part 3 危険が迫ったらVバスターズ
1
青山のホンダビルの裏道。
直進すれば美香&香世の在籍する青田女子学園に通じている。
トワイライト。
街灯に灯がともった。
でもここは、薄暗い。
長い塀がつづく。青山の住宅地。
両手にレジ袋を幾つもさげた女性があわただしくあるいている。
会社からの帰り道。思わずスーパーで買い物をしてしまった。
あの大谷石の塀の角を曲がれば、わが家まであと2分くらいだ。
母が待っている。
このとき、彼女はストーカーの気配をかんじた。
足音が近寄ってくる。
家にむかって走る。
立ち止まって、やり過ごしてみる方を選択した。
いままでにも、こんなことはなんどもあった。でもこわい。
護身術には自信がある。それでもなお怖い。
いい機会かもしれない。大森の『GG刀エクササイズ』に通っている。
そこでの新規ビジネス『Vバスターズ』の会員に登録した。
携帯のボタンを押すだけで本部につながる。
こちらの所在はすぐ本部でわかる。押した。
「おくさん、今夜は買い物ですか」
男がちかよってきた。
昨夜遅くまで見ていた『デスノート』の死神のような声。
痩せている。黒いコートも不気味だ。
塀に映っている影。羽根が生えているようにみえる。
もちろん、恐怖からくる錯覚だ。
ズルッと唾を飲んでいる。
歯をむきだした。
長い犬歯。
牙みたい。
ウソだ。
入れ歯に細工でもしたのだ。
でも、息が生臭い。魚の腐ったような臭いだ。
顔だってあの死神に似ている。
いや――吸血鬼の顔だ。
このときになって、彼女は走って逃げなかったことを後悔した。
「バァ」男の後ろから同じ体型、同じ顔がのぞいた。
「生血をすするなんてしばらくぶりだよな、獏ちゃん」
「そうだね。コウジ君」
漫才でもやっている調子だ。
腕が伸びてくる。
レジ袋を叩きつけた。
腰のベルトから特殊警棒をはずした。
ひとふりした。60センチほどに伸びた。
青眼にかまえた。
「おやおや、勇ましいことですね。奥様」
てんで相手にされていない。
こんなところで死ぬのはいや。
「選択肢は3つありますよ。
1つ、喉から。
2つ、鉤爪でひきさかれて。
3つ、ナイフで刺されて」
「どれがいいかな」
獏の背中から現われたコウジがナイフをとりだした。
掌にナイフをたたきつけて、ピタピタという音をたてている。
背筋が恐怖で粟立つ。
さっとナイフがつきだされた。
警棒でたたいた。
「オヤオヤ……すこしはできますね」
獏が牙をムイテせまってくる。
くさくて、あたまがくらくらする。
いや、恐怖だ。恐怖で痙攣している。
このまま気をうしないそうだ。
ナイフと牙が――まさに――。
ストップモ―ション。
「三分二十秒」
百子がバイクからおりる。
バイクの音なんかきこえなかった。
「まあ、しかたないか。こんなものね。原宿にいたのよ」
三分二十秒。
そうか。
わたしがSOSのキーを押してからヘルプが到着するまでの時間だ。
「百子、師範」
「川村さん心配いらない」
川村美智子は夢中でうなずいていた。
助かった。
震えはまだとまらない。
でもそれからが戦いだった。
クノイチ48メンバーがぞくぞく到着した。
今日も遊びに来てくれてありがとうございます。
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青山のホンダビルの裏道。
直進すれば美香&香世の在籍する青田女子学園に通じている。
トワイライト。
街灯に灯がともった。
でもここは、薄暗い。
長い塀がつづく。青山の住宅地。
両手にレジ袋を幾つもさげた女性があわただしくあるいている。
会社からの帰り道。思わずスーパーで買い物をしてしまった。
あの大谷石の塀の角を曲がれば、わが家まであと2分くらいだ。
母が待っている。
このとき、彼女はストーカーの気配をかんじた。
足音が近寄ってくる。
家にむかって走る。
立ち止まって、やり過ごしてみる方を選択した。
いままでにも、こんなことはなんどもあった。でもこわい。
護身術には自信がある。それでもなお怖い。
いい機会かもしれない。大森の『GG刀エクササイズ』に通っている。
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携帯のボタンを押すだけで本部につながる。
こちらの所在はすぐ本部でわかる。押した。
「おくさん、今夜は買い物ですか」
男がちかよってきた。
昨夜遅くまで見ていた『デスノート』の死神のような声。
痩せている。黒いコートも不気味だ。
塀に映っている影。羽根が生えているようにみえる。
もちろん、恐怖からくる錯覚だ。
ズルッと唾を飲んでいる。
歯をむきだした。
長い犬歯。
牙みたい。
ウソだ。
入れ歯に細工でもしたのだ。
でも、息が生臭い。魚の腐ったような臭いだ。
顔だってあの死神に似ている。
いや――吸血鬼の顔だ。
このときになって、彼女は走って逃げなかったことを後悔した。
「バァ」男の後ろから同じ体型、同じ顔がのぞいた。
「生血をすするなんてしばらくぶりだよな、獏ちゃん」
「そうだね。コウジ君」
漫才でもやっている調子だ。
腕が伸びてくる。
レジ袋を叩きつけた。
腰のベルトから特殊警棒をはずした。
ひとふりした。60センチほどに伸びた。
青眼にかまえた。
「おやおや、勇ましいことですね。奥様」
てんで相手にされていない。
こんなところで死ぬのはいや。
「選択肢は3つありますよ。
1つ、喉から。
2つ、鉤爪でひきさかれて。
3つ、ナイフで刺されて」
「どれがいいかな」
獏の背中から現われたコウジがナイフをとりだした。
掌にナイフをたたきつけて、ピタピタという音をたてている。
背筋が恐怖で粟立つ。
さっとナイフがつきだされた。
警棒でたたいた。
「オヤオヤ……すこしはできますね」
獏が牙をムイテせまってくる。
くさくて、あたまがくらくらする。
いや、恐怖だ。恐怖で痙攣している。
このまま気をうしないそうだ。
ナイフと牙が――まさに――。
ストップモ―ション。
「三分二十秒」
百子がバイクからおりる。
バイクの音なんかきこえなかった。
「まあ、しかたないか。こんなものね。原宿にいたのよ」
三分二十秒。
そうか。
わたしがSOSのキーを押してからヘルプが到着するまでの時間だ。
「百子、師範」
「川村さん心配いらない」
川村美智子は夢中でうなずいていた。
助かった。
震えはまだとまらない。
でもそれからが戦いだった。
クノイチ48メンバーがぞくぞく到着した。
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