(理沙子の日記より……数年後)
PART 1 幻覚
1
宇都宮東公園。
公園の中央に噴水がある。
背後にイチョウ並木がある。
噴水はその落葉の始まった梢と高さを競うように噴き上がる。
並木の半日蔭を黒猫がよこぎっていった。
ギンナンの甘くせつない香り。
並木の舗道にはイチョウの葉が幾重にもかさなっていた。
ベンチがあった。
座り人をまっている。
だれか、そこにベンチのあることに気づいてくれることを……。
いや、いた。
ふいにいまそこにわいてでたような……人影。
宵街翔太だ。
金色に輝く落ち葉が風にながれていく。
翔太の視線のさきに、少年がいた。
少年は舗道の落葉の中にいた。
よくみると、落ち葉が少年を避けてながれている。
落ち葉がふいに立体的にまいあがった。
渦をまいた。
翔太はベンチからたちあがった。
はしりだした。
落ち葉の乱舞の中で少年はきえていた。
少年ははじめからおれに気づいていたのだ。
(遊ばれていた)
翔太はおもしろくなかった。
日没がはじまる。
(ヤッラの活動がオリオン通りで……)
なにをためらっていたのだ。
あの記憶の底のアーケイドに、いそがなければ。
吸血鬼の暗躍の街にいそぐのだ。
one bite,please. ひと噛みして!! おねがい。
↓
ああ、快感。
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