思惑を抱えていた。
スカラムーシュ(リース・シェアスミス)はパンタロンの娘のホレンシア(ローザ・ロブソン)にゾッコンだが、
彼女は別の男性へ恋文を渡すようアルレッキーノ(ケヴィン・ビショップ)に頼む。
その相手と思われるマリオ(ディノ・ケリー)はスカラムーシュに好かれていると勘違い。
その父親のドクター(スティーヴ・ペンバートン)は盗んだダイヤを偽物とすり替えようと企んでいた。
 
オススメ度:
 
ポイント:
仮面喜劇のコメディア・デラルテと強盗を掛け合わせたエピソード。
登場人物のコードネームもコメディア・デラルテのキャラクターから引用されています。
狂言回し役のコロンビーナ(ジェマ・ウィーラン)が「フリーバッグ」のように
第4の壁を破って、視聴者に語りかけたり(彼女曰く「フリーバッグじゃなくてミランダやってるの!」)
登場人物が台本を飛ばしたことを明かしたり、メタな描写が多いのが特徴。
S4のシェイクスピア喜劇風の"Zanzibar"を思い出します。
 
Caught! Scaramouche & Mario. (The brilliant Dino_Kelly).
https://twitter.com/ReeceShearsmith/status/1396545701367238661

 

第2話
"Simon Says"「サイモンの思うがままに」(17 May 2021) 

Simon says watch tonight at 9.30pm on BBCTwo
https://twitter.com/ReeceShearsmith/status/1394251487593779204

あらすじ:
ファンタジー・ドラマ"The Ninth Circle"のショーランナー、
スペンサー・マグワイア(スティーヴ)は、自宅で服や体についた血を拭き取っていた。
そこに、番組のファンを名乗るサイモン(リース)が訪れる。
彼は、スペンサーがナイトクラブで別の番組ファン、ギャビン(ニック・モハメッド)と揉めて
殺害した現場の一部始終を携帯で撮影したと言う。
事故であると警察に証言するとスペンサーに申し出るサイモンだったが、
その代わりに、不評で終わった"The Ninth Circle"を作り直すよう要求してきて…。
 
オススメ度:
 
ポイント:
"Simon Says"は英語圏の子供の遊びの一つで、
一人がサイモン役となり、彼の言う通りに動かないといけないというゲーム。
王様ゲームのような感覚でしょうか。
タイトルの通り、スペンサーはサイモンのいいなりに。
"The Ninth Circle"は最終回が酷評を受けた設定で、
同じく最終回が賛否を呼んだ「ゲーム・オブ・スローンズ」を思わせます。
他にも"The Ninth Circle"やサイモンの言い分のモデルになった作品があるそうですが、
サイモンがキャラクターのシッピングに意見するあたりなど、
「SHERLOCK」も入ってるんじゃないかなーと思ったりして。
ちなみにその「SHERLOCK」でレディ・スモールウッドを演じていた
リンジー・ダンカンがエージェント役でゲスト出演しています。
 
Our brilliant director Guillem Morales getting into position with the equally brilliant nickmohammed filming this weeks episode.
https://twitter.com/ReeceShearsmith/status/1395112580528627714
 
 
 
第3話
"Lip Service"「リップ・サービス」(24 May 2021) 

あらすじ:
薄暗いホテルで一人悲しみにくれるフェリックス(スティーヴ)。
彼が女を連れ込むのではないかとしつこく詮索をしてくる支配人(リース)の訪問にうんざりしつつ、
ある目的のために雇った女性アイリス(シアン・クリフォード)を招き入れる。
実は、彼女は遠くにいる人の話す内容を読み取る「読唇術」の専門家だった。
 
オススメ度:
 
ポイント:
個人的に今期一番好きな回。むしろ全エピソードの中で1位を争うかも。
リースたちも「IN9らしいエピソード」と評しています。
スティーヴいわく、玉ねぎの皮を剥くように
「フェリックスはなんでホテルに泊まってるんだろ?」「アイリスは何しに来たんだろ?」
と視聴者を段階的に引きつける構造を意識したとのこと。
フェリックスとアイリスに親しみを感じ始めたところで訪れるエンディングが衝撃的。
メイクでいつもよりお目ぱっちりしてるスティーヴが可愛い。
「フリーバッグ」の姉クレアことシアン・クロフォードの演技も素晴らしいです。
 

