奥様はバンパイァ 82
○武がとびこんでいった校舎の出入り口から。
女子生徒がみみを押さえてぞろぞろと出てくる。
両手がほほのあたりにある。
みみを押さえた顔。
ムンクの叫びの顔。
恐怖にゆがんだ顔だ。
アメリカの学園恐怖映画、題名忘れたわ。
あのときのラバーマスク。叫びの顔。
怖かった。
○玲加を肩の痛みをこらえる。
窓に顔をよせる。
「G、おかしいよ。みんな校庭をでていく」
彼女たちのめざしているのはどうやら那賀耳鼻科医院。
はやらなかった喫茶店のあとに開業したばかりの医院。
日曜大工の店Kのとなりにある。
大通りを列になって横断している。
車が進めない。
じれて警笛をブワンブワン鳴らす。
みみをおさえた女子生徒の長い列。
あわてふためいて医院にかけこんでいく。
○なににおびえているの。
どうしたの。
肩の損傷、痛みがなかったら車からとびだしたい。
彼女たちのところへかけつけたい。
ようすがわからないだけに不安はふくらむ。
顔に傷のあるようすはない。
ほほに傷の痕跡はない。
彼女たちの不可解な行動の原因がわからない。
「どうなってるのG……? 」
「たぶん……」
Gがいいかけたとき――窓にふいに武の顔が映った。
「たいへんだ。みみに蝿がはいった」
武がではなかった。武はぶじだ。
彼女たちは耳の奥で蠅の羽音がする。
と恐怖の叫びをあげていた、というのだ。
「教室でも苦しんでいる。おおぜいいた」
●私事ですが、「星の砂」に「初恋の白いバラ」を載せました。そちらもぜひお読みください。
アイスバーグ
pictured by 「猫と亭主とわたし」
あなたのポチが筆者の励みとなります。よろしく。
↓
○武がとびこんでいった校舎の出入り口から。
女子生徒がみみを押さえてぞろぞろと出てくる。
両手がほほのあたりにある。
みみを押さえた顔。
ムンクの叫びの顔。
恐怖にゆがんだ顔だ。
アメリカの学園恐怖映画、題名忘れたわ。
あのときのラバーマスク。叫びの顔。
怖かった。
○玲加を肩の痛みをこらえる。
窓に顔をよせる。
「G、おかしいよ。みんな校庭をでていく」
彼女たちのめざしているのはどうやら那賀耳鼻科医院。
はやらなかった喫茶店のあとに開業したばかりの医院。
日曜大工の店Kのとなりにある。
大通りを列になって横断している。
車が進めない。
じれて警笛をブワンブワン鳴らす。
みみをおさえた女子生徒の長い列。
あわてふためいて医院にかけこんでいく。
○なににおびえているの。
どうしたの。
肩の損傷、痛みがなかったら車からとびだしたい。
彼女たちのところへかけつけたい。
ようすがわからないだけに不安はふくらむ。
顔に傷のあるようすはない。
ほほに傷の痕跡はない。
彼女たちの不可解な行動の原因がわからない。
「どうなってるのG……? 」
「たぶん……」
Gがいいかけたとき――窓にふいに武の顔が映った。
「たいへんだ。みみに蝿がはいった」
武がではなかった。武はぶじだ。
彼女たちは耳の奥で蠅の羽音がする。
と恐怖の叫びをあげていた、というのだ。
「教室でも苦しんでいる。おおぜいいた」
●私事ですが、「星の砂」に「初恋の白いバラ」を載せました。そちらもぜひお読みください。
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