田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

魔闘学園 麻屋与志夫

2008-09-26 04:39:15 | Weblog
11

 加蘇地区のトモコから連絡。
 バイクの集団が久我にむかっていったそうよ。
 ケイコが元気をだして、みんなに報告する。

 久我のミホからよ。車もはいらないような山道でバイクの音きいたひとがいる。
 久我は加蘇地区の最深部にある。

「きまりだ。やっら、石裂山にむかった」
「どうして、センセイ、石裂山だっていいきれるのですか」
「番場そのことはあとだ」
 武の乗ってきたクルマにケイコと麻屋だけが同乗した。
 あとのサンタマリヤのGガールズはバイクだ。
 番場も仲間のバイクのリヤーシートだ。

12

「おみごと」
 部屋のすみに光りがさした。
 それは、屋根をつきぬけて。
 いや宇宙の彼方から円錐形の白い光りにつつまれておちてきた。
 仄かな光りのなかに女性がいた。
 光りにつつまれていて、衣服をきているのかどうかもわからない。
 すごくきれいなひとだ。
「あなたは、とうしてつかまっているの」
「あんたこそ、だれなんだよ」
「これは、しつれい。わたしはカミーラ」
「ジャパニズじゃないんすか」
「鹿沼の未来。鹿未来とかくの」
「この縄といてくれよ」
「とっくに、とけているわよ」
 筋肉に力がみなぎった。
 あの瞬間にとけたのだ。
 そうか。あのとてつもない能力が回復したのだ。
 あたえられた力をまだ自在にあやつることができないでいる。
 鹿未来は三津夫とならんで窓べによる。
「生贄にささげるのね。わたしはだまされていた。遠い、外宇宙にとぶとおもったのに、玉藻はまだこの鹿沼の地にこだわっていたのね、でも鹿沼のどのへんかしら」
「おれ、気がついたんだけどさ、こんな辺鄙な山のなかだと、これは石裂の山奥だよ。福島の原子力発電所からの送電線が前日光高原の横根山から石裂山へとおっている」
「尾裂山、そうだわ。九尾の狐の本体はここに封印されているのよ。わたしたちが殺生石でたたかったのは、あのひとのスピリット、霊魂だったのよ」
 鹿未来の説明でぼんやりとわかってきた。
 三津夫はいまじぶんの周りでおきていることがわかった。
 吸血鬼の姫、玉藻の前が再臨しようとしているのだ。
 阿陪泰成の呪法で地中深く封印されていた玉藻の前。
 その伝説の地がこの久我は石裂山であった。
 千年にわたる永い眠りから肉体をよみがえらせようとしているのだ。
 それで生贄の儀式をしようとしている訳がわかった。
 ともかく、ここからでなければ。
 三津夫は裏口のドアのノブに手をあてた。
 べろんと肉がやけただれた。
 夢のなかで感じていたアレだ。
 さらなる、乾きにおそわれる。
「心霊バリァがはりめぐらされているのよ」
 退いて、という動作とともにカミラは腕をうえにかまえた。
 気を溜めているのだ。
 両腕をそろえたまま胸のまえで組むと気合いがほどばしった。
 ドアがふきとんで、闇がなだれこんできた。
 小屋の裏は深い森につらなっていた。
 白い障壁ははりめぐらされていない。
「あの少女を……たすけなければ」
「おそい。おそいのよ、あの娘(こ)はもう人としては生きていない……」
 ひんやりとした夜の底をはしった。
 むせかえるような緑の匂いがする。
 岩の上にふたりははらばいになった。
 はるかしたに生贄台がみえる。 




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