日常観察隊おにみみ君

「おにみみコーラ」いかがでしょう。
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◎本日の想像話「ロボットの顔」

2013年11月09日 | ◎これまでの「OM君」
毎朝、車で通勤している。
同じ時間、同じような面々。
まあ、退屈ないつもの時間。
そんな時に考えるのは、開発中のアルゴリズム、チャート、統合プログラム。
人型ロボットとしての基本設計、骨格は完成している。
開発チーフとして頭を悩ませているのは、「顔」。
どんな顔にしても違和感をあたえる顔にしかならなかった。
そんな時、毎朝すれ違うあの顔。
考えもしなかったがロボット顔としてあの表情は最適ではなかろうかとひらめいた。
今朝もすれ違った。
私自身も時間には正確なほうだが、先方もほぼ時間通り、同じ交差点ですれ違う。
トラックの配送運転手。
早速、試作に取りかかり、顔をロボットに装着する。
今までの違和感がうその様に、人間がたたずんでいるかのような自然さだった。
「これだ」
部屋中のエンジニア全員が見とれていた。
顔はまさに毎朝すれちがうあの運転手の顔だった。

晴れて新発売されたロボットは、爆発的に売れた。
庶民が少し背伸びすると入手可能な価格。
それでいてほぼ何でもこなせる汎用性。
耐久性。
使い勝手がよく町には同じ顔のロボットがあふれかえった。

私達のチームは会社側にこのロボットの特許料として販売高に対して数パーセントのロイヤルティーを要求していた。
公には公表されなかったが、莫大な金額が生涯ころがりこむ計算になった。
そんな夜。
駐車場に車を止め、自宅にむかう。
「おい、あんたミノワさんだろ」
背後からいきなり声をかけられた。
びっくりして飛び上がった。
「・・・・」
おそるおそる振り返る。
そこにいたのは毎朝すれ違う、あの顔の運転手だった。
「雑誌の記事を読みました。あのロボットあなたが開発したんですってね。写真を見て一目で分かりましたよ。毎朝すれちがう人だってね。」
「どうも・・・」
「それでここに僕がいて、あのロボットがあって・・・用件は分かりますか」
「いや、分かりかねます」
「自分の顔が町中にあふれて3Kの仕事ばかりしているんです。泥まみれ、油まみれ。
まあそれはいい。
腹が立つのは自分をロボットだと思って無礼な振る舞いをされることです。
もう限界なんだ。
そこで、相談ですが・・・慰謝料及び肖像権の侵害ってことで、少し誠意を見せてもらってもいいですかね」
不敵に笑う顔はロボットの様に見えた。

その運転手の名前はクドウといった。
クドウはその後、ボーナスが今年は出なかった、事故を起こしたといっては金を要求するようになっていた。

そうして2年がすぎた。
クドウの振る舞いはエスカレートしていった。
私はある計画を練った。
今日がその実行日だ。
深夜2時。
金の受け渡しはいつもの山中のパーキング。
夜な夜なチューンした車を乗るのが奴の趣味らしい。
知ったことか。
奴の車がパーキングに入ってくる。
こちらに気づき、近づいてきた。
「こんばんっ・・・!」
そういって窓を開けて話しかけてきた。
その声は途中で遮られた。
私が、有毒ガスをスプレーし昏倒させたためだ。
私の車の助手席から奴の顔をしたロボットがゆっくりとドアを開け降り立った。
ロボットは奴を車の運転席から引きずりおろし、そのまま背中に乗せると山中に消えていった。
30分後、ロボットはあらかじめ掘っておいた深い穴に死体を埋め帰ってきた。
そのまま無言で奴の車に乗り、奴のアパートに帰っていった。
生体反応が必要とされる場面を極力避けるようにプログラムをほどこした。
いずれ奴のふりをさせているロボットも失踪させる。
コメント
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