田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

魔闘学園/吸血鬼浜辺の少女外伝 麻屋与志夫

2008-09-04 07:32:05 | Weblog
「わたしの存在はこの街にとって最後のガーデイアンのようなものだ。
 むかしは、大麻を売買する仲買人がこの鹿沼には大勢いた。
 農家を毎日まわって歩いて麻を買いながら妖気の発現点をさぐっていた。
 妖気のもれだしている箇所があれば。
 それがどんな僻地でも。
 辺鄙な村の片隅の小さな点のような場所でも。
 コーテングでもするように封印しなおしたものだ。
 仲買人の手に負えないほど強い妖気が。
 ふきあがっていれば。
 すぐ問屋であるわたしの家に。
 緊急出動を請う連絡がはいった。
 まだ健在だった父が、バイクで出掛けていった。
「空海」直伝といわれる呪文で封印しなおしたものだ。
 そうしたことは、千年もつづいてきた。
 仲買人には、行き倒れになった。
 行方不明になるものが。
 昔からおおかった。
 それはあまりにも強い妖気に負けて。
 精気をうばわれたり、やつらにのみこまれてしまったのだ。
 そして、いま合成繊維におされて、農家で栽培していた麻は絶滅してしまった。
 みわたすかぎりの麻畑はもうどこにもない。
 落雷の危険があれば、麻畑に逃げ込め。
 麻の蚊帳をつれ。
 そうした麻を黒き神をさける、魔よけとかんがえる因習もなくなってしまった。
 麻はまた寺院や神社の鰐口や鈴をならす。
 鰐口紐(鈴緒)としてつかわれてきた。
 その綱には、境内を浄化するホースがあった。
 注連縄としてもつかわれ、日本全土を守ってきた。
 それがいまは妖気をミソグ力のないマニラ麻にとって変わられている。
 中国産の麻がつかわれている。
 妖気が噴出し、いつかこういう日がくることはわかっていたのだ。
 わたしは最後の、たったひとりの麻屋となった時から覚悟はできていた。
 だから、わたしは死んでもみんなを守らなくてはならないのだ。
 街を防衛しなければならないのだよ」

 アサヤノオッチャン。なにものなのと乱闘のあとで聞かれたことへの解説だった。

「なんだか、英語よりむずかしくて、ワカンナイ」
「それでいい、知らないほうがいいこともある」
「ようするに、アサヤのオッチャンはエスパーなんだ」
「エスをとったらただのパー、ワタシはオジンのパーセンセイだ」
「冴えないの。そんなギヤグトバシテテイイノカヨ」
 タカコが真剣な顔でいう。
 ニコッともしない。
 二荒タカコには見えているのかもしれない。
 タカコの二荒の家系には吸血鬼を視認できるDNAが受け継がれているのかも知れない。   
 ケイコの蒸発は吸血鬼がらみだ。

 いまどこにいるのだろうか。

 元気でいるのだろうか。

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