Please vacate all rooms by eleven sirdy.
https://twitter.com/ReeceShearsmith/status/1397225319535423494

 

第4話
"Hurry Up and Wait"「待ち時間」(24 May 2021) 

James is a meek actor with three lines in a new ITV drama. His co star in the scene is Adrian Dunbar, so ... you know, good for the showreel. Tomorrow night - 9.30pm on BBC Two.
https://twitter.com/ReeceShearsmith/status/1398928727069822976

あらすじ:
実話を基にしたITVの刑事ドラマに端役で出演することになったジェームズ(リース)。
出番を待つ間、控え室として使われているトレーラーハウスで、そこに住む三人家族と過ごすことになる。
一家の様子を伺ううちに、ジェームズにドラマの基になった事件と一家に関する疑念が生まれてきて…
 
オススメ度:
 
ポイント:
一般人が住むキャラバン(トレーラー)で出番を待つことは英国のテレビ業界でよくあるそうで、
この一家との会話はリース&スティーヴが過去の撮影で実際に体験したエピソードをもとにしているそう。
元々S3あたりでこのアイディアは出ていたそうですが、
楽屋や賞の選考委員会など、テレビ業界の話が多くなってしまうのを避けて保留していたそう。
人気の刑事ドラマ「ライン・オブ・デューティー」に出演する
エイドリアン・ダンバーが本人役で出演しているのも見どころ。
彼はこの番組への出演を熱望してたそうです。
 

 

第5話
"How Do You Plead?"「どう弁明する?」(7 Jun. 2021) 

あらすじ:
介護士のアーバン(リース)は癇癪を起こした著名な法廷弁護士
ダニエル・ウェブスター(デレク・ジャコビ)の呼び出しを受ける。
アーバンが駆けつけると、ウェブスターは誕生日パーティーの来客を全て追い返していた。
なんとか落ち着いたウェブスターは閉まってある資料を取り出すようアーバンに頼むが、
引き出しには鍵がかかっていて…
 
オススメ度:
 
ポイント:
元ネタは映画「悪魔の金」"The Devil and Daniel Webster"(1941) 。
弁護士の名前をそのまま引用しているため、心当たりがあれば悪魔との取引をテーマにしていることがわかる。
アーバンの名前のモデルは魔女裁判で火あぶりにされたフランスの聖職者Urbain Grandier。
ウェブスター氏を献身的に介護するアーバンは、
リースが座長の付き人を演じた舞台「ドレッサー」を思い出させます。
(以下、ネタバレ注意!)
個人的にはなぜアーバンは善良ではない故に救われたのか?という部分が疑問。
善良な魂だけ肩代わり出来るって契約なのかな?

Urban. Between takes.
https://twitter.com/ReeceShearsmith/status/1402680010595573760



BBC Studios (@bbcstudios) June 7, 2021

 

第6話
"Last Night at the Proms"「プロムスの夜」(14 Jun. 2021) 

あらすじ:
BBCプロムスの最終日。ドーン(サラ・パリッシュ)と夫のミック(スティーヴ)は、毎年恒例のパーティーを開き、
姉妹のペニー(デブラ・ジレット)の家族と共に居間でプロムスを鑑賞する。
渋々参加する夫のブライアン(リース)との仲が冷え切って愛情に飢えているペニーは、
家の外で立ち尽くす男(バムシャッド・アベディ・アミン)を皆に黙って招き入れる。
 
オススメ度:
 
