田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

歴女VS醜女/奥様はバンパイァ 麻屋与志夫

2009-10-26 03:56:22 | Weblog
奥様はバンパイァ 59

●武は〈狂戦士〉――人狼集団の長の次男坊だ。

奈良に向かっている過激派の長男章夫とはちがって穏健派だ。

とはいっても、なめたらアカンデヨ。

いざとなれば殺戮の喜びのために殺戮のできる狼だ。

そういう玲加もじぶんがバンパイァであることを忘れていた。

いまは、歴史的にみてずっと長いことひとの血はすっていないはずだ。

が、それからさきのことはわからない。

喉の渇きをかすかに感じることがある。

そんな時は……じぶんが浅ましくなる。

悲しみながらトマトジュースをがぶ飲みする。

●いまその渇きの発作がやってきた。

玲加はジロリと肥満女を睨む。

武の拳からしたたるトマトの汁をぺろりとなめた。

ひとがいいきもちで、いやわたしたちはひとではない。

ひとの範疇、カテゴリイからはかけはなれている。

まあいいか。

ひとがいいきもちで武と買い物にやってきたのに。嘲るほうがわるいのだ。

中年肥満醜悪女たちがふるえている。

「おかしいよ。あのアンちゃんと姉ちゃん、眼がひかった。ひかった」

●店内からレジ袋を両手にさげた男たちがでてきた。

これまた大男。わめく。

「うちのカアチャンになにした」

「なにもしてませんよ。お上品な奥様たちですね」

「まあな」

「そんなこといわれても許さんぞ」

べつの悪の権化みたいな男がつめよってくる。

レジ袋をゆっくりと凄みをきかせておく。パット殴りかかってきた。

武はおおきくアギトをひらいた。

バカな男だ。狼の口のなかにパンチをくりだした。

カブツト武が口をとざした。咀嚼音がする。

「ああ。おれの手が、拳が喰われた」

「なにいつてるんだ。タカオよ。ちゃんと手はついてるぞ」

幻覚を見せられたのだ。

タカオは噛みちぎられたあとから血がふきだしているように見える。

首にまいていたタオルを手にまきつけている。

「わあわあわあ」

大男が脱兎のごとく逃げていった。

●「武さん。帰ってきていたのですか」

バイクがバーストしながら急停車した。

犬飼族のめんめんがおりてきた。

玲加は首をかしげてブリッコぶった挨拶をした。




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