田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

魔闘学園  麻屋与志夫

2008-09-29 02:11:40 | Weblog
14
あれは狐火。 
狐の嫁入り。
死んだおばあちゃんがよくいっていた。 

石裂山の山腹をちいさな火が数珠にようにならんでもえている。
ああいう光りが並ぶのは山のお狐さまがお嫁にいくときなのだ。

シズカはおばあちゃんのことばを思い出した。

上久我に住むシズカから携帯が入った。
シズカはサッソク、アサヤ塾の連絡ネットに、
「バイクの集団が夜陰に乗じてめったに車などはいらない山道に消えていった」
と報告した。

「このさきは道がないの」
タカコのバックシートからシズカが飛び降りた。
ブナやくぬぎやニレの木の奥にただならぬ気配がする。
シズカもこの奥までははいったことがない。
月が白みかけている。
「三津夫」
車からとびだしたケイコが森の奥にむかってすごい脚力ではしりこんでいった。
輸血の効果があった。
すっかり元気をとりもどしている。
たくましい野生の生命力だ。  
犬のようにみえた。

15

頭がふらつく。
突進してくる吸血鬼の爪がしだいに三津夫のからだに深く突き刺さってくる。
避けられない。
このとき闇の底の下ばえをかきわけ、犬がとびこんできた。
「三津夫、ぶじだったのね」
「心配するな。これきしのあいて……」
「そうでもないみたいよ」
 三津夫にからだをこすりつけ。ケイコ――犬飼一族の長老の娘が変身したままの姿でいう。
「三津夫といっしょに戦えてシアワセ。ネネワカル。感じる? わたしと三津夫は遠いむかし、やはりこうして妖狐の部族と戦った」
「なにいちゃついてやがる」
あらたな黒装束の悪鬼がケイコのまえにすすみでた。
ケイコがすばやくうしろにまわりこむ。
悪鬼の首にかみつく。
ケイコの犬歯でかみくだかれた首筋から緑の血がどろりとしたたる。
腐った臭いがした。
「番長」
「三津夫」
「おにいちゃん」
いっせいに喚声がわきあがった。
ほの暗い樹の影をぬってスケットが到来した。
二荒タカコ率いるサンタマリアのGガールズ。
副番、番場の率いる鹿陵Gボーイズ。
「番長、三津夫さん。おくれてスゥマセン」
異口同音に硬派の声がほの暗い森にこだまする。

麻屋は玉藻と真剣をもって対峙する鹿未来のところにかけよった。
「そのかまえは、蘇ったときいている皐道場のお嬢ですね。総本家、草久の麻生から別れた、あなたのところとおなじ分家、麻屋です」

「これでわたしに敵対するものが勢揃いした。覚悟してかかっておいで」



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