ポイント:
スティーヴはこのエピソードのように父親に呼び出されて一緒にBBCプロムスの最終日を鑑賞していたそう。
演奏される曲の由来や、聴衆の反応の意味などを登場人物が説明してくれるので、
私たちのようにこのコンサートにあまり馴染みのない私たちにも解りやすくなっています。
このエピソードの脚本が書かれたのはBrexit論争も終盤の2019年で、
愛国主義者が集まる中によそ者が入ってきたらどうなるか?がテーマ。
リハーサルが行われた2020年3月中旬頃はロンドンが不穏な雰囲気になりつつあり、
その頃のスティーヴは、リースがハンドジェルを使っている意味がわからなかったらしい(笑)。
COVID-19の影響で中止された撮影は10ヶ月後に再開されましたが、
ドーン役のサラは再開前とお尻の大きさが同じが気になってたとか(笑)。
ちなみに、キッチンに行ったドーンたちが戻ってきて、
ペニーが男に縋り付く場面からが再開後のシーンのようです。

 

その他番組の記事はこちら
リース&スティーヴ関連の投稿は「リーグ・オブ・ジェントルマン」をご参照ください。

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「9から始まる奇妙な物語」英国アカデミーTVコメディ賞受賞!!

2021-06-07 | TV/9から始まる奇妙な物語

2021年6月6日に行われた英国アカデミーTV賞授賞式
9から始まる奇妙な物語(以下IN9)スクリプテッド・コメディ賞を受賞しました!!
やったー!!

2019年にクリエイターのスティーヴ・ペンバートンがコメディ男優賞を受賞しましたが、
今回は番組全体としての受賞です。
(同じくリース・シェアスミスも今回男優賞にノミネートされていましたが、惜しくも受賞は逃しました。)

※留学中の2019年に見に行った、レッドカーペットの様子↓↓

2014年に番組が始まってしばらくはノミネートもされず、
「こんなに面白いのに何でBAFTAも誰も気づかないの!?」とやきもきしまくっていましたが、
ここ数年でやっと時代が追いついてきた! 遅い! 遅すぎ!

でもIN9は新シリーズが製作されるたびに過去のシリーズをさらに上回った
素晴らしいエピソードを生み出しているので、
放送開始当時よりも現在の作品で評価されているのは納得出来ます。
日本でも早くS3以降が配信されるといいんだけどなー。

ちなみにIN9は過去に、技術部門のTV Craft賞でも
2019年にマルチカメラ演出賞(Barbara Wiltshire "Dead Line"演出)、
2018年にコメディ脚本賞を受賞しています。

 

↓↓受賞コメントの動画はこちら↓↓

Inside No. 9 Wins Scripted Comedy | BAFTA TV Awards 2021

新型コロナウイルス感染防止のため、リースが会場のテレビジョン・センターに出席し、
スティーヴ、製作のアダム・タンディ、演出のMatt LipseyGuillem MoralesはZoomでの参加。
会場もソーシャルディスタンシングを確保してます。
Zoomでコメントするスティーヴが「最低なGoggleboxのエピソードみたい」って言ってますね(笑)。
("Gogglebox"は英国各地の家族やグループがテレビを見て実況する姿を映すチャンネル4のリアリティ番組)

 

↓↓レッドカーペットでのリースのインタビュー↓↓

Reece Shearsmith Chats Inside No.9 on the BAFTA Red Carpet | BAFTA TV Awards 2021

2019年の時を思うとレッドカーペットもちょっとばかり寂しいですが、仕方ないですね。
リースは受賞したら人が来る度にトロフィーの顔をマスクのようにかぶって過ごすらしいです(笑)。

 

↓↓オンラインで行われた記者会見↓↓

Scripted Comedy Winner Inside No. 9's Press Conference Interview | BAFTA TV Awards 2021

よく見ると、各エピソードに登場する野うさぎ像もスティーヴたちのパーティーに参加してますね!
閉鎖空間を舞台にしている設定上、屋内での撮影が多いIN9ですが、
ZoomやロックダウンといったCOVID-19の影響を受けた生活を思い出させないように脚本を書いていたようです。
実際、現在(2021年6月)放送中の第6シリーズも、COVID-19に関連する設定は全く出てきていません。

 

↓↓会場でのインタビュー↓↓

Reece Shearsmith on his personal 'number 9s' after Inside No. 9 wins Scripted Comedy | Virgin Media

自粛生活で皆が映像作品を楽しんでいる昨今、
リースは「Your Honor/追い詰められた判事」「ザ・テラー」
そして今回コメディ賞を争った「ゴースト~ボタン・ハウスの幽霊たち」
楽しんでいる作品として挙げています。

リースたちと親しく、共演も多い「ゴースト」のメンツも、ライバルの受賞をお祝いしてます。
次は「ゴースト」の番だといいな!

