タタン・タタン・タタン
タタン・タタン・タタン
一定のリズムで体が揺れる。
レールの継ぎ目を乗り越えるリズム。
ポツポツと座っている人々。
車内は空いている言っていい。
うららかな日差しが差し込む、休日の朝。
車外を見る。
一面茶色の平原が広がっている。
その中を電車は走っている。
今朝俺は何を食べたっけ?
よく思い出せない。
何行きの電車に乗っているのか。
それもよく分からない。
しかし、この茶色の平原を走るのは初めてではない。
それだけは自信がある。
何度も何度も走っている。
これが既視感というものなのだろうか。
電車の揺れに身を任している。
ただ電車に乗っているだけなのに、自分の責務を全うしているという満足感にあふれているのはなぜだろう。
踏切、素通りする駅、ガソリンスタンド、派出所。
そして踏切、素通りする駅、ガソリンスタンド、派出所。
同じ順番で通り過ぎる車外の風景。
いつも感じるのは視線。
眩しいスポットライトに当たり、舞台の上で演じる役者の様に高揚する。
さあ、今が俺の最高の見せ場です。
ふふふ、何だそれ。
自分で自分に突っ込む。
とんだナルシストで自意識過剰なのかもしれない。
車内を見回す。
おじさん、おばさん、子供連れのお母さん。
皆、静かに座っている。
ただ奇妙なことは、まっすぐ前を見据えたまま動かない。
それこそ瞬き一つしない。
しかし、瞳の奥は誇りと満足感で満たされている。
それだけは分かる。
その時、衝撃が襲った。
重力を失う。
座ったままの姿勢で宙に浮く人々。
しかし無言。
無言のまま打ちつけられる。
天井が下にひっくり返る。
しかし車内に響く音は以外と軽い。
カシャ
カーブの先を見た。
亜熱帯のジャングルの湿原で見るような、巨大な樹木。
マングローブ林とでも言うのだろうか。
鬱蒼とした巨大なものがレールをふさいでいた。
巨大な樹木の様に見えたもの。
それは、実は柔らかく、毛足の長い物体だった。
それには目があり、口があった。
俺は心底恐ろしくもあり、またかとも思った。
にゃー
「こらチコ!電車をひっくり返さないで!おかあさーん!またチコが和室に入ってきて電車止めちゃうよー」
そうなのだ、俺は電車のおもちゃに乗っている乗客フィギアなのだ。
タタン・タタン・タタン
一定のリズムで体が揺れる。
レールの継ぎ目を乗り越えるリズム。
ポツポツと座っている人々。
車内は空いている言っていい。
うららかな日差しが差し込む、休日の朝。
車外を見る。
一面茶色の平原が広がっている。
その中を電車は走っている。
今朝俺は何を食べたっけ?
よく思い出せない。
何行きの電車に乗っているのか。
それもよく分からない。
しかし、この茶色の平原を走るのは初めてではない。
それだけは自信がある。
何度も何度も走っている。
これが既視感というものなのだろうか。
電車の揺れに身を任している。
ただ電車に乗っているだけなのに、自分の責務を全うしているという満足感にあふれているのはなぜだろう。
踏切、素通りする駅、ガソリンスタンド、派出所。
そして踏切、素通りする駅、ガソリンスタンド、派出所。
同じ順番で通り過ぎる車外の風景。
いつも感じるのは視線。
眩しいスポットライトに当たり、舞台の上で演じる役者の様に高揚する。
さあ、今が俺の最高の見せ場です。
ふふふ、何だそれ。
自分で自分に突っ込む。
とんだナルシストで自意識過剰なのかもしれない。
車内を見回す。
おじさん、おばさん、子供連れのお母さん。
皆、静かに座っている。
ただ奇妙なことは、まっすぐ前を見据えたまま動かない。
それこそ瞬き一つしない。
しかし、瞳の奥は誇りと満足感で満たされている。
それだけは分かる。
その時、衝撃が襲った。
重力を失う。
座ったままの姿勢で宙に浮く人々。
しかし無言。
無言のまま打ちつけられる。
天井が下にひっくり返る。
しかし車内に響く音は以外と軽い。
カシャ
カーブの先を見た。
亜熱帯のジャングルの湿原で見るような、巨大な樹木。
マングローブ林とでも言うのだろうか。
鬱蒼とした巨大なものがレールをふさいでいた。
巨大な樹木の様に見えたもの。
それは、実は柔らかく、毛足の長い物体だった。
それには目があり、口があった。
俺は心底恐ろしくもあり、またかとも思った。
にゃー
「こらチコ!電車をひっくり返さないで!おかあさーん!またチコが和室に入ってきて電車止めちゃうよー」
そうなのだ、俺は電車のおもちゃに乗っている乗客フィギアなのだ。