田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

奥様はvampire  麻屋与志夫

2009-04-17 16:41:14 | Weblog
奥様はvampire 2

○それは、長いこと孤独だった。

もう耐えられないほど長い歳月を北関東の小さな田舎町で過ごしてきた。

町は人口四万ほどのほんとうに小さな町だった。

町の名は「化沼」といった。

でもだれも正確に「あだしぬま」と読めなかった。

読めたとしても自嘲をこめて「ばけぬま」という人がおおかった。

妖怪の話にはことかかない町だ。

youkaiと表現できるような現代性のある怪談はない。

……が、街の至る所に精霊が住んでいるようだった。

街の至る所に「玉藻の前」の、九尾の狐の伝説が残っていた。

わたしはこの故郷にかれこれ50年ほど前に帰省した。

父が病に倒れたためだった。

母はすでに患っていた。

そのものは長い孤独から目覚めようとしていた。

そしてわたしと出会った。

わたしも一目で、彼女を好きになった。

○あれからまさに50年。都の身振りも話し方もすっかり忘れてしまった。

「ギャップ」の店員が店の傍らのベンチでPCを打っていたわたしのところに駆け寄

ってきた。

「ほんとに、おくさんは、シルバーパスを貰えるお年なんですか? 失礼ですが70

歳になるのですか??」

「まちがいありませんよ」

「信じられない。みんなでカケをしたのです。本当だったらあのひとたちがお給料

からおくさまの買物の肩代わりをするって」

買いものは細めのジーンズだろうからたいした負担にはなるまい。

彼女は店内からこちらを注視している仲間にガツッポーズを送った。

「若さの秘訣はなんですか」

「ああ、うちの奥さんは吸血鬼なんですよ」

「エエエエ!!!!!!!!!!!!」

「いやね、わたしのカミサンは紫外線にあたらないのです。冬でもパラソルを使い

ます。だいいち昼の間はあまり出歩きません」

「紫外線にあたらない。参考になりましたわ」

わたしが、先に言った「吸血鬼」なんて言葉は全く信じてはいない。

初めの言葉ではカラカワレタ。ジョークをとばされた。

後の言葉が真実を語っている。そう思っている顔だ。 

店員は頭をさげて、うれしそうに、店にもどっていった。

mimaこと、わたしのカミサンが店から紙袋を提げてでてくる。

「彼女は吸血鬼なのですよ」

そう、シラッと言えるようになるまでに。

50年の時の経緯があったことなど店員は知るまい。

○mimaは出会った時のままの美貌に、微笑をうかべてわたしに近寄ってくる。



one bite,please. ひと噛みして!! おねがい。
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ああ、快感。


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