田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

麻の鞭 吸血鬼/浜辺の少女

2008-06-22 20:04:15 | Weblog
6月22日 日曜日
『黒髪連合』の若者たちは吸血鬼の鋭い爪で切り刻まれていた。          
あたりは血の匂いがみちみちていた。
それがいっそう吸血鬼を興奮させている。
たのしませている。
やがて、この闘争に終止符をうつ。
やがて、この殺戮も終わる。
おもうぞんぶん血が飲める。
血が飲める。
よろこびを先送りりするかのように、吸血鬼はたのしんでタタカッテいた。
眞吾の麻鞭がヒュヒュとびびく。
円をえがく。円は螺旋状。
あるいは、稲妻となって空をきる。
いや空ではない。
かならずその空を切り裂くなかに吸血鬼がいた。
吸血鬼の尾があった。
蛍光塗料でもぬったら新体操のリボンの動きさながらのうつくしい動きが見てとれる。
逆だ。
薄墨色の麻の鞭の動きは吸血鬼にも見えていない。
見えていないからこそ、かれらは切られる。打たれる。
打たれ、切られれば血もながす。尾をぬかれる。
うすい緑の血。鞭の音。
ヒュウ、ヒュウと眞吾の怒の音だ。
実戦で鞭をつかうのははじめてだった。
爬虫類の固い肌が切りさかれる。
だがそこまでだ。
さいしょにバルーをうちこんでたおしたのは吸血鬼ひとりだけ。
若者たちは、追い立てられ、血をながし全滅の危機。
「王子のやっら、こんなに強かったのか」
矢野が叫ぶ。
高見がジレている。
「王子のやっら、どうして血をながさないんだ。傷つかないんだ」
しかしひるんではいない。
硬派のなかの硬派。
ヤクザにケツ持ちなどたのんでいない。
いまどきめずらしい。
血を酒杯にみたしすすりあって団結した仲間だ。
血をすわれることなど怖くはない。     
ふいに、林の木陰から女性と男性がわきでた。
「新手の敵よ」
八重子が眞吾に叫びかける。
絶望はしていない。
死ぬときいっしょだ。
眞吾と敵をあいてに真っ向勝負をしている。
うれしい。
手をつないで死んでいけたら、こんなうれしいことはない。
うれしくて、涙がでるってものよ。
ふたりだけならそれでいい。
仲間をみちずれになんかできない。
マブダチをこれいじょう死なせるわけにはいかないのだ。
だが、だが、もうもちこたえられそうにない。
どうする眞吾。いちどはわかれた男、あたしの眞吾。
伝説のレデイス『空っ風』のなかまの将来を思い、ヤクザに食い物にされないうちに解散した。
麻薬(どらっぐ)などに、ハマラナイ、正統派。
硬派のなかのコウハを自認する『黒髪連合』の未来を信じて、眞吾に託した大勢のレデイス『空っ風』のマブダチ。
このままここでみんなと死ねれば、眞吾と死ねれば、本望だ。           
男と女がちかよってくる。
「新手の敵よ」
もうだめだ。八重子は心の中で叫んでいた。






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