 

ところでZoomで参加していたスティーヴの衣装ですが、
本物のタキシードではなく、タキシード柄にプリントされたTシャツなのです。

これはS5のエピソード"The Misdirection"に出てくる
ミステリアスな服装にこだわるマジシャンのネヴィルと、その妻の台詞、

「タキシード柄にプリントされたTシャツ着てよ」
「ロドニー・ビューズか? やだね!」

にちなんでなのですが、
元々はリーグ・オブ・ジェントルマンのツアー中に、70年代のクイズ番組"Who Dunnit?"を見てたら、
俳優のロドニー・ビューズがこのタキシードプリントのTシャツを着て出ていて、
「これ覚えてるぞ!」とメンバー同士で盛り上がったのがきっかけだったそうな。

スティーヴはリースを笑わせるためにこのTシャツを用意したみたい。
通常の授賞式だったら着られないけど、Zoom参加にはぴったりの衣装ですね!!(笑)

仕事場でお互いを驚かせるために毎回死んだふりをしたり、衣装で笑わせようとしたり、
基本的には観客より先にまず相方を喜ばせようとしてるのが本当に微笑ましい。

そして無事スティーヴと合流したリース。

2人とも本当におめでとう!!(涙)
乗りに乗ってるIN9が、これからも出来うる限り長く続いてくれることを願うばかりです!

「9から始まる奇妙な物語」エピソードリストは以下の記事、

OGPイメージ

「9から始まる奇妙な物語」第1シリーズ エピソード・リスト【クリエイターによるQ&Aつき】 - だから、ここに来た!

「9から始まる奇妙な物語」見放題配信を記念し、各回を振り返りながら、放送当時にツイッター上で行われた、クリエイターのリース&スティーヴによる...

「9から始まる奇妙な物語」第1シリーズ エピソード・リスト【クリエイターによるQ&Aつき】 - だから、ここに来た!

 

第6シリーズの最新ニュースは以下の記事を御覧ください!

OGPイメージ

「9から始まる奇妙な物語」第6シリーズ最新情報 - だから、ここに来た!

※この記事は新シリーズのタイトルや内容について触れています。ネタバレが気になる方はご注意ください。BBCTWOにて2021年放送の「9から始...

「9から始まる奇妙な物語」第6シリーズ最新情報 - だから、ここに来た!

 

 

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【ネタバレ注意】映画「ファーザー」【実はサスペンススリラー】

2021-06-02 | TV/マーク・ゲイティス

●6月1日●

ついに映画「ファーザー」を劇場で見てきました。

日本公開は5月14日ですが、新型コロナウィルス感染拡大による緊急事態宣言の影響で、
私の近くの映画館で見るには6月まで待たなければなりませんでした。

OGPイメージ

映画『ファーザー』オフィシャルサイト

老いによる思い出の喪失と、親子の揺れる絆を描く かつてない映像体験で心を揺さぶる今年最高の感動作

映画『ファーザー』オフィシャルサイト

 

私が敬愛するマーク・ゲイティスの出演作として
"The Father"の製作について知ったのは2年前の2019年5月。
※日本公開までの流れは以下にまとめてあります。

OGPイメージ

映画「ファーザー」"The Father"関連ツイートまとめ

マークが出演しているアンソニー・ホプキンス、オリヴィア・コールマン、オリヴィア・ウィリアムズ、イモージェン・プーツ、ルーファス・シーウェル主...

Togetter

 

名優アンソニー・ホプキンスと「女王陛下のお気に入り」の記憶も新しい
オリヴィア・コールマンの共演というのも心惹かれましたが、
原作者で本作の監督・脚本も担当している劇作家フローリアン・ゼレールの作品を
舞台で見たことがなかったので、その点についても楽しみにしていました。

 

一人暮らしをする父親アンソニー(アンソニー・ホプキンス)が介護士に暴言を吐きクビにしたという連絡を受けて
駆けつける娘のアン(オリヴィア・コールマン)。
アンは恋人とともにフランスに引っ越すため、
会いに来られない間の面倒を見てもらうための介護士を受け入れるよう父を説得するが、
アンソニーは腕時計を盗まれるのではないかと警戒して、なかなか聞き入れない。

翌日、訪問者の音に気付いたアンソニーがキッチンからリビングルームに様子を見に行くと、
見知らぬ男(マーク・ゲイティス)が椅子に座っている。
アンの夫のポールだと名乗る彼は、アンソニーの住むフラットに一緒に住んでいて、
アンがフランスには引っ越すことはないと言う。
娘は以前の夫とは離婚したはずだと困惑するアンソニー。
そこに、男が連絡をしたアンが帰宅するが、
それは娘とは全く別人の女性(オリヴィア・ウィリアムズ)で…

 

80代の認知症を患う父親と娘の話を知って、
高齢の父を持つ身としては、鑑賞したらしばらくは立ち直れないほどのダメージを受けるのではないかと、
見る前からずっと心配していましたが、意外にもそれほど痛手を受けずに見終えることができました。
父親の体験する混乱した世界に圧倒されて、娘の視点で見る余裕はあまりなかったように思います。

公開前からストーリーが記憶が曖昧になっている父親の視点で描かれていることは
テレビやラジオでの宣伝でも頻繁に紹介されていたので、
どういった構造の映画なのかはある程度予想出来ていました。
また公式ページのキャスト紹介欄を見て、
マーク・ゲイティスオリヴィア・ウィリアムズの正体も分かってしまったので、
(このあたりの設定は「ゴースト・ストーリーズ 英国幽霊奇談」も思い出しました。)
物語がどの方向に向かうのかも理解出来ていましたが、
それでも、別の人間が同じセリフを話したり、同じシーンが繰り返されたりと、
意識の混乱を表す描写が巧みで、完全に引き込まれました。
後で時系列を整理してシーンの配置を確認してみたいな…。

この作品でアカデミー賞主演男優賞を受賞したアンソニー・ホプキンスはいうまでもなく名演を披露していますが、
記憶を履き違えている父アンソニーに対して戸惑い、
それを隠して明るく振舞おうとする周囲の人たちを演じるキャスト全員が達者。
アンのパートナーのポール(本物)を演じるルーファス・シーウェルの、
アンソニーの態度を受け入れきれないが故の苛立ちや、
新しい介護士ローラとして登場するイモージェン・プーツ
アンソニーに暴言を吐かれても明るく接する健気さ。
どの演技も受け止めるしかない混乱した存在の老人を前にした人たちの反応として真実味があり、
父の目線で見ている観客として切なく滲んで見えます。
アンソニーも彼らの不安げな表情が分かるからこそ、
理解できていないことも「そうだった」と分かった気にさせてしまうのでしょう。

思ったほど感情移入してダメージを受けなかった理由は、
父アンソニーのお茶目な人柄に意外と笑ってしまったためでもあります。
アンの夫を名乗る男に、娘がフランス人の男と出会ったと明かしてしまったと知って、
「しまった、うっかり浮気を教えちゃった!」とおどけるシーンや、
介護士のローラに元タップダンサーだったと言ってダンスを披露したり、紅茶で薬を飲んで見せるシーン。

THE FATHER | "Tap Dancer" Official Clip

これらを見ていると、アンソニーが元は自身が言うようにとても知的でチャーミングな人だったことがわかります。
はじめから頑固で癖のある人物だったわけではなく、
だんだんと整理出来なくなっていく記憶への苛立ちがそうさせるのでしょうね。

 

■■■ここからラストシーンに触れるネタバレ感想■■■

 

 

 

↓↓↓↓↓

 

 

病院で自分が誰なのか問いかけながら、アンソニーが子供に後退していくシーンは、
以前ラジオで聞いた、病院で入院している年老いた女性が、
体の痛みから「お母さん、お母さん」と助けを呼んでいたという
聴取者の投稿を思い出したりしました。

親を持つ娘の立場としてや介護する立場の人間として、客観視して見るのではなく、
アンソニー・ホプキンスが語っていたように、
「いずれ自分もこうなるのだ」と思い知らされる作品なのだと気付きます。

アンソニーの最後のセリフ、
'I feel as if I’m losing all my leaves, one after another.'
が人生の晩秋を連想させ、なんとも切なくなります。

ポールがアンソニーに、疲れたアンには「太陽が必要」
'Needs a bit of sun.'
と言うセリフがありましたが、
最後に看護士がアンソニーを慰めながら散歩に出ようと語りかける際に、
'
The sun’s out.'
と言っていたのが、何か暗示的に感じられました。
(太陽がセリフに使われているのかこの二箇所のみ。)
アンソニーは最後に娘の不在と自分の任地に問題があると自覚して泣くわけですが、
それは本来の自分の姿を自覚するという意味で、
太陽はその象徴のように使われているのかな?と思ったり。

 

ところで個人的に疑問に思っている箇所がいくつかありました。

①介護士は誰だったのか?

もちろん、その姿はアンの妹でアンソニーが可愛がっていたルーシーのものだとわかるし、
キャサリン(オリヴィア・ウィリアムズ)が後半に介護士として登場するけど、
じゃあローラって誰? ただこの作品に登場してこないだけで存在はしてたのか?
アンソニーの願望としてルーシーの姿をした介護士が現れたのか?

②アンソニーをビンタしたのは誰なのか?

男(マーク・ゲイティス)がポール(ルーファス・シーウェル)と同じセリフで問い詰めて
アンソニーにビンタをするシーン。
あれは看護士のビルなのか、それともポールなのか?
ポールだとしたらちょっとやりすぎだし
(しかしその後のポールの動揺ぶりを見ると本当にやってはなさそう…)
ビルだとしたら病院で何があったのかと想像してしまう…
(あとマークが本当にアンソニー・ホプキンスをペチペチやったのかも気になる。)

③あの家は誰のものなのか?

アンは翻訳家の設定なので、あのフラットにある本棚を見るとアンの住む家で間違いないと思う、
が、もしかしたらアンソニーの元の家のイメージも混ざっているのかもしれない。
(Ex. 父の家にあると言われてたルーシーの絵についてなど)

このへんが気になるところなので、インタビューや脚本を読んで確認しておこうと思います。

 

最後に、単なるマーク・ゲイティスファンとしての見どころですが、
男/看護士ビルはこの作品がスリラーとも呼ばれる要素を一手に引き受けていましたね。
初めの登場シーンにビンタのシーン、そして最後の看護士としての登場シーン。
「この人何なの? 一体誰なの?」を最後まで引っ張り続けた張本人。
ちょっと「SHERLOCK」の「ピンク色の研究」に出てきたマイクロフトのような得体の知れなさ。
なんて絶妙なキャスティングなんだ!!と興奮してしまいました。

ポールの苛立ちの部分を具現化して登場する、イヤーなイメージがついたところで、
最後に「問題ない?」と親しげにウインクして出てきた時には、
安心するやら胸撃ち抜かれるやらで、
そういう意味でも、認知症を取り上げた映画を受け止めきれるか不安だった私を救ってくれた瞬間でした。
ただひたすらファンとして歓喜(笑)。

でもあんな気さくな雰囲気醸し出していてももしかしたらビンタしてたのかもしれないと思うと、
それはそれで余計怖い…。

ちなみに、劇場で見ている時に、後ろにいる観客が、
マークやオリヴィア・ウィリアムズが唐突に登場するたびに
「えぇ…?(怯)」「んんっ?」と思わず声を漏らしていて、
久しぶりの劇場鑑賞を臨場感たっぷりに?より楽しめました。

 


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