田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

人柱/吸血鬼ハンター美少女彩音

2008-08-14 21:16:57 | Weblog
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 慶子に稲本というあらたな吸血鬼があらわれたことはまだ告げていない。
 純平と澄江。
 ふたりはそのまま虚空に消えていく。
「慶子。見える」
「見える。見えるよ。やっとふたりは一緒になれたのね」

「百年の恋か」
 麻屋は一歩前にでた。

「さようなら澄江さん」
「さようなら純平さん」
「純平くんと澄江さんが、ふたりが、仮性吸血鬼の悪霊をつれさってくれたのだ」
「でも、まだほんものの吸血鬼がのこっているわ。わたしたちにも見ることができないかもしれない吸血鬼があちこちの街に、残っているのよ」
「闘いはこれからだ」
 麻屋がしんみりという。

 幽霊橋も消えていく。
解体業者が作業にとりかかっていた。
 いままさに、幸橋を解体するための巨大なパワー・ボールが橋脚に一撃をあたえた。
 パワー・シャベルの鉄の爪が基礎をかためているコンクリートにくい込む。
 コンクリート粉砕機が激しく唸っている。
 橋が断末魔の悲鳴をあげている。
 建造には、かなりの月日がかかったことだろう。
 破壊は一日ですむはずだ。
 建築にはよろこびと期待があった。
 解体作業には悲しみだけが残る。
 もうもうと埃がたつ。
 その埃が立ち、空気を汚すのを防ぐためにホースで水が掛けられている。
 ぱっと広がった水の柱の先に虹が出ている。
 だが、みんなはそれが希望の虹でないことをしっている。
「古い鹿沼がこれでまたひとつなくなる」
 麻屋がつぶやく。
 このときだ。
 解体現場で音が途絶えた。
 シャベルの鉄の爪が。
パワーボールが。
粉砕機がとまった。
「なにか、あったのよ」

 彩音が走りだす。
 砕かれたコンクリートの橋柱の根元からなにか出た。
夥しい白いモノ。
 白骨だ。
「人柱だ」
 麻屋が呻いた。

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