田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

魔闘学園   麻屋与志夫

2008-09-27 19:07:20 | Weblog
御殿山での救出が遅れれば。
あそこに捕まっているのはケイコだった。
おれはなんてジコチュウな人間だ。
じぶんの彼女のことばかり考えている。
ケイコの無事ばかり気にしている。
銀色に輝く月光りが雲間からさしていた。
夜空からおちてきた光りが収斂して、一条の白銀色の光柱となった。
月の雫をあつめスポットライトのように輝くそ円筒場の光りのなかを。
みよ、人型をしたものがゆっくりと降りて来る。
「玉藻のスピリッよ」
玉藻の精霊である人型が生贄のメグミに重なる。
みるまに、白く輝く裸身があらわれた。
「実体化したわ。もうだれにも、とめられない」
玉藻がふたりのほうふりかえった。
巨大な黄金の狐が空に吼えた。
白い布で囲われた空間に、裸身の玉藻と妖孤が交互にオウバーラップする。      
「逃げましょう。わたしたちだけでは闘えない」
「あの少女のかたきをうつ」
「だめ。力だけで倒せるあいてじゃないの」 
鹿未来が三津夫の手をひいてはしりだした。
ふりかえると、玉藻が狐の姿をしたままおいかけてくる。
黄金色のフレァがあたりにただよい。
その周辺に白衣を黒服に裏返したものたちが伴走している。
「おいつかれるわ。もっとはやくはしれないの」
100めえとる12秒をきることもある三津夫だ。
全速力で走っている。
樹木の小枝をはじきながら必死ではしっている。
その彼が、鹿未来にはついていけない。
妖狐とロゴを背に刺しゅうした特攻服の。
ものたちは人外のものか。
重力などの作用の外に生きるものなのか。
滑るようなスピードで追いすがってくる。

13

「玉藻。わたしをだましたのね。あなたを追討する側に参加しなかった大谷の一族であるわたしたちを、たぶらかしたわね」
「わたしが……あのまま広大な宇宙空間をただよっているとでも思ったの……甘いのよ。いくらわたしが中国から渡ってきた外来種の吸血鬼でも、源流をたどれば同じ宇宙種よ。あのとき、どうして援けてくれなかったの。あなたたちが、味方についてくれさえしたら、わたしは千年ものながい眠りにつくことはなかった。安部泰成に封印されることはなかった。戦乱の世に中立なんてことはありえないの。敵か味方。殺すか、殺される側になるか。共に戦ってこそ味方なの。いいこと共に戦ってくれないのでは、敵方についたも同じなのよ」
「なにをするき」
「きまっているでしょう。この下野の地、この鹿沼を混沌に落とし……、滅ぼしてやる」
「玉藻さん、やはり……あなたは可哀そうな人よ。人をうらんでは、とくにわたしたちは人をうらんではいけないのよ」
「洞窟のなかで千年、じめじめと生きてきた意気地無しの大谷のものがなにほざく」


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