田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

鹿沼流の舞/吸血鬼ハンター美少女彩音 麻屋与志夫

2008-07-18 09:06:26 | Weblog
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彩音に小太刀なんかもたせたくはない。
慶子は物騒なことをイメージしている。
自分が怖くなった。
わたしまでどうかしちゃっている。
彩音と慶子だけの秘密だ。
彩音は彫刻刀をあまり使わない。
彩音は『鬼がおりた』と表現する。
興がのるとカッターナイフひとつで版画を制作する。
すばやいナイフのうごき。
鋭利な線。神業だ。
版画板とナイフさえあれば……。
またたくまに風景でも静物でも彫り上げてしまう。
油絵を描くのも敏速果敢だ。
はやい。
絵の具が乾くのが待ちきれない。
ぐいぐい絵の具を重ねていく。
グラマンクのような濃密な色彩の絵をかきあげる。
大作をすばやくしあげていく。
あれは、おばあちゃん譲りの鹿沼流の舞の所作だ。
絵筆をにぎって画布のまえで踊るように絵をしあげていく。
彩音はまさに鹿沼流の舞い手だ。
舞いの呼吸で動いてるのだ。
あまり動きがはやすぎて息切れがする。
普通の女の子ではきつすぎる。
なかなか習得できない。
静かな動きを基調とする日本舞踊からみれば異端ともいわれる。
鹿沼流の舞踊は格闘技。
といわれている。
彩音の私生活は秘密のベールにおおわれている。
友だちにはあまり知られていない。
いや、彩音は友だちをつくるのにすごく控え目だ。
みんなが声をかける。
声をかけられれば、明るく応える。
でも友だちを増やそうとはしない。
あまり家に呼ばない。
わたしだけかもしれない。と慶子は誇らしく思う。
いつでも、彩音の家に自由にではいりできるは。
だって……幼稚園のときからの仲良しだ。
彩音は鹿沼流の最後の、いまのところ後継者。
激しい舞の所作がはじまりそうだ。
じっと上野先生とにらみあっている。
フリーズ。
静止。凍結。
静止が解凍したときが生死のわかれめ。
血が凍りそうな緊迫。
制止しないととんでもないことがおきる予感。
「彩音。カラオケでもいこう」
演劇部の部長の美穂がこけた。
副部長の静がこけた。
ダッと片足をふみだした。
体をかたむけるほどコケタものもいる。
息をのんでいた。なにがおきたの……。
舞台を見上げていた。なにがおきるの……。
演劇部全員大コケの珍事をひきおこした当人の慶子は、マジで彩音の手をひくと部屋から逃げだした。

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