田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

魔闘学園/吸血鬼の浜辺の少女外伝 麻屋与志夫

2008-09-15 15:31:56 | Weblog
城があったころから。
存在したという。
伝説の井戸。                  
あの頃でさえ。
青く苔むしていた井戸。  
だが水のうまさは……。
いまでも覚えている。  

この窪地。
光のささない影の部分の。
この地のもつ違和感。
はっきりとこの肌が覚えている。   

そして、昔はあまり見えていなかったものが。
見えてきた。             
石の囲いがわずかに残っているにすぎない。
麻屋は三津夫&番場とその縁に立った。 
苔むした石に掌をあてた。        
呪文をとなえる。
石がゆっくりと盛り上がってきた。
青い鱗状の苔むした。
石の蓋がうごいた。
石の表を擬装ししていた。
苔が枯れていく。  
迷彩が消えると……。  

「先生。これは……」
おどろいてあげる声を。
番場は三津夫に押さえられた。

「これはなんなんですか」
こんどは低く囁やく。         
異様なあたりのし雰囲気を感じたのだ。
三津夫は黙って辺りに気をくばっている。 
「抜け穴があるらしい。
ゆうべ徹夜で鹿沼の古文書を調べた。
街の中で。
人知れず悪霊召喚の儀式ができるのは。
こうした地下の空間だけだ。
防空壕あとは。
五箇所も昼のうちに調査ずみた」
「残るはここだけってわけスか」
しかし、さきほど。
「先生。これは……」
と番場が絶叫したのは。
そういう回答をもとめたわけではなかった。
みなれた塾の先生。
何の変哲もないアサヤのオッチャンが。
ほかのものに変わっていた。            
呪文をとなえる塾の先生。        
麻屋がふいに溶解した。
破れた墨染めの衣を着た乞食坊主がいた。
それが見えた。
番場にも見えたのだ。   
なんで、麻屋のオッチャンが坊主に見えるんだよ。
おれはどうかしてしまったのかよ。
と三津夫のほうもびびっていた。
 
そんなことはない。
どうかしたわけではない。        
三津夫も番場も、心配するな。
ふたりとも、とくに三津夫は。
二荒の血を強くひいていたのだ。 
おれの姿が乞食坊主にみえるなら。
三津夫は、おれの側の人間だ。
番場もどこかで、わたしたち麻績部(お み べ )の系譜につながってる。

注。麻績部については半村良『闇の中の系図』角川文庫151ー155ページを参照。

だから、異様な雰囲気は感じる。
先生が呪文を唱えていた。

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