栃木芙蓉高校文芸部 Part 1 トワイライト/インクの匂い
1
その朝、私立栃木芙蓉高校二年B組は二人の転校生を迎えた。
「山田文子さん。名前に文の字が入っているくらいだから、もしかしたら……とおもって期待したのだが、そのとおりだった。文学少女だった。文芸部に入部してくれることになった」
担任の国語教師大野隆一先生が満面笑みを浮かべている。
文芸部は廃部寸前。
だいたい文学少女なんて絶滅危惧種だ。
文芸部の部長のわたしがいうのだからまちがいない。
それにしても美少女だぁ。
ビジァル系の子は文才のほうはどうなのかしら。
一番後ろの席から石原知美は手をあげた。
「歓迎するわ」先生ににらまれた。
そうだ、男子生徒の紹介がまだ済んでいなかった。
といった表情に先生はなった。
「机龍之介くん。中里介山の『大菩薩峠』の主人公とまったく同じ名前だ。龍之介も名前どおり剣道部に入部希望なのだが、この高校には無い。まだどこの部にはいるかはきめてないらしい」
教室の中がざわめいた。
とくに女子生徒がポウット頬をそめている。
これまた美形。先月終わったばかりの、フジテレビで放映された『東京DOGS』の小栗旬に似ている。
龍之介は闇のかすかなざわめきを体感していた。
教室の中には闇の波動をだしているそれらしい生徒はいない。
黒く泡立つ悪意の波は外からうちよせているのか? わからない。
龍之介の目線のさきには太平山があった。
あの麓の富田。
上田秋成の『青頭巾』で知られている。
1
その朝、私立栃木芙蓉高校二年B組は二人の転校生を迎えた。
「山田文子さん。名前に文の字が入っているくらいだから、もしかしたら……とおもって期待したのだが、そのとおりだった。文学少女だった。文芸部に入部してくれることになった」
担任の国語教師大野隆一先生が満面笑みを浮かべている。
文芸部は廃部寸前。
だいたい文学少女なんて絶滅危惧種だ。
文芸部の部長のわたしがいうのだからまちがいない。
それにしても美少女だぁ。
ビジァル系の子は文才のほうはどうなのかしら。
一番後ろの席から石原知美は手をあげた。
「歓迎するわ」先生ににらまれた。
そうだ、男子生徒の紹介がまだ済んでいなかった。
といった表情に先生はなった。
「机龍之介くん。中里介山の『大菩薩峠』の主人公とまったく同じ名前だ。龍之介も名前どおり剣道部に入部希望なのだが、この高校には無い。まだどこの部にはいるかはきめてないらしい」
教室の中がざわめいた。
とくに女子生徒がポウット頬をそめている。
これまた美形。先月終わったばかりの、フジテレビで放映された『東京DOGS』の小栗旬に似ている。
龍之介は闇のかすかなざわめきを体感していた。
教室の中には闇の波動をだしているそれらしい生徒はいない。
黒く泡立つ悪意の波は外からうちよせているのか? わからない。
龍之介の目線のさきには太平山があった。
あの麓の富田。
上田秋成の『青頭巾』で知られている。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます