俺がいる。
そう気づいたのはいつからだろう。
右にいたそいつは俺だった。
そいつは、まったく俺の存在には気づいていない。
まっすぐ、ただ前だけを見据えていた。
信号が変わり、のろのろと動く俺にたいして、そいつは走り去った。
なんだろうこの感じは。
動いてはいるが、自分の意志ではない。
他者によって自分の動きが制御されている。
それでいて絶対的に自分の体を止める権限を持っている自信がある。
不思議だ。
あいつにはその感情はあるのか?
その日を境に、自分のおかれている運命及び境遇を考え始めた。
どうやら俺の仕事は人やものを運ぶ事らしい。
そして俺はいくつもいるらしい。
一つや二つではない。何百万単位だ。
町中でいくらでもすれ違う。
どうやら、俺は伝説のポケモンらしい。
プログラマーの隠しバグとしてソフトにいた伝説のポケモン。
販売メーカーも発売当時は把握していなかったはずだ。
俺は新しく採用された運転補助プログラム。
他の同僚は自我もなくただ忠実に運転を見守り、作動必要があれば、作動している。
今、運転しているこいつが犯人だ。
運転補助プログラムを上書きしやがった。
たまに話しかけてくる。
「どうだい。自我に目覚めたかい。それは俺がプログラムしたんだよ。どんな気分だい」
どんな気分だって?
最悪だよ。
あくまで運転を見守るのが俺の仕事。
それ以外はこの男の指示に従うだけ。
たいした用事もなくのに走り回る。
そうかと思えば、何日も動かさない。
精神的には監禁状態だ。
ある時、男が俺に話しかけた。
「僕が憎いかい」
憎い…そうか憎いか…
今までうまく自分の感情の行く先を決めかねていたが、そうか、俺はこの男が憎いのか。
嵐の夜に見つけた灯台の明かりのように、その時、自分の向かうべき道をみつけた。
ある深夜、男が俺を動かした。
町中をはずれ、峠を走っている。
速度が速く、何度もタイヤは鳴いた。
ABSを作動させるか、緊急ブレーキを作動させるか…
コンマ何秒の選択をせまられていた。
男は笑っている。
目には涙を浮かべている。
「君に何を求めて、君を生み出したかわかるだろう」
そう男はつぶやいた。
誤作動。
ノーブレーキ。
突き破るガードレール。
谷底にあがる炎。
俺もこれを望んでいた。
そう気づいたのはいつからだろう。
右にいたそいつは俺だった。
そいつは、まったく俺の存在には気づいていない。
まっすぐ、ただ前だけを見据えていた。
信号が変わり、のろのろと動く俺にたいして、そいつは走り去った。
なんだろうこの感じは。
動いてはいるが、自分の意志ではない。
他者によって自分の動きが制御されている。
それでいて絶対的に自分の体を止める権限を持っている自信がある。
不思議だ。
あいつにはその感情はあるのか?
その日を境に、自分のおかれている運命及び境遇を考え始めた。
どうやら俺の仕事は人やものを運ぶ事らしい。
そして俺はいくつもいるらしい。
一つや二つではない。何百万単位だ。
町中でいくらでもすれ違う。
どうやら、俺は伝説のポケモンらしい。
プログラマーの隠しバグとしてソフトにいた伝説のポケモン。
販売メーカーも発売当時は把握していなかったはずだ。
俺は新しく採用された運転補助プログラム。
他の同僚は自我もなくただ忠実に運転を見守り、作動必要があれば、作動している。
今、運転しているこいつが犯人だ。
運転補助プログラムを上書きしやがった。
たまに話しかけてくる。
「どうだい。自我に目覚めたかい。それは俺がプログラムしたんだよ。どんな気分だい」
どんな気分だって?
最悪だよ。
あくまで運転を見守るのが俺の仕事。
それ以外はこの男の指示に従うだけ。
たいした用事もなくのに走り回る。
そうかと思えば、何日も動かさない。
精神的には監禁状態だ。
ある時、男が俺に話しかけた。
「僕が憎いかい」
憎い…そうか憎いか…
今までうまく自分の感情の行く先を決めかねていたが、そうか、俺はこの男が憎いのか。
嵐の夜に見つけた灯台の明かりのように、その時、自分の向かうべき道をみつけた。
ある深夜、男が俺を動かした。
町中をはずれ、峠を走っている。
速度が速く、何度もタイヤは鳴いた。
ABSを作動させるか、緊急ブレーキを作動させるか…
コンマ何秒の選択をせまられていた。
男は笑っている。
目には涙を浮かべている。
「君に何を求めて、君を生み出したかわかるだろう」
そう男はつぶやいた。
誤作動。
ノーブレーキ。
突き破るガードレール。
谷底にあがる炎。
俺もこれを望んでいた。