田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

 二人だけの化沼/奥様はバンパイァ 麻屋与志夫

2009-10-25 04:35:35 | Weblog
●奥様はバンパイァ58  PART 2

「わたしたちだけで化沼にもどってくるとは思わなかったね」

「しょうがないだろう。新学期ははじまったばかりだし。Mのバラ園はだれかせわ

しなければならないのだから」

「そうよね。ふたりでいられれば、どこにすんでもいいよ」

 武を眩しいような眼差しでながめている。

 胸をどきどきさせながら武によりそっている。

 玲加はじぶんのことがわからなくなっていた。

 あんなに敵対していたのに。

 いまそこにある、現実の敵として戦いぬいてきた。

 いや過去の時代から争ってきた。

 由緒ある敵対関係にあるふたつの部族の出なのに……。

 こんなに仲良くなっていいのかしら。

「これって、ロメオとジュリエットみたいね」

「なんだょ……きゅう。なに考えている???……の」

「うれしいよ。こうしてふたりであるけて」

「なにかんがえてのかね」

 ふいにぎざぎざした棘のある声がきこえてきた。

 ここは化沼の黒川岸にあるスーパー『ヨークシャ』のフロントだ。

 買い物客が一休みできるようにプラスチックのテーブルや椅子が並べられてい 

る。玲加があわててみまわす。

 だれかにかかえてもらわないと椅子からたちあがれそうにない巨女がこちらをみ

ている。立ちあがる前に、椅子がよよみそうだ。

 それでもふたつ椅子を並べているのだからおどろきだ。

 ひとつだつたら椅子はつぶされていたろう。

 醜悪な中年女たちがフロントを出入りする若者に悪口をあびせているのだった。

「まったくね。でれでれ手なんかつないで。よくはずかしげもなく歩けるね」

 なんかスーパーの野菜売り場みたい。カボチャ、ジャガイモ、黄色いピーマン、

玉ねぎ。みたいなごろごろしたオバサンたちがじろじろ武と玲加を棘ある視線でな

めまわし悪口雑言。

「いわしておけよ。玲加があまりきれいなのでjealousyさ」

 なにかとんできた。武が手をあげてとらえた。

 玲加の顔にあたらないですんだ。武の手が真っ赤に染まった。

 熟れたトマトだった。

「なんだかんだと、バカにするのはいいよ。でもぼくの彼女を傷つけるとあんたら

のあたまがこうなるからね」

 ううつと武が吠えた。なにせ人狼だから咆哮は真に迫っている。

 ホンモノの唸り声をきいて肥満女たちが椅子ごとうしろにデングリ返った